米国のジョン・ボルトン前国家安保担当大統領補佐官の回顧録が韓国と米国で大きな波紋を広げている中、韓国の保守マスコミがボルトン氏の一方的な主張をまるで真実であるかのように報じ、文在寅(ムン・ジェイン)政府を攻撃する道具として活用している。ボルトン氏の回顧録は、事実関係をめぐり論議になっているだけでなく、ボルトン氏が朝鮮半島非核化交渉を妨害してきた自分の行動を恣意的に合理化していると非難されている。にもかかわらず、国内の保守マスコミは、ボルトン氏の立場に立って韓国政府が朝鮮半島の平和と非核化に向けて傾けた努力をけなしている。実に嘆かわしい。
「朝鮮日報」は23日付の社説「韓米政権に必要だったのは、北の核廃棄ではなくテレビ用のイベント」で、「ボルトン氏の回顧で明らかになった一貫した事実の一つは、韓米政権は北朝鮮の核廃棄という実質的な内容ではなく、テレビカメラの前でショーを演じることに必死だったということだ」と主張した。「中央日報」と「文化日報」は社説で、韓国政府が国民と米国を欺いたと(ボルトン氏の主張を)既成事実化し、「ボルトン氏の回顧録について大統領府が真相を明らかにせよ」と要求した。「東亜日報」は「北朝鮮の非核化詐欺、韓国のお粗末な仲裁者の虚像を暴露したボルトン回顧録」という社説で、「お粗末な仲裁者論、運転者論」を取り下げるよう求めた。
「北朝鮮が無条件に核を放棄しない限り、制裁の緩和はあり得ない」というボルトン氏の「リビア式モデル」は、現実的に不可能だ。このようなやり方では、朝鮮半島非核化において残るのは戦争の道だけだ。韓国政府と積極的に協力したスティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮政策特別代表は、ハノイでの朝米首脳会談を控え、「寧辺(ヨンビョン)の核施設の廃棄と対北朝鮮制裁の部分解除」を骨子とする交渉案を作成した。ボルトン氏は回顧録でそれを座礁させたことを自慢している。このようにボルトン氏は、対話による非核化の可能性を根本的に否定する、朝鮮半島平和の“妨害者”だ。
ボルトン氏の回顧録は逆説的に、厳しい環境の中でも朝鮮半島の平和と非核化の突破口を見出すため、韓国政府が努力を傾けてきたことを随所で示している。朝米交渉を政治的利益のために利用しようとするトランプ大統領や、交渉を座礁させるためにあらゆることをやってきたボルトン氏とポンペオ国務長官など、米政府の乱脈ぶりにもかかわらず、韓国政府は朝鮮半島平和プロセスを進展させるために努めてきたのだ。にもかかわらず、ボルトン氏の主張を鵜呑みにし、韓国政府の役割を否定する保守マスコミは、朝鮮半島の平和は眼中にもないようだ。米国の強硬派と一緒になって朝鮮半島の平和に障害になっているのではないか、自分の言動を振り返ってほしい。