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【編集局から】司法府が問題だ / キム・ジョンチョル

キム・ジョンチョル政治部記者

 民主労総本部の事務室ドアを壊して入った警察が差し出したのは逮捕令状だった。 5500人の警察力を動員してさる22日、民主労総が入居している京郷(キョンヒャン)新聞社の建物を取り囲んだ後、強制的に建物に押し入った法的な根拠だ。

 警察が捜索令状の発給を受けずに逮捕令状だけを持って主人が拒否した私的な空間に強制的に押し入ったことは刑事訴訟法違反だという指摘が多いが、より根本的な問題は、裁判所が鉄道労組幹部に対する逮捕令状を簡単に出したという点だ。 業務妨害罪を調査するという名目で発給される逮捕令状は、労働者のストを破壊する超強力な凶器だからだ。

 ストが発生すると、使用者は業務妨害の疑いで労組幹部たちを検察や警察に告訴又は告発する。その後の手順は分かりきっている。労組幹部は当然召喚を拒否し、3,4回、このような形式的な手続きが終われば逮捕令状が出る。 狭いこの国で逃げるところがどこにあろう。曹渓寺(チョゲサ)があって幸いだが、警察は不法な手段もいとわないから労組指導部が検挙されるのは時間の問題だ。 逮捕された人は同じ容疑で拘束令状が請求され、裁判所はほとんどの場合令状を出してやる。 今回も、逮捕された鉄道労組幹部は2人とも拘束された。 指導部が拘束された場合、ストは事実上労働者の敗北に終わる。 労働者の争議権が、憲法と労働関連法に保障されているが、現実では公権力の介入により実効性がない。業務妨害罪を適用した逮捕令状こそ、労働三権を無力化する怪物だ。

 そういう面から、政府の労働弾圧の責任の相当部分は裁判所にある。逮捕令状を棄却した場合を想定して考えれば、裁判所の役割がどれほど重要かが分かる。ストに業務妨害罪の容疑を適用してはならないというのは常識に属する。使用者の業務を妨害することで、労働者の要求を貫徹しようするのがストライキであるのに、業務妨害罪で処罰するというのが話になるか。 韓国の裁判所も、このようなことが時代錯誤的であることをよく知っている。 「ストライキが常に業務妨害罪に該当するわけではない。 予測不可能な時点で電撃的にストが行われ、事業運営に損害がもたらされた場合にのみ、業務妨害罪が成立する」として、業務妨害罪を厳格に適用するよう求めた最高裁の判例が2年前に出た。にもかかわらず全国の裁判所は、鉄道労組幹部28人に対して「犯罪容疑に対する疎明がある」として逮捕令状を発給した。 2年前にくらべて深く考えなかったという意味だ。

 さらに、今回の鉄道ストは徹底して“合法”的に進められている。2度にわたる組合員総会でストを決議した後、争議調整期間を経た。 鉄道運営に必要な必須要員はストから除外し、水西(スソ)発KTX子会社設立反対(政策)だけでなく、賃上げ交渉決裂(労働条件)もストの理由にした。 これ以上に合法的なストは考えられない。 法違反がないにもかかわらず、逮捕令状を習慣のように警察の手に握らせてやったのは、裁判所の権限乱用であり“逸脱”だ。

 司法府が労働者に巨額の損害賠償金を課しているのも、労働弾圧の悪辣な手段として用いられている。現代(ヒョンデ)自動車の非正規職労働者たちに90億ウォン(12月19日)を賠償するよう判決したのをはじめ、双龍(サンヨン)車労組46億ウォン(11月29日)、現代自動車労組20億ウォン(10月10日)、コレール(韓国鉄道公社)労組69億ウォン(2011年3月)などの判決が相次いでいる。賠償金のために、個人の財産と給与まで差し押さえられた労働者たちが最近、自殺という極端な選択をしていることから分かるように、このような下劣な判決は寄る辺のない労働者を死に追いやるものだ。 コレールも今回のストと関連してすでに77億ウォンの損害賠償訴訟を提起した。裁判所の現在の雰囲気では、スト後に鉄道労組員たちは再び巨額の借金爆弾を抱えることになる。労働者たちを崖っぷちへと押しやる、血も涙もない判事たちが恐ろしい。

キム・ジョンチョル政治部記者 phillkim@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/617005.html 韓国語原文入力:2013/12/25 20:28
訳A.K(1819字)