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[寄稿]民主の資格

登録:2019-11-22 10:20 修正:2019-11-23 06:35

 香港デモをめぐり、韓国の大学生と中国人留学生間の葛藤がマスコミにたびたび登場している。デモ隊を支持する韓国の学生たちの壁新聞を中国の学生たちが破ることがたびたび起き、マスコミが先を争って両方の関係を和解不可能な対立に追い込み、インターネットの書き込みに一国を「安物」「三流」「がん的存在」と侮辱する発言が堂々と登場している。韓国社会にすでに溢れかえっている中国への嫌悪を問題視することが日々遠のいている状況だ。

 中国人留学生たちが自分の人生を国家の人生と一致させる姿、「中国は一つだ」「暴力は民主ではない」「内政干渉するな」と、中国外交部報道官の論評をそのまま繰り返している姿も、残念だのは同じだ。デモ中に発生した暴力だけを問題視したせいで光州市民らは十数年間「暴徒」と呼ばれたではないか。自由と尊厳を守ろうとする香港市民の熱望がいかに強烈なのか、数十年間「両制」の合意が「一国」のイデオロギーにたびたびに従属され、内面化された絶望もまたいかに根深いか察することができる機会が、中国においても、自分の母国を一方的に嘲弄する韓国でも、十分に与えられていない。授業を受けている中国の学生は不満を示している。「韓国に来て私の国を新たに振り返る機会ができました。中国では接続できなかったオンラインチャンネルを通じて、私が知っている中国が全てではないことがわかりました。でも、報道や書き込みはあまりにも一方的で、私たちを悪魔化するので腹が立ちます」

 賀照田が『現代中国の思想的苦境』で書いたように、中国に対する海外の批判は「実は中国の社会について中国人たち自身がいつも批判する内容とあまり変わりがない」。中国の党・政府や知識人集団は、西欧中心的近代秩序が引き起こした一連の破局を克服し、世界の問題を考え、世界の責任負う主体として「中国」の位置を絶えず悩んできたが、現実は彼ら自ら発言を控えなければならないほど支離滅裂だ。中国が自身の社会や世界の多元性を尊重するという意味で強調した「和解」は、中国人民が「和解された」という表現をよく使うくらい、力のない人たちの口を塞ぎ、手足を縛るレトリックに転落した。いっとき全世界の中国学界を賑わせた「中国モデル論」や「北京コンセンサス」も下火になり、中国が21世紀の新しい世界秩序構想として野心的に公表した「一帯一路」さえ覇権主義の批判が激しくなり、英語名を「ワンベルト・ワンロード」(One Belt, One Road)から「ベルト・アンド・ロードイニシアチブ」(Belt and Road Initiative)に変更した。

 ところが、この辺で思い出さなければならないのは、中国の外の世界もまた支離滅裂だというのは同じだという点だ。トランプ時代以降、米国は覇権主義を相殺するのに部分的ながら貢献したソフトパワーを捨て、英国のブレクジット論争はエスノセントリズム(自文化中心主義)と結託した民主主義の危険を如実に見せている。「トランプの壁」で隔たれた米国-メキシコ国境周辺の砂漠で、考古学者たちは缶詰の缶や衣類を収集し、遺体になる直前まで死闘を繰り広げた移住者たちの痕跡を追っている。21世紀の民主主義は「国民」の線引きをする誘惑から脱しなければならないと信じる私には、あの「トランプの壁」は中国政府が「就業訓練所」と命名した新疆ウイグル人強制拘禁施設と同じく暴力的だ。

 韓国は例外だろうか? 2019年秋、韓国社会を飲み込んだいわゆる「チョ・グク事態」は、“喉から手が出るほど”欲して叫んだ民主が果たして何だったのか、それぞれに疑問符を残した。「他者を本当に“他者”としないうえに、“自我”に対する理解もあまりに狭い」という賀照田の中国社会批判を韓国社会に当てはめても無理がないほど、ひと言ふた言で「私たち」と「彼ら」を分けるために奔走した。壁新聞を破った中国人留学生たちに対して「討論と論争という健康で民主的な方法を損ねた」と言い、民主の先輩としての役割をする資格が韓国にあるのか、反問することになる。

 香港市民は2019年の中文大学と1987年の延世大学のデモの風景を重ねながら、映画『タクシー運転手~約束は海を越えて』と『1987、ある闘いの真実』の感動を伝え、韓国社会の連帯を訴えている。私たちは当然、その切迫した訴えに応えなければならない。同時に大学から職場まで韓国社会のいたるところで私たちと一緒に暮らしている中国の人々に対する軽蔑と敵対をやめて、この時代には「使えなくなったが捨てるには惜しい」ものとなってしまった「民主」を、みんなの尊厳のための価値に蘇らせるような協業に彼らを招待する方法を模索しなければならない。

//ハンギョレ新聞社

チョ・ムニョン 延世大学文化人類学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/917818.html韓国語原文入力:2019-11-21 09:37
訳C.M

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