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[寄稿]「慰安婦」合意の強行、このままではいけない

登録:2016-09-13 01:15 修正:2016-09-14 05:26

 今月1日、韓国政府は、日本政府が慰安婦被害者支援財団(和解・癒やし財団)に送金した10億円(約108億ウォン)が国内の銀行に入金されたと確認した。昨年末の「慰安婦」問題と関連した外相合意以降、政府の自画自賛と合意「強行」の意志に、被害者ハルモニ(おばあさん)と支援団体が厳しい批判と合意「破棄」の要求で対抗しており、対立の溝は深まるばかりだ。財団を通じた10億円の事業の実施が差し迫るにつれ、その対立は臨界点に達している。

 問題をこのような状態にまで複雑にしたのは、批判されても仕方がないような内容に合意したにもかかわらず、その批判を無視して合意の履行を推し進めると共に、長い間慰安婦問題の真の解決に向けて努力してきた被害当事者と支援団体を排除してきた政府の態度に原因がある。したがって、今からでも、事態をこじらせた張本人である韓国政府が自ら解決に乗り出さなければならない。

 そのために、政府と和解・癒やし財団には合意の実行を「強行」する代わりに一時的に「中止」することを提案する。このような状態で10億円の事業が実施されれば、慰安婦問題の破局を自ら招き、取り返しのつかない歴史的な過ちを残す結果になることを自覚すべきだ。政府は今からでも時間をかけて国民的合意を引き出すために、誠意を尽くして努力しなければならない。これを前提に、支援団体には条件付きで合意を受け入れる姿勢への転換を提案する。条件は三つある。第一に、日本の首相が謝罪を表明すること。第二に、「事実上」の賠償と解釈できる日本政府の予算措置、つまり財源を明確化すること。第三に、「少女像」に対する言及を中断することだ。以上の内容は、政府が断固たる姿勢で日本に要求すれば、合意の基本精神の中で解決が可能なものだ。

 このように、政府と支援団体が互いに向き合う姿勢で、合意を「受け入れる」前提条件が整えば、和解・癒やし財団が慰安婦被害者に対する説明会を実施することを提案する。それは個別的な面談のように密かに行われてはならない。慰安婦問題がすでに個人レベルの解決ではなく、公共的解決を模索してきた問題であるという点で、説明会は挺対協など市民団体や外交部と女性家族部の関係者などが出席した中で行われる方がいい。さらに、説明会は一度だけではなく、ハルモニたちが心を開いてくれるまで持続的に行うべきだ。

 これと同時に「和解・癒やし財団」と「正義記憶財団」の関係者を互いの団体に派遣し、活動を共有することを提案する。この過程で信頼を築きながら和解・癒やし財団の運営に向けた協議機構を構成するのもいいだろう。このような過程を経て、政府とハルモニ、そして政府と支援団体の間で信頼が生まれれば、自然に10億円の事業を実施できる条件が整うだろう。

ナム・ギジョン・ソウル大学日本研究所準教授//ハンギョレ新聞社

 今、慰安婦問題をめぐる現実はあまりにも厳しい。合意に対する反対がこのように強硬な状況でこれを強行するのは、永久に続く問題の種を新たに撒くような愚行になりかねない。だからといって、破棄というのも、容易く選択できるようなものではない。東アジア国際政治の渦巻きの中で、外交の力だけで生存と繁栄、平和と統一を築き上げていかなければならない韓国にとって、合意の「破棄」という履歴は大きな負担にならざるを得ない。そうした外交力の損傷から来る国益の損失を被るのは、他でもない韓国国民だ。

 合意が「強行」されても、「破棄」されても、私たちは大きな負担を抱え、かなり長い苦痛の時間を耐えなければならないことになった。だからこそ、強行と破棄の間で賢い解決策を模索することをこれ以上後回しにしてはならない。そのためには、政府が先に「強行」を止めなければならない。

ナム・ギジョン・ソウル大学日本研究所準教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-09-12 18:17

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/761150.html 訳H.J