東京の町角で聞こえる声が変わった。暖かくなる例年のこの時期には、町で日本語以外の他国の言語が頻繁に聞こえ始める。最もよく聞く言語は中国語だった。昨年日本を訪問した中国人は959万4400人で、国別1位だった。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の拡散以後、観光客が対話する声ははっきり減った。繁華街のある小売雑貨店は、普段ならボリュームを目一杯高めて中国語の案内放送を流していたが、ある瞬間にそれが消えた。この小売雑貨店では、スーツケースを引っ張り各種の雑貨を買っていく観光客の姿が多く見られた。
今月初め、地下鉄の出口でかなり重そうに見えるスーツケースを持って階段を上がる観光客を久しぶりに目撃した。胸にはステッカーが一枚貼られていた。台湾の地図を背景に、日本語で「私は台湾人です」と書かれていた。その頃、日本政府は毎日徹底した検疫を強調していた。外部の人を遮断すれば問題は解決されるという態度だった。
しかし、日本政府が中国の湖北省と浙江省での滞留履歴がある外国人の入国制限措置をした後も、事態は収拾されなかった。中国人全体に対する入国制限措置をしようという主張もあるが、物理的にも経済的にも日本政府が取ることは難しい選択肢だ。しかも日本国内で地域社会感染は少なくとも今月に入ってからは本格的に始まっていた。日本政府が感染経路を推定できない事例が続出している。
事態がここまで来れば、感染遮断のために避けられない最小限の隔離ではなく、嫌悪があちこちにはびこる。矢もあちこちに向かう。日本の災害医学会は22日、新型コロナの防疫作業に参加した医療関係者たちがいじめにあっているとし、抗議声明を出した。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で陰性判定を受けた人の下船が一段落した後のことだ。クルーズ船には様々な医療関係者が派遣され、一部は感染した。災害医学会は「現場で人命を救うために自分の身を危険にさらして活動した医療従事者が(現場に復帰した後)職場において『バイ菌』扱いされるなどのいじめ行為を受けた」として「職場管理者に現場活動したことについて謝罪を求められるなど、信じがたい不当な扱いを受けた事案が報告されている」と批判した。
日本政府の不透明な対応は不安感を刺激する。表面に見える日本国内の新型コロナ感染者数は、26日基準で186人だ。この数値を見れば、比較的よく統制されているように見られるが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で発生した感染事例705件は除外された数値だ。日本政府は上陸前に発生した感染という理由で、クルーズ船感染者数は公式統計から抜いた。厚生労働省が発表した26日昼基準のウイルス検査件数も1890件(クルーズ船除外)で、韓国の20分の1の水準だ。厚生労働省は、地方自治体が実施した検査がすぐに反映されていないためだと説明している。検査の全体規模は霧の中だ。
不安は大きく情報は不足しているため、“私でない誰か”を隔離・排除したい誘惑が高まる。震源地の中国を含め、各国からの外国人入国を拒否したり隔離している。専門家たちは、新型コロナのように伝染性が強い疾病に対して、検疫を過度に強調することはむしろ弊害が憂慮されると指摘する。人々が検疫にかける期待があまりに大きければ、感染者が感染の事実を口にすることが難しくなり、感染の拡散を遮断することがさらに難しくなると警告した。憂慮は現実となっている。皆がお互いを隔離し排除しなければならない対象として疑う世の中は、背筋が寒くなる。