北朝鮮は最近イスラエルと衝突したイランと距離を置き、米国に対する非難を自制している。このような分析が示された。
米国のシンクタンク「スティムソンセンター」傘下の情報分析サイト「38ノース」は24日(現地時間)、イスラエルによるイラン攻撃と米国によるイランの核施設に対する攻撃を相次いで批判する北朝鮮外務省の報道官談話を分析した結果を発表した。
まず38ノースは、最近相次いで2本の外務省談話が発表されたこと自体は、北朝鮮がイランとイスラエルの対立を深刻にとらえていることを意味すると判断している。1997年まで遡っても、北朝鮮がイラン問題に関して相次いで談話を発表したことはなかったという。北朝鮮は2015年以降、中東の対立について外務省談話をほとんど出していない。イランとイスラエルとの衝突に関しても、2023年10月のハマスによるイスラエル攻撃以降は公式に論評しておらず、2024年のイスラエルによるイラン攻撃に関しても言及していないほどだ。
38ノースは、北朝鮮がイランを全面的に支持する発言をおこなっていないことも指摘している。北朝鮮のイランに関する声明が少ないため1対1の比較は難しいが、過去の声明ではイランを「全面的に支持する」と表現していたことと比べると、はっきりとした違いがあるということだ。北朝鮮外務省の報道官が昨年12月のシリア危機の際に「シリアの政権と人民に対する全面的な支持と連帯を表明する」と述べていることとも対照的だ。
一方、米国のトランプ大統領に対する非難は弱まっている。今月23日、北朝鮮外務省の報道官は、前日の米国によるイラン核施設への攻撃について「主権国家の領土完整(領土を完全に治めること)と安全利益を乱暴に蹂躙(じゅうりん)した米国の対イラン攻撃行為を強く糾弾する」と述べている。これは北朝鮮が、19日にイランを先制攻撃したイスラエルについて「極悪な侵略行為であり、どうあっても容認できない反人倫犯罪」、「中東の平和のがん的存在であり、世界平和と安全を破壊する主犯」と辛辣(しんらつ)に糾弾したこととは大きな温度差があるというのだ。このことは、トランプ大統領に対する直接的な批判を自制しているこのかん北朝鮮の基調に通じる、と38ノースは判断する。
中東問題に関して、ロシアと歩調を合わせようとしている様子もうかがわれる。38ノースは、13日にイスラエルがイランを先制攻撃してから6日もたった19日になってようやく北朝鮮外務省の談話が発表されたことに注目すべきだと指摘する。その間の17日にはロシア国家安保会議のショイグ書記が北朝鮮を訪れ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に会っているという。朝鮮中央通信は「複雑な国際および地域情勢をはじめとする相互の関心事となる諸問題に対する両国指導部の見解と意見が幅広く交換され、完全に見解が一致した」と報道している。これを根拠として38ノースは、ショイグ書記が米国と中東についてのプーチン大統領の基本的な考え方を金正恩委員長に説明した可能性があると推測している。