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[世相を読む]‘21世紀資本論’/ユ・ジョンイル

ユ・ジョンイルKDI国際政策大学院教授・知識協同組合'良い国'院長

 フランスの経済学者トマ・ピケティが書いた<21世紀資本論>が流行語になり大ヒットしている。 毎日のように書評を吐き出す経済学界は言うまでもなく、出版界が揺れるほどに途方もない反響を呼び起こしている。 世界で最も有名な経済学者であるポール・クルーグマンがとてもうらやましいと言うほどだ。

 この本は去る300年間、世界の資本あるいは富の蓄積と所得の分配に関する緻密な経験的研究を集大成し、これを成長と分配に関する簡明な理論で説明し、巨大な歴史的流れの中で私たちの時代の性格と挑戦に関する強烈なメッセージを投げかけている。 著書の題名がカール・マルクスの<資本論>を連想させるが、実際にこの本はこの頃よく見る経済学著述とは異なり、歴史と政治に関する深い探求を結合して19世紀政治経済学のスケールを復元した。

 フランスのエリート教育の産物であるピケティは、若干22才で博士学位を取得し、直ちにアメリカのMITに抜擢されて教授になった。 我が国であれば、まだ大学生か軍隊に行く年齢で最高名門大学の教授になったのだ。 だが、ピケティは3年後にフランスに戻った。"使い途のない数学の問題を解きながら、社会の根本問題は無視している" アメリカ経済学に失望したということだ。 以後、彼は所得分配研究に独歩的な業績を残した。 1980年代以後、英語圏国家で進行されている途方もない不平等が最上位1%、その中でも0.1%の超上位階層に所得が集中した結果であることを明らかにした。 そして、このような現象はよく言われるように、世界化や技術変化による自然で避けられない結果ではなく、巨大企業の経営陣と巨大遺産の相続者に有利に変えられた政策環境の変化が招いたものであることを立証した。 ピケティは1:99社会の現実を告発し、その解決方法を模索することに彼の研究を集中した。

 <21世紀資本論>のメッセージは暗鬱だ。 所得不平等の深化はほとんど不可抗力的だというものだ。 経済成長の速度が利潤率より低い時、所得に対する資本の比率が増加して、所得全体に占める資本所得の比重がますます大きくなることで不平等は深刻化される。 第2次大戦以後、いわゆる‘資本主義の黄金時代’に現れた平等化、いわゆる貧富格差の‘大圧搾’は非常に例外的な現象だとし、一方では高度成長、他方では高率の資本課税のために可能だった。 1980年代以後、いわゆる新自由主義世界化時代に資本課税は急激に縮小され、成長の勢いは鈍化したので再び不平等が拡大した。 このような現象はアメリカをはじめとする英語圏国家でとりわけ激しかったが、ヨーロッパや日本を含めて先進国で広範囲に進行している。 韓国は他のどの国より熱心にアメリカの前轍を追いかけて行くことに余念がない。

 ピケティは不平等の深化が富の世襲によって形成される特権階級が社会を支配する‘世襲資本主義’を内包していると主張する。‘世襲資本主義’は民主主義と機会の平等と福祉国家を根本的に脅かす邪悪な体制だ。 また‘世襲資本主義’では、機会と革新が制限され需要が不足するので成長動力が縮小する。‘世襲資本主義’の到来を防ぐためのピケティの処方は強力な資本課税だ。 ところが資本の移動性のために世界各国が税率引き上げに協力して租税回避処もなくさなければならない。 これは容易ではない話だ。

 だが、希望の根拠はある。 このままでは駄目だという考えが広がっている。 世界各国で経済民主化に向けた熱望が広まっている。 20世紀後半の黄金時代は、成長も分配も西欧がリードした。 今、21世紀に新たな黄金時代を切り拓くためには、すでに成長をリードしている東アジアが経済民主化でも先頭に立つべきではないだろうか?

ユ・ジョンイルKDI国際政策大学院教授・知識協同組合'良い国'院長

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/634852.html 韓国語原文入力:2014/04/28 18:39
訳J.S(1734字)