北朝鮮が米大統領選挙直前に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行ったことで、選挙に影響を及ぼす狙いがあるのか、また、実際に影響はあるのかに関心が集まっている。
米国家安全保障会議(NSC)のショーン・サベット報道官は30日午後(現地時間)に声明を発表し、「米国は北朝鮮のICBM発射実験を強く糾弾する」とし、「今回の発射は国連安全保障理事会決議に対する明らかな違反」だと述べた。また「すべての国がこのような違反行為を糾弾」し、「真剣な対話」に応じるよう北朝鮮に求めるべきだとし、「米国は本土と韓国、日本の安全保障のためにすべての必要な措置を講じる」と語った。
北朝鮮による今回のICBM発射実験は、米大統領選挙が間近に迫り、北朝鮮軍のロシア派兵が進められており、ワシントンで韓米安保協議会(SCM)会議と外交・国防(2+2)閣僚会議が開かれる中で行われた。米国のマスコミは大統領選挙直前に北朝鮮がICBMを発射したという点を強調している。
米国の大統領選挙においては通常、外交政策や対外状況が及ぼす影響は限られている。しかし今回は、北朝鮮と関連し2つの点において過去とは異なる。まず北朝鮮と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が頻繁に取り上げられ、「選挙の争点」になった。ドナルド・トランプ前大統領は「私は金正恩とうまくやっていた」とし、金委員長との関係を前面に掲げ、「核兵器を持った者とうまくやっていくのは良いこと」だと重ねて強調した。
一方、カマラ・ハリス副大統領側は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席とともに、金委員長を代表的な独裁者に挙げ、トランプ前大統領を批判する根拠にしている。ハリス氏は29日、ホワイトハウス前の遊説でも「プーチンや金正恩のような独裁者がトランプを応援している」と述べた。北朝鮮としては、このように頻繁に取り上げられることで「存在感」が強くなった状況だ。
また、ウクライナとガザ地区の戦争が続き、ハリス候補が副大統領を務めるジョー・バイデン政権の対外政策と世界戦略の脆弱性が浮き彫りになっている状況だ。トランプ氏は「私が政権を握った時は戦争がなかった」と強調してきた。自分が金委員長と会談した後は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射しなかったのに、バイデン政権が北朝鮮との関係を台無しにしたと主張している。
こうした中、トランプ氏はウクライナに対する軍事援助を「一方的な支援」だとし、支持層を結集させてきた。ガザ戦争は、米国の継続的なイスラエルへの軍事援助に不満を抱いたアラブ系有権者がハリス氏に背を向け、トランプ氏に有利な条件になった。北朝鮮のロシア派兵もハリス氏にとっては否定的な材料だ。
すでに米政府内外では、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が米大統領選挙に影響を及ぼそうとしているという疑念が広がっている。ガザ地区とレバノンに強攻を繰り広げる背景には、バイデン政権の対外政策の失敗と弱さを浮き彫りにしようとする意図もあるということだ。ワシントンでは、ネタニヤフ首相はトランプ氏が政権を握ってこそイランに入った穏健派政権と米国が和解するのを防げると判断している、という分析も出ている。
結局、北朝鮮はトランプ氏の政権獲得の可能性が以前より高くなったという見通しが出て、バイデン・ハリス政権が苦境に立たされ、自分たちの行動によるテコの効果がより大きくなり得る状況で、ICBMを発射したものとみられる。