米国は自国本土に対する北韓の核ミサイル攻撃の可能性を理由に挙げて、2017年までに10億ドルを投じてアラスカ ポートグリーリー基地に地上発射迎撃ミサイル14基を追加配備することにより、米国西海岸のミサイル防御(MD)戦力を50%増強させることにした。 米国のMDシステム構築は実際の試験で迎撃システムの成功率が50%程度に過ぎず、その実効性が疑われて‘税金浪費’という批判も少なくない。 それでも米国がここに精魂を込めるのは、長距離誘導弾はすでに多くの国家が保有しており、MDシステムの開発を通じて米国の相対的優越性を占有しようとすることにその目的がある。 このような理由で米国はMD構築に莫大な予算を投じてきたし、MD開発事業は米の国軍事産業の決定的比重を占めている。
事実、北韓が核兵器を持って米国本土を破壊するという威嚇に対してワシントンは‘一笑’に付した。 米国は北韓ミサイルの本土打撃可能性に注目するのではなく、MD構築のための予算拡充の名分を北韓に求めているためだ。 MD軍備拡充の最大受恵者は軍事産業にあるので、北韓の核ミサイル攻撃威嚇は米国の軍産複合体に大きな贈り物をくれたわけだ。 韓国もまた、米国の武器を最も多く輸入する国家として、米国軍産複合体の育成に少なくない役割を果たしている。
米国は国際関係で新たな挑戦を受けているが、それは中国の浮上だ。 冷戦以後、永遠の友邦も敵もない冷酷な国際関係の中で、中国との政治的覇権競争が避けられなくなったのだ。 米国はバラク・オバマ大統領が提示した‘アジアへの中心軸移動’という外交政策基調を維持しており、極東地域の重要性を強調してきた。 今回のMD拡充は中国を牽制し東アジアの軍事覇権維持のための橋頭堡であり、同時に極東地域経済進出のための保護網として使われると表明している。
これに対して国際関係専門家らは 「北韓が核開発をあきらめるよう中国が圧力を加えろという米国の強力なメッセージ」という解釈を出した。 これは的外れな見解だ。 第一にMDの拡大は、米国が北韓との平和的問題解決に対する意志がないということを示したものであり、軍産複合体の利益を尊重した結果だ。 第二に、中国は対北韓政策で北韓の核問題妥結も重要だが、北韓体制が崩壊せずに社会主義体制を維持できるようにすることに集中しており、米国の軍事的圧力に屈して自国の国際的地位を曲げることもないだろう。 むしろ習近平指導部は、米国の軍事的圧力に軍備増強を通じて米国との覇権競争に乗り出すだろう。 第三に、たとえ米国の推奨で中国が北韓に圧力を加えるにしても、平壌(ピョンヤン)は自国の安保が保障されない限り核開発放棄はしないだろう。 要するに米国のMD強化は中国に米国と対抗する正当性を提供するだけに終わった。
習近平時代の中国は‘中華復興’というスローガンを新たに標ぼうした。 いつにも増して中国人の自負心を強調し、強大国としての自国の国際的地位を強調している。 これは習近平時代のスタート初期から現れた極東地域の覇権野心と連結されたもので、今回の米国のMD強化は明らかに米・中両国間の覇権争いが韓半島を巡ってなされるという兆候だ。 過去の米・ソ二強体制の下で韓民族は苦難と逆境の中で半世紀を過ごしてきたが、今は韓国と北韓が米・中間のアジア地域覇権競争の渦の中に再び巻きこまれている。 韓民族に新たな民族受難の危機が到来すると憂慮される。
パク・ハンシク米国ジョージア大学教授・政治学