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[朴露子ハンギョレブログより]新自由主義の世界的没落と韓国

登録:2012-11-26 09:53 修正:2012-11-26 23:24
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授

 いま韓国は大統領選挙戦の熱気に溢れています。もはや搾取工場のような現実に耐えられないという世論の声をようやくはっきりと認識した文、安、朴などの「主流」候補たちは一様に何か万能の呪文のように「福祉」を叫んでいますが、誰一人としてまともな福祉政策の推進のために中産層以上の層に対する増税と特に企業税の大幅引上げが必要だと主張する人はいません。それだけに普遍的な福祉の実践への真摯な意志を読み取りにくいと言えるでしょう。しかし、ほとんどの視線が「単一化」などの、事実上極めて周辺的な問題に集まっているこの瞬間、誰も本格的な問いを投げ掛けようとしません。一体、大韓民国がこれまでのやり方のままで大丈夫なのか、大韓民国の基本的な社会経済的なモデルが何であり、そのモデルはいつまで有効なのか、このような話を誰も持ち出そうとはしません。氷山の多い海域に突入してもその氷山に対する関心をまったく持とうとしないのは果して『タイタニック』の船長だけでしょうか。

 大韓民国は基本的に特定の資本財(船舶など)と中間消費財の輸出で切り盛りしています。独裁時代末期におおよそ60%にすぎなかった貿易依存度は、いまや「新自由主義的民主化」過程を経てほぼ80%以上になりました。南韓の輸出が国民総生産に占める割合が43%ですが、産業構造がやや類似している日本の場合は11%にすぎません。実は輸出依存度のレベルでは南韓に最も近い国はサウジアラビアのような「特定商品(石油)輸出国」なのです。いくらドイツがここ10数年間に労働者の賃金の人為的な低下(抑制)と低価商品の輸出による成長などのような「韓国の道」を歩んできたとはいえ、それでもまだ輸出依存度は33%程度です。参考までに、北朝鮮の貿易依存度は最近はかなり上がったものの、まだ国民総生産の40%程度にとどまっています。極めて貧しいのは事実ですが、それでも自己完結性のある経済構造を志向してきた点は明らかです。

 一部の資本財と特に特定品目の消費財(自動車や携帯電話など)を売ったお金で買ってくるのはエネルギーと食糧です。韓国の食糧自給率は日本よりやや高い51%(2010年現在)ですが、穀物自給率は産業化された世界では珍しい26%です。参考までに、領土が狭く人口密度の高いベルギーでも穀物自給率は約51%であり、工業構造と消費財輸出による「成長」戦略において韓国と瓜二つのドイツはむしろ106%に達しています。コメを除けば、韓国の場合は「自給率」云々できるものもありません。小麦の場合は約0.4%(!)ですから。普段私たちは意識せずに暮していますが、韓国における農政の総体的な失敗は災害レベルの規模です。ちなみに北朝鮮の食糧自給率は約75%です。1990年代初頭まではソ連からほとんどただに近い「親善価格」で供給してもらっていた石油などが途切れ、食糧危機で数え切れないほどの人民が飢え死にしたことを私たちはよく覚えていますが、実はエネルギー分野における対外依存は南韓が北朝鮮より高く、食糧自給率は遥かに低い水準なのです。もしこれ以上エネルギー輸入ができなくなれば、果して南韓でどんなことが起るでしょうか?そこまで考えるのはまだ早いと思いますが、今まで特定の製品を輸出しエネルギーと食糧を輸入する「我々式の資本主義」(?)モデルには今、赤信号がともっているのです。

 ここ10数年、韓国経済(実は最近は北朝鮮の経済までも)支えてきた中国の高度成長はもはや終わりつつあると見なければなりません。今年から約2~3年間はおそらく7%台の成長が続くと考えられますが、その後は5%台以上の成長を期待するのは難しいでしょう。アメリカとヨーロッパ、日本の沈滞で輸出による成長戦略は危機に瀕しており、しかも資本主義経済の難病である過剰重複投資、不動産バブルなどが加わり、今後の展望は極めて不透明になっています。10年前まで中国の工場稼働率は90%だったのですが、今は60%、すなわち韓国の平均稼働率よりさらに低い数値です。「社会主義」が死文化され、実際は「成長」「開発」「経済的な成功」でその正当性を維持してきた共産党は、果してこれらの新しい条件下で高まる基層人民たちの不満をなだめ続けられるでしょうか。危機的な状況で分裂の兆しを見せはしないでしょうか。10年前まで中国との地域的な分業構造は韓国経済としての「確実な成長要因」として認識されていたものの、今は中国との「連動成長」の限界が先に見えています。連動成長は場面によっては連動危機も避けられないからです。

 国家が主要銀行をすべて所有し、不良銀行問題をそれなりに解決し、莫大な規模の浮揚策を講ずることのできる「国家主導」―すなわち、現実社会主義の遺産― のお陰で中国は少なくとも成長はしているものの、新自由主義がより強固に根を張ったヨーロッパでは、近未来は有意味な成長はおそらくないでしょう。来年は確実にないはすです(http://www.bloomberg.com/news/2012-11-07/eu-cuts-2013-growth-forecast-as-crisis-weighs-on-germany.html )。問題は実はその先にあります。「ヨーロッパ連合」というモデルは果して持続可能でしょうか?このモデルの実体は(レトリックを取り除けば)、ヨーロッパの工業化された核心部(ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、北部イタリア、スカンジナビア)の資本と商品のその周辺部(南欧、東欧)への「自由な」移入、そして周辺部の労働力に対する「自由な」搾取です。しかし、今特に左翼運動が歴史的に強い南欧でこのモデルに対する大規模な反乱を起こし始めており、他方では周辺部への輸出の最大化のための核心部における労働者の賃金抑圧は今や内需沈滞の要因になり、総体的な経済不良化をもたらしています。実は失業と無制限の搾取に露出されている周辺部の労働者たちにとっても、また賃金が下がり続け次第に非正規雇用に回されている核心部の労働者たちにとっても、「ヨーロッパ連合」は単なる災難、敵にすぎません。このことを完全に理解するのに時間がかかるかもしれませんが、ヨーロッパに少しでも民主主義が残っている限り、ヨーロッパ連合は明らかに破裂してしまうことでしょう。ファッショ独裁のようなものでない限り、長期的にこの怪物を維持する力などないはずです。しかし未来がどうなろうが、おそらく今後は特に南欧が全世界の新自由主義的秩序を動揺、撹乱させ続ける台風の目として残ることでしょう。

 中国のような準周辺部であれ、ヨーロッパのような核心部地域であれ、新自由主義的な世界秩序は次第に没落に向かっています。その没落はまだ始まったばかりですが、その速度が本当に加速化すれば貿易に絶対依存的な韓国経済に死刑宣告が下されるかもしれません。非正規、下請労働者たちを容赦なく絞り取り、特定品目の輸出で財閥の私腹を肥やしている今までのような我々の経済モデルは、反民衆的で非道徳的であるのみならず、なんらの持続性もないし、世界的な状況の変化によって簡単に内部破壊されやすいのです。船員たちが契約職としてスズメの涙ほどの賃金を受け取り、一等客室と三等客室の間が雲泥の違いである上、「不沈艦」も単なる神話にすぎなかったタイタニック号と大差ありません。私たちにとって唯一の真の対応策とは、経済社会的なモデルを根本から変えることです。一部の部門(主要大企業、銀行、教育、医療)を社会化することにより、社会的な格差を減らすことに焦点を合わせ、何より自然エネルギー開発、石油/ガス消費の代替、脱核、そして農業の発展に社会のあらゆる資源を集中させ、非正規労働者の正社員化と低賃金労働者たちの計画的で大々的な賃金引上げにより内需の基盤を整える、人間中心の計画的で社会的な経済のみが窮極の代案になるでしょう。しかし、今の「主流」大統領選挙候補者たちの中にはこのような根本的な問題に誰も関心を表明していません。そのため、私としては ―当選可能性と関係なく― キム・ソヨン労働者大統領候補を支持することは極めて自然なことです。「搾取工場」モデルの弊害を誰よりも熟知しており、そのモデルの最悪の特徴の一つである非正規労働者に対する搾取に立ち向かってきた女性労働者であるだけに、キム・ソヨン候補のような人々こそが今後「我々式資本主義」モデルの解体と人間中心社会建設の主役になることでしょう。

韓国語原文入力:2012/11/22 20:52

http://blog.hani.co.kr/gategateparagate/53619 訳J.S(3601字)