江原道(カンウォンド)と旌善郡(チョンソングン)は、平昌(ピョンチャン)冬季五輪で使った加里旺山(カリワンサン)スキー場の一部施設の存続に固執しているという。スキー場を作る際に傷つけた山林の一部のみ復元するという考えだ。山林の「全面復元」の約束はスキー場造成の前提条件だった。口約束でもなく、法律の平昌五輪特別法にともなう義務事項である。それなのに、地域の利害関係を前面に出して山林の復元を拒否する江原道の態度は非常に憂慮すべきだ。
江原道はスキーの滑降施設だけ撤去し、ゴンドラと管理道路はそのままにしておく計画という。当初は滑降施設もそのままにしておくとして、2021年のアジア競技大会を南北が共同で誘致したら、スキー種目は北朝鮮の馬息嶺(マシンニョン)スキー場で行わなければならないと立場を修正している。五輪を行って3年後にアジア競技大会をまたするという江原道の計画は細かく確認せねばならないだろう。しかし、これとは別に滑降施設もなしにゴンドラだけ残すということは、アジア競技大会と何の関連もない「観光商品」としてスキー場を維持するという意図以外には説明するすべがない。
「全面復元反対」のもう一つの名目は撤去費用だが、これもまた一貫性のない主張だ。臨時に設置した開閉会式専用スタジアムは冬季五輪期間にたった4回だけ使い、3月から600億ウォン(約60億円)を越えるお金をかけて撤去作業を進めている。それなのに、環境面からそれよりはるかに重要な加里旺山の復元をしないのは何のつもりなのか。
加里旺山は国内で最も保存のいい天然林に選ばれている。そのためスキー場建設時から反対世論が大きく、茂朱リゾート・スキー場など既存の施設を活用しろとの代案も提示された。それでも江原道は「分散開催不可」に固執し、500年を越えた樹木10万株を切り出した果てにスキー場を作った。原始林損傷の世論を和らげようと江原道が約束したものが五輪の後の山林全面復元だった。今になって施設撤去や環境復元はできないという江原道の態度は、国民の目には憎らしいことこの上ない。
来年2月9日は平昌五輪開催1年になる。同大会は軍事的対立に行きついていた朝鮮半島情勢の劇的な転換を作り出した。その契機を用意するのに誰より大きく寄与した江原道と旌善郡が、今回も私たちの社会全体に役立つ選択をすることを期待したい。