米国ホワイトハウスのトム・トニロン国家安保補佐官が昨日、「既存の約束について交渉、履行するために北韓と話し合う準備ができている」と語った。北の‘意味ある措置’を前提に‘真の交渉’に乗り出すということだ。これに先立って朴槿恵(パク・クネ)大統領は一昨日、初めての閣僚会議で“韓半島(朝鮮半島)の信頼プロセスが作動するための努力を止めてはならない”と強調した。この日就任したリュ・ギルジェ統一部長官も対北人道支援の意志を再確認し、6・15共同宣言や10・4首脳宣言を挙げて、既存の約束が尊重・遵守されるべきだと明らかにした。制限的ではあるが対話の窓口を開けておき歩み寄る構えだ。
朝鮮半島を巡る軍事緊張が高まっているために、このような動きを儀礼的とみることもできる。実際、北は一昨日始まった韓-米合同軍事演習に対抗して威嚇的な行動を見せており、休戦ライン付近の近海などで偶発的な衝突が起きる可能性もある。しかし、そうならないようにすることが政府の仕事だ。対話の糸口を投げ出さないことは、それ自体で最悪の事態を防ぐ効果がある。特に現在、我が国と米国の新しい政権がスタートして対北政策の基本的な枠組みを作っていく時だ。北にいかなるサインを送るのかにより状況が大きく変わることもある。
対北政策はバランス感覚が重要だ。強硬政策は短期的には分かりやすいが、多くは確固とした成果がなく、事態悪化につながる。強硬的な対応が相乗作用して、過去に懸命に築いた成果まで崩しかねない。李明博政権の過去5年がまさにそうだった。だからといって、やみくもな融和策が解決策になるわけでもない。相手が私たちの意図を誤認してしまえば、全体的に問題がこじれることになる。そのため現実的ながらも創意的な歩み寄りが重要だ。現況でも概ねうまく進んでいる開城(ケソン)工業団地は良いモデルだ。‘韓半島の信頼プロセス’がまともに稼動するには、‘作動努力’とともに内容をどのように充実させるかについて緻密な研究が必要だ。
北の核問題を巡る20年間の軋轢は、今や最終局面に至った。朴政府は任期中に核問題を解決して統一の礎を築くという目標を成し遂げなければならない。そのためには目先の状況に追われるのではなく、問題を根本的に解決する政策を作らなければならない。“袋小路に入って問題の本質を見失ってはならない”というリュ長官の話は妥当だ。彼が就任辞で明らかにした通り、“南北関係と東アジアおよび世界の流れを綿密周到に注目し、それに基づき南北関係を主導するための適切な政策を提示”することを期待する。