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[寄稿]停戦協定は平和の終わり?

登録:2020-07-27 01:26 修正:2020-07-27 14:44

もはや休戦ラインでの弾丸一発が、朝鮮半島の核爆発をもたらしかねない状況になった。こうした停戦状態を平和的に解決することが「金正恩委員長への贈り物」になるわけではない。「最終的な平和的解決」は停戦協定の核心的内容であり、私たち皆が享受すべき当為である。

 67年前の今日(27日)、停戦協定が締結された。「戦闘を停止した状態」がこれほど長く続いたのは他に類を見ない。さらに停戦体制の中で、朝鮮半島は終わりなき軍拡競争に陥った。停戦協定は平和の終わりへとつながるだろうか。平和の始まりにはなりえないのだろうか。

 休戦は通常局部的または一時的な「戦闘休止」状態を指す。もちろん戦争が続いている状態だ。最も有名な休戦は、第1次世界大戦中の「クリスマス休戦」だ。まだ第1次世界大戦初期だった1914年12月にクリスマスを迎えた英国やフランス、ドイツの軍人たちがしばらく戦闘行為を止め、一緒にクリスマスを楽しんだ。塹壕から出て“敵軍”とともにクリスマスキャロルを合唱した。プレゼントを交わし、食べ物を分かち合い、サッカーの試合を行ったりもした。フランスとドイツが戦闘した「西部戦線」では11月から翌年1月初めまでこうした休戦が続いた。

 ところが、このような非公式の休戦は長続きしなかった。まず、指揮官らが軍人の自発的な停戦を「嘆かわしいこと」または「不幸な事態」として批判した。戦争中に敵軍と交流すると、戦い続けることは難しいと憂慮したのだ。指揮官らは、軍人の自発的な休戦を禁止し、規律違反または命令不服などで処罰したりもした。また、戦争が続くにつれ人命被害が増えると、相手に対する敵がい心も深まり始めた。戦争初期には命令のために戦わなければならなかった軍人たちも、次第に“敵国”に対する強い敵がい心を抱き、戦うようになった。敵がい心を抱いたから戦争を始めたのではなく、戦争をしているうちに敵がい心を抱くようになったのだ。その結果、1915年からは休戦がさらに困難になった。

 この戦争を終わらせるためには、軍最高司令部が直接乗り出さなければならなかった。連合国軍司令官フェルディナン・フォッシュ将軍がドイツ軍と交渉した末、停戦協定が結ばれ、1918年11月11日に発効した。連合軍とドイツ軍の間の陸海空の戦闘をすべて停止することにしたこの停戦協定は、通常第1次世界大戦の終息とみなされている。その後、欧州の多くの国々が11月11日を休日に定め、英国は「戦没者追悼記念日(Remembrance Day)」、フランスとベルギーは「休戦記念日」、米国は「退役軍人の日(Veterans Day)」として記念している。

 しかし、停戦協定で国家間の戦争状態が公式に終わったわけではない。交戦国の間にあった政治的意見の食い違いを解決し、戦後の国境線などの問題に合意を行う必要があった。このような問題を解決するため、参戦国は1919年1月からパリで会合を開き、交渉を開始した。一連の平和条約を締結して国際連盟を創設し、1920年1月、パリ講和会議は幕を下ろし、第1次世界大戦も公式に終結した。その間、休戦協定は3回も延長されなければならなかった。

 朝鮮戦争は(第1次世界大戦と)いろいろな面で類似している一方、また異なる。朝鮮半島でも、戦争初期には局地的で一時的な休戦があった。映画『トンマッコルへようこそ』だけで起きたことではない。しかし、戦いが続き、血が血を呼ぶ恨みの悪循環が繰り返された。血は地面を濡らして川をなしてから、ようやく交戦国らは気がついた。軍事力では南進統一も北進統一も不可能であることを。その気付きは、いったん戦いを止めようという停戦協定に帰結した。しかし、朝鮮半島で停戦は平和につながらなかった。第1次世界大戦とは違って、朝鮮半島では勝利国も敗戦国もなかった。停戦協定の発効からほぼ9カ月後の1954年4月に政治会談がジュネーブで開かれたが、合意に至らず決裂した。

 その後、停戦体制は朝鮮半島で終わりなき軍拡競争を招いた。停戦協定が締結されて3年後の1956年7月、すでに米国家安全保障会議は、韓国が独自に北朝鮮の攻撃を防御できると評価した。「大韓民国は空軍力の脆弱性にもかかわらず、適切な兵站支援が提供されれば、独自に北朝鮮軍の攻撃を撃退できる」。1958年1月、米国が韓国に原子弾を導入した際、その目的の一つが韓国軍の削減だったほどだ。むろん、韓国の軍事力は北朝鮮が軍事力を強化する口実となり、米国の核兵器導入は北朝鮮の核兵器開発を触発した。そして、北朝鮮の軍事力強化は韓国の軍備強化と米国の核の傘強化および制裁の拡大につながり、軍拡競争が無限に繰り返されている。

 もはや休戦ラインでの弾丸一発が、朝鮮半島の核爆発をもたらしかねない状況になった。こうした停戦状態を平和的に解決することは「金正恩(キム・ジョンウン)委員長への贈り物」になるわけではない。「最終的な平和的解決」は停戦協定の核心的内容であり、私たち皆が享受すべき当為である。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ジェジョン日本国際基督教大学政治・国際関係学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/955244.html韓国語原文入力:2020-07-26 19:26
訳H.J