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[寄稿]弾劾がトランプ再選に影響を与えるか

登録:2019-11-25 07:07 修正:2019-12-01 21:38

 民主主義政治システムの特徴の一つは、有権者が心を変え得るということである。韓国の有権者は1998年以後、10年間は進歩候補を支持して10年は保守候補を支持した。続いて、劇的な世論の反転により、韓国の人々は朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾で団結した。

 米国では有権者がバラク・オバマを二度選んだ後、2016年には完全に別人を選択した。2020年の大統領選挙でどのような事が起きるかは分からない。しかし、ドナルド・トランプ政権に関連する数々のスキャンダルにも関わらず、トランプに対する支持率は40%台を常に維持している。したがって、弾劾公聴会が世論にほとんど影響を及ぼさないということは驚くべき事ではない。弾劾の支持率は着実に約46%を維持してきた。米大統領がウクライナ大統領に自分の再選を助けるように圧力をかけたという追加の証拠が出ても、弾劾の支持率は少し減っただけである。

 米国人はトランプに対して心を決めた。大統領に反対する人々にとって、弾劾公聴会で出た犯法行為の証拠はこの政権に対する彼らの恐怖をさらに強化するものだ。一方、トランプ支持者は公聴会を退屈で、ささいで、関係ないことだと無視して、共和党の指導に従っている。

 このように世論の変化が少ないのは、韓国の事例と明らかな対照をなす。セウォル号惨事の1年余り後である2015年9月、朴槿恵の支持率は54%だった。半年後には31.5%に落ちた。「スキャンダル」(チェ・スンシル事態)に覆われて2016年11月には4%に落ちた。

 しかし、トランプはいくらスキャンダルが多くても安全な支持基盤に頼ることができる。トランプが言ったように、彼がニューヨーク5番街の真ん中で誰かを銃で撃ったとしても、彼のそばに立つ人々だ。もちろん40%の支持では、大統領選挙の接戦で勝つには十分でない。しかし、トランプは一般投票で勝つ必要はない。ヒラリー・クリントンは2016年に約300万票で勝ったが、選挙人団で負けた。2020年にトランプは500万票で負けても選挙人団で勝利することができる。別の言い方をすると、彼は重要な接戦州の支持層だけを維持すればいい。東・西海岸の有権者がトランプを拒否しても、南部、南西部、中西部、そしてラストベルトでリードすれば問題はない。

 多くは米国経済次第だ。失業率は3.6%と非常に低く、株式市場も活況である。しかし、経済成長率は低く借金水準は急騰しており、貿易紛争が特定分野に大きな打撃を与えているのも事実である。トランプは2020年の選挙の前に景気低迷が来ないよう、可能なすべてのことを試みている。彼はその上、連邦準備制度理事会に金利をゼロ以下に下げろと要求した。

 トランプの別の戦略は、政治的分裂をあおり立てることである。トランプは移民に対する刺激的発言と黒人・ラテン系議員に対する猛烈な非難、ワシントン官僚主義との戦争が、支持層によく受け入れられることを知っている。大統領は自分を、政治的現状維持と戦うために喜んで極端な手段を使うアウトサイダーと描写している。米国の有権者は引き続き「変化」を願っている。多くの人がオバマとトランプに投票した理由だ。

 民主党にとっては不幸なことに、弾劾公聴会は「自分はゴリアテを倒すダビデ」というトランプの主張を強化している。トランプの主張によると、彼は単に、ウクライナ大統領にジョー・バイデンの息子の違法行為の疑惑と、ウクライナの2016年米大統領選挙への介入疑惑を調査せよと要請することにより腐敗を根絶しようとしたのである。トランプ支持層はこのような疑惑が完全に晴れたとは信じていない。

 したがって、弾劾公聴会によりトランプの支持率が朴槿恵のように落ちると予想してはいけない。トランプは、民主党が来年の大統領選挙で負けそうだから弾劾に乗り出したと主張し続けるはずである。糊塗する主張かもしれないが、再選の可能性に関してはトランプの言葉が正しいことがあり得る。

 それでも彼の戦略は危険だ。分裂的言辞は支持層の熱気を高めることはできるが、政治的未来を抑えかねない「敵」を量産することがあり得る。

//ハンギョレ新聞社

ジョン・フェッファー米国外交政策フォーカス所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/918275.html韓国語原文入力:2019-11-24 19:15
訳M.S

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