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「強いロシアを夢見るプーチンは『権力の機関車』となった」

登録:2024-03-14 08:36 修正:2024-03-14 09:47
ソウル大学国際問題研究所のシン・ボムシク所長インタビュー
ソウル大学国際問題研究所のシン・ボムシク所長(政治外交学部教授)が6日午後、ハンギョレとのインタビュー後、写真撮影に応じている=ノ・ジウォン記者//ハンギョレ新聞社

 ロシア専門家のソウル大学国際問題研究所のシン・ボムシク所長(政治外交学部教授)は、ウラジーミル・プーチン大統領が今回の選挙で「大国ロシアの建設を目指してきたこれまでの努力に対する有権者の支持を再確認することで、権力をより強固にするだろう」と診断した。韓ロ関係については「ロシアと敵対すれば、変化の激しい時期に韓国の利益を守ることは容易ではなくなる」とし「柔軟性を発揮して関係改善を準備すべきだ」と指摘した。インタビューは今月6日、ソウル大学の研究室で行われた。

-今回のロシア大統領選挙はプーチン大統領にとっていかなる意味を持つか。

 「プーチン政権の第1、第2期(2000年、2004年)では脱冷戦後の西側と共存を図ったとすれば、第3、第4期(2012年、2018年)では西側との妥協が難しいと判断した。その時から『大国ロシアの再建』という目標を本格的に推進するために西側との協力、対立を同時に考慮しつつ進んでいくしかないと考えてきたようだ。プーチン大統領は、特にウクライナ戦争後に西側との直接的な対決構図が形成された中、今回の選挙では国民に『攻勢的戦略を保ちつつ大国を目指す路線を継続してもよいか』を投げかけている。正当性確保の面で重要な岐路に立っているわけだ」

-当選すれば、2030年まで30年の任期が保障される。最長寿の大統領だ。なぜこのように長きにわたって政権を握ろうとするのか。

 「2つある。ロシアの政治文化においては政権交代の経験が浅く、形成された権力の交代は容易ではない。もう一つはプーチン大統領の個人的特性だ。彼は(1991年12月のソ連崩壊後の)『失われた10年』の悲劇を繰り返さない、大国を復活させるという『使命感』が強すぎる。プーチン大統領は、政権初期にはNATO加盟の意思を明らかにしていたということが報道で知られており、2008年にドミトリー・メドベージェフを大統領にした時は合理的、実用的な国際主義者の立場を示していた。しかし『テロとの戦い』以降、米国のユーラシアに対する膨張政策が強まり、北大西洋条約機構(NATO)の拡大が本格化したことで、2008年のジョージア戦争、2014年のウクライナのユーロマイダンの勃発により、危機感の中でロシアの対外戦略は急速に強硬化した。3期目と4期目で、以前とは異なりかなり民族主義的、保守的な路線を採択した理由はここにある。強いロシアの復活は団結したロシアが西欧の敵対を乗り越えてこそ可能であり、そのためには権力の集中と強力な統制が必要だという思考の足かせが、プーチンを『権力の機関車』にした」

-世論調査では大統領の支持率が80%を超えるという。信頼できる数値なのか。

 「ロシアでは基本的に指導者に対する強固な信頼を示す層が形成されている。(有権者の)約3分の1、33%ほどだ。ほぼ保たれているこの支持率に、残りの3分の2の半分を合わせた66~67%以上の支持があれば安定的な政権が可能となり、60%中盤以下なら不安だと認識される。プーチン3期目の2012年の大統領選挙では、プーチンの得票率は64.35%だったが、困難な選挙戦での勝利後に感激する姿を見せている。そのためか、2018年の選挙では官が影響力を発揮する様子が見えた。実際の得票率は77.53%だった。ロシア政治の特性の中で読めば、支持率調査の意味は読み取れる」

-今回の選挙で得票率はさらに上がるか。

 「2018年より高いと予想する」

-プーチンがウクライナ戦争を2年以上引きずっているため、世論が悪化しそうなものだが、現実はそうなっていないようにみえる。

 「プーチン3期目、4期目で有権者が保守化し、大国を目指すプーチンの指導力を支持する傾向が強まった。大統領の政治に対する批判は(ロシアが『特殊軍事作戦』と呼ぶ)戦争とともに消え去った。言論統制もあるが、愛国主義が高まる中で団結しなければならないという心理を基盤とした『戦争プレミアム』が作動したのだ」

-プーチンとは一体どんな人物なのか。

 「現在のロシア政治のパターンを『ストロングマン』による独裁、専横と解釈して悪魔化してしまうと、彼をきちんと理解できない。戦争の出口の模索をはじめとしたロシアとの関係の管理の可能性がなくなっていまう。意外にも彼は『心配性』の防衛型に近い。様々なグループの利益を調整しつつ、政権の安定を保つために非常に苦悩している。民間傭兵のワグネル・グループの信望が厚くても軍部は無視できないので、彼らを国防部に吸収しようという一種の次善の策をとったり、『部分動員令』を発して経済的な打撃や動揺などのマイナス要素を減らそうとするなどが代表的な例だ」

-11月の米国の大統領選挙では、ドナルド・トランプ前大統領の当選の可能性が高いとみられる。今後の米ロ関係はどうなるか。

 「プーチンは最近のインタビューで、『予測可能性』を理由に、トランプとバイデン大統領の中では『バイデンの方がよい』と述べている。誰が米国の大統領になったとしても、対ロシア政策の基調は大きくは変わらないだろう。トランプ当選後にウクライナ戦争が終わったとしても、米国はロシアと協力するかを問うなら『しない』だ。かなりの間、米ロの協力の可能性は低いように思える」

-北朝鮮とロシアは武器と食糧を交換したようだ。今後の密着の可能性は。

 「選挙後、プーチン大統領は北朝鮮を訪問するだろうが、最優先ではない。最大の関心事は第1にウクライナ戦争、第2にBRICSなどのグローバルサウスと、ロシア、中国、インドの三角協力関係の拡大だ。その次が中東、北東アジア。ロシアが北朝鮮の砲弾を輸入したのは、戦争の長期化に伴う余力の確保という性格が濃い。その見返りとして、北朝鮮への食糧支援などの協力を通じての、過去に一線を引いていた関係の回復だ。北朝鮮との関係改善は、今後の朝鮮半島秩序において影響力を発揮するための重要なチャンネルの維持という観点から読むべきだ。長期的に東アジアの緊張の中でロシアがグローバルな行為者としての存在感を示すためには、中国に過度に依存してはならないからだ。特に米中対立の中では、独自の影響力の確保が非常に重要だ。そのような意味で、ロシアにとって北朝鮮の価値は高い。これを傍観してばかりいてはならない」

-ロシアは韓国を非友好国とみている。今後、韓ロ関係はどうなるか。

 「ロシアはウクライナへの兵器供給については強く警告しているが、韓国と良好な関係を保つための努力も放棄しないというシグナルを送ってきている。韓国は親西側の自由民主主義国家との連帯戦略を公式化しているが、グローバルサウスや中国・ロシア・インドというユーラシア軸と壁を作っていてはやっていけない。ロシアと敵対すれば、変化の激しい時期に韓国の利益を守るのは容易ではなくなる。柔軟性は『地政学的中間国』にとっては非常に重要な外交の条件だ。鮮明性戦略で利益を得るとしても、同時に柔軟性を発揮し、これらの国々との関係の改善を準備しなければならない」

ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1132030.html韓国語原文入力:2024-03-13 07:00
訳D.K

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