“ナッツ・リターン”事件のチョ・ヒョナ前大韓航空副社長に懲役1年の実刑が言い渡された。企業の総帥の娘という地位をバックにして社員に絶対的な権力を振り回し、公的運輸手段である航空機まで私物のように扱った財閥3世の傲慢な行動に司法の断罪が下されたのだ。チョ氏の行為が道徳的非難の枠を越えて重大な犯罪だったことを確認させる判決である。
裁判の最も大きな争点だった航路変更および安全運航阻害の疑いについて裁判所は「(前副社長の行為で)他の航空機運航を妨げて衝突する可能性があった」として「乗客の安全をかけた非常識な行為」と説明した。難しい法理を別にして少しでも考えてみれば分かる結論だ。一方でチョ氏は係争中無罪を主張し続けた。国内最大の航空会社を運営する大韓航空は航空機の運航が基本であり、乗客の安全に直結した問題について普段いかにお粗末な認識をしていたかが裁判を通じて改めて確認されたわけだ。大韓航空が乗客の信頼を取り戻すには失われた基本原則から確認していくべきだろう。
大韓航空とチョ氏が十分に反省し、企業文化を一新する意思を確認したのかからして疑問である。チョ氏は裁判で「事件の発端はマニュアルを熟知できていなかった乗務員のせい」と主張した。また自分の命令で航空機が後戻りしたことをめぐって「機長が判断を間違った」と責任転嫁しようとした。判決が近づいた6日からは、集中的に6度も裁判所に反省文を提出した。裁判所まで「被告人が真の反省をしているか疑問」と指摘したほどである。
今回の事件が「人間の尊厳や価値、自尊心を揺るがす事件」であり、「社員を奴隷のように思っていなければ決して起こり得ない事件」という裁判所の叱責も厳しい。この言葉が単に大韓航空とチョ氏にだけ該当するものではないと思っている人も多いだろう。この事件は財閥の3、4世にいたる「皇帝経営」の弊害と我々社会の特権層の浅はかな意識構造を赤裸々に示した例であるに過ぎない。それゆえチョ氏個人に対する処罰は事件の一段落を意味しない。総帥一家が専制君主のように振る舞う前近代的な企業文化、資質に関係なく経営権を受け継ぐ後継システム、労働者と顧客の人権と安全を軽視する後進的経営方式など、この事件が我々の社会に投げかけた根本的な問いかけをより十分に咀嚼して、改善策を見つけるきっかけにすべきだろう。
韓国語原文入力:2015/02/12 18:35