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[コラム]アベの永続敗戦

登録:2020-05-07 21:01 修正:2020-05-08 09:46
安倍晋三首相が4日、緊急事態宣言を31日まで延長すると発表する姿が電光掲示板に映る中で、東京の町を市民がマスクを着けて歩いている=東京/共同・AP・聯合ニュース

 日本の政治学者、白井聡氏は著書『永続敗戦論』で日本が敗戦を否定することにより永遠の敗戦が続いていると説明する。1945年の敗戦以後、日本は米国の東アジア冷戦の基地となって徹底的に屈従する代わりに、植民支配と侵略にあった韓国や中国などアジアの近隣諸国に対する謝罪と責任は回避した。天皇と指導部が侵略戦争の責任を回避することにより作られた“無責任の体系”と対米従属を抜け出せない永続敗戦の状態が続いているということだ。

 白井氏は、2011年に起きた福島原発事故に対して日本政府が見せた無責任な形態の起源を探すためにこの本を書いたが、今の新型コロナに対応する安倍政権にも同じ影がちらつく。安倍政権は、納得できない消極的検査で感染の拡散を事実上放置したという批判と、「アベノマスク」不良品の波紋など総体的防疫失敗論議に包まれている。その一方で安倍政権は「韓国のように検査すれば医療崩壊が来る」、「韓国のドライブスルー検査は正確度が低い」と主張して、韓国の防疫モデルを低く評価することに力を注いだ。安倍首相は先月29日、初めて「韓国と新型コロナ感染症対応で協力したい」と発言したが、依然として韓国に協力を要請することは避けている。

 これに対して思想家の内田樹氏は「安倍政権のコアな支持層は嫌韓・嫌中的な人々であり、韓国や中国を真似することを屈辱と感じる。だから政府は『日本独自』の感染防止策を実施しているように見せかけることに懸命になっている」と述べた。彼は「危機管理に必要なのは、過去の出来事を記憶する力と未来のリスクを想像する力だ。しかし今の日本は『こんなことをいつまでも続けていたらいつかたいへんなことになる』とわかっていても『こんなこと』をだらだらと続ける。そういう傾向を『サル化』と呼ぶ」批判した。

 新型コロナ危機でしばらく延ばされているが、韓日間には強制動員被害補償と輸出規制撤回という課題がある。2018年11月、日本の戦犯企業らが強制動員被害労働者に賠償しなければならないと韓国最高裁(大法院)が判決を下した以後、安倍政権は韓国が「国際法(韓日請求権協定)に違反」したと非難し、報復性の輸出規制を強行した。日本企業らが被害者に賠償することを阻んだ安倍政権は、被害者が差し押さえた日本企業の資産を現金化(売却)すれば韓国に一層深刻な報復をすると威嚇してきた。安倍政権は、過去の責任を回避するために“嫌韓”の旗を利用して支持層を結集し、新型コロナ危機でも韓国の防疫成果を意図的に無視した。

 今や韓国の4・15総選挙と安倍政権の新型コロナ対応失敗にともなう日本の世論の変化が新たな局面を作り出している。今回の総選挙の世論は、“親日”を断固として審判した。代表的親日政治家に挙げられたナ・ギョンウォン議員を落選させ、ヤン・スンテ最高裁の強制動員判決遅延に問題を提起したイ・スジン判事、慰安婦被害問題の解決を象徴するユン・ミヒャン正義記憶連帯理事長らを当選させた。安倍政権は、輸出規制を通じて文在寅(ムン・ジェイン)政府を屈服させようとし、韓国国内で日本と適当に妥協せよという声が親日報道機関と政治家、学者を中心に広がることを期待した。しかし、韓国の市民は総選挙を通じてこれを拒否し、原則に立った韓日外交を明確に注文した。

 日本では新型コロナへの対応失敗により安倍政権の支持率が急落し、医療・検査に不安を感じるという応答が68%に達している。安倍政権の“空気”を読んで、韓国を見下してきたマスコミももはや「韓国の対策は人工知能(AI)、日本の対策はアナログ」「韓国に頭を下げて『よろしくお願いします』と言わなければならないほどに対策を習わなければならない」と報道している。

 こうした変化の中で「米日同盟でG2時代を進めていこうとした安倍首相の戦略も修正せざるをえないし、朝鮮半島との関係調整がポストコロナ時代の日本外交の課題として浮上するだろう」とソウル大学のナム・ギジョン教授は展望する。韓国には「対日外交で消えた空間ができている」ということだ。

 米中に新冷戦の波が差し迫る今、韓日の協力と共助の必要性は高まっている。韓国政府は、日本に対し歴史・領土問題については断固として対応するものの、経済・社会・文化などの協力は強化する、これまでの“ツートラック原則”を生かして、新しい環境を見回して外交の突破口を用意しなければならない。地方自治体や民間を通した協力も模索してみる必要がある。“安倍以後”までを念頭に置いて、韓日の民間の理解と協力は拡大しなければならない。

 安倍政権は、輸出規制を撤回し、強制動員被害者が70年以上も待ち望んできたことに謝罪と賠償で過去の責任と向き合うことが、日本が永続敗戦から抜け出す出発点であることを認めなければならない。韓国の防疫成果を謙虚に認め手を差し出すことが出発の信号になるだろう。

//ハンギョレ新聞社
パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/944021.html韓国語原文入力:2020-05-07 19:19
訳J.S