ナム・ジェジュン国家情報院長のニックネームは‘陸軍士官学校3学年生徒’だ。 それは明らかに称賛だ。 このニックネームが表象することは、軍人らしさ、愛国心、原則主義、非妥協などだ。 だが‘陸軍士官学校3学年’という言葉を改めて見れば、未だある段階に至っていない不完全さ、未成熟、アマチュアという意にもなる。 1年前に彼が国家情報院長に任命された時の感じもそのために二重的だった。 彼の強骨イメージから始まった改革に対する期待感の一方で、彼が果たして複雑多岐で微妙な国家情報院の業務に適合した人物なのかという懐疑感もあった。 その上、馬鹿正直な情熱と非妥協的指向が‘政治’と出会う場合、その危険は手のほどこしようもなく大きくなるだろう。 不幸にも南北首脳会談対話録公開でこのような危険は現実となって現われた。
それでは、スパイ疑惑証拠ねつ造事件で見せてくれたナム院長のリーダーシップとはどんなものか。 ‘ありのまま、正直、原則通り’が光を放ったのか、さもなくば‘未熟さとアマチュアリズム、はずれた情熱’が目立ったのか。 国家情報院で高位幹部生活を過ごした何人かにこの事件に対する評価、国家情報院長のリーダーシップなどに対する鑑賞評を尋ねた。 人により多少の温度差はあるが、結論はほとんど似かよったものだった。 後者であった。
ユ・ウソン氏をスパイ容疑で起訴したことからして誤りだという反応が出てきた。 国家情報院高位幹部出身者からのこのような反応は多少意外だった。 「スパイ容疑がその程度ならば、起訴するのではなくむしろ逆利用して北朝鮮の情報を取り出すことに活用することが国益に役立つ。 世界のどこの国の情報機関でもそのような判断をするのが正常だ。」 事実、検察と国家情報院の発表をありのままに受け入れたとしても、ユ氏のスパイ容疑の内容はつまらない。 激しい情報戦が繰り広げられている中国東北3省地域には二重三重スパイも少なくないという話まで出てくることを考慮すれば、より一層そうだ。
証拠ねつ造より前職国家情報院関係者たちが更に注目するのは、‘証拠ねつ造はなかった’という国家情報院の自主調査結果だ。 これは単純な指揮監督不良の問題を離れて、ナム院長の直接的な介入有無が問題になる内容だ。 検察による捜査の結果、証拠ねつ造のための指示と連絡、ファックス伝送などが全て内谷洞(ネゴクトン)の国家情報院庁舎で行われた事実まで明らかになっていることを勘案すれば、あまりにも厚かましい嘘だ。 「国家情報院長と監察室長の間には誰もいない。 監察室長はただひとり、国家情報院長の指示にのみ従うことになっている。」 国家情報院の虚偽の真相調査は、結局国家情報院長の意を反映した結果だとしか解釈しようがない。
ナム院長は朴槿恵(パク・クネ)大統領までもだましたのだろうか。 朴大統領が証拠ねつ造事件に対して口を開いたのは、国家情報院協力者の自殺企図で国家情報院がもはや嘘をつけない状況になってからだ。 それまで朴大統領がナム院長からどんな報告を受けていたかは知る術がない。 だが、当時セヌリ党実力者が何度も‘発行手続きの問題はあったが、内容を偽造したわけではない’などの発言をしたことを見れば、朴大統領にどんな報告が上がったかを類推することは難しくない。
結局、ナム院長は正直でも有能でもなかった。 機敏に判断しなければならない時にアマチュア的未熟さを見せたし、原則通りに処理しなければならない時に真実を偽り歪曲した。 そしてその結果は、国家情報院の総体的無能を万国にさらしたのだ。 国家情報院がこのように国際的嘲弄の種になったことも珍しい。 「状況がこのくらいまでなれば、大統領が当然に国家情報院長の責任を問うのが正常だ。」 だが、朴大統領がそのような勇断を下すだろうか。 最近のセヌリ党実力者の発言に照らしてみれば、その可能性は未だ大きくないと見える。 国家情報院の事後真実隠蔽問題については、検察が捜査着手すらしていない。
キム・ジョング論説委員
ナム院長のもう一つのニックネームは‘ナム・スンシン’という。 任地を転々とするたびに執務室に李舜臣(イ・スンシン)将軍の肖像を懸けるためについたニックネームだ。 ところが李舜臣将軍は決して愚かな判断で敗軍の将にはならなかった。‘王の恩寵’に力づけられて自身の誤りを免れ、未練がましく地位を守ろうとしたことは更になかった。 ナム・ジェジュン院長の選択は何だろうか。 ‘陸軍士官学校3学年生徒’というニックネームが、刃物のような軍人精神を発揮する側へ行くのか、さもなくば責任を回避する未成熟者の甘えに行くか、一度見守ろう。
キム・ジョング論説委員 kjg@hani.co.kr