この頃、中国の北京にある望京は落ち着かない。中東呼吸器症候群(MERS)のせいだ。 北京の北東に位置する望京は、韓国人数万人が暮らしているコリアタウンだ。 韓国でますます荒れ狂っているMERSは、北京在住の海外同胞社会にも暗い影を落としている。
間もなく夏休みを控えて韓国に行く計画を立てた両親たちは頭が痛い。 ある父母は「久しぶりに子供たちを連れて両親に挨拶をして、子供たちの病院診療も受けてこようと考えたが困った」と話した。 子供をもつ北京の海外同胞にとって、夏冬の休みは定期検診の期間だ。 学業のせいもあるが、信じられない中国の医療水準とやたらに高額な診療費のため、親は夏冬休みを利用して韓国に行き、歯科治療や予防接種、健康診断などたまった“病院宿題”を処理する。 外国人には医療保険が適用されないので、中国の病院は一度行けば基本料金1000中国元(約2万円)もかかる。「(病気に)かかったかと思えば、迷わず飛行機で韓国の病院に行け。その方が安い」と言われるほどだ。
中国の学校では、自分の学校に通う韓国の生徒たちを対象に今回の夏休みに韓国に行くかどうかを調査している。当然の備えという気もするが潜在的MERS危険要素と差別されているようでどうも気分がすっきりしない。 小学生は「夏休みに韓国に行ってはいけないんだって。行けばもう入って来れないんだって」と、子供どうしでコソコソ話している。 中国人と仕事で接触しなければならない駐在員も、「中国の人々が近づくことを憚る印象を受ける」と話す。
多くの海外同胞は、インターネットと衛星放送を見て一日も早くMERSが沈静化することを期待している。 しかし、大統領をはじめとする政府当局の対応を見れば、やりきれない思いを隠すことはできない。 政府当局の発表をもてあそぶかのように、2、3、4次感染者が続出する。 のろまな対応による自業自得で訪米を取り消した大統領は、妙案がないように見える。 東大門(トンデムン)市場で会った中国観光客に「韓国は安全だと知らせてほしい」と無責任な話をする。 それだけでなく、セウォル号対応時と全く同じで「国民を不安にする怪談や誤った情報を迅速に正せ」と要求する。警察と検察に千里を駆けるという足のない馬を捕まえろと言う。 足のない馬は簡単には捕えられない。 情報を一人占めした無能力な“宿主”は、デマウイルスの増殖に格好の条件だ。社会的認知不調和の産物がデマだ。
韓国との往来が最も頻繁な中国の対応は、“まだ一段下”という根拠のない韓国人の優越意識を木っ端みじんに砕いてしまう。 「病気は自慢しなさい」という昔話のように、共産党一党独裁の権威主義体制の中国は、MERSの疑いがある患者が隔離治療を受けている病院をすぐに透明に公開した。中国に入国した韓国人MERS患者が留まっている病院が広東省恵州市中心人民病院であることを知らせた。 香港の衛生当局は「青衣地下鉄駅→プリンセス マーガレット病院」、「尖沙咀パシフィック センター病院→クイーンエリザベス病院」等とMERSの疑いのある患者の動線まですぐに公開した。 韓国が「国民の過度な不安拡散防止」を口実に病院公開を巡って右往左往している時だった。 情報を共有した中国と、情報を隠して口封じをした韓国の結果は、皆が分かっているとおりだ。 世界保健機構(WHO)評価団は、「危険情報の疎通強化が核心」として、韓国政府にMERSと関連した最新情報を国民に提供するよう勧告した。
韓国の知人たちは「帰ってこないで中国にいてくれ」と自嘲混じりに言う。無能な政権は国内だけでなく外国に住んでいる国民にも迷惑をかけるということを痛感するこの頃だ。