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国際司法裁判所の「イスラエルへのジェノサイド防止命令」、安保理で論議へ

登録:2024-01-29 10:28 修正:2024-01-29 12:43
国際司法裁判所(ICJ)のジョアン・ドノヒュー裁判長が26日、オランダのハーグにあるICJで、イスラエルのガザにおける戦争犯罪に関する暫定措置を発表している/UPI・聯合ニュース

 国連の国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに対し、パレスチナのガザ地区住民に対する集団虐殺(ジェノサイド)を防ぐすべての措置を講じるよう命じた暫定措置決定が波紋を広げている。

 国連安全保障理事会は31日、ICJのこの暫定措置命令について議論する予定だと、ロイター通信などが27日付で報じた。今回の会議は、アルジェリアがICJの命令を安保理決議案を通じて執行するよう要求したことで開かれる。ICJは国連機関ではあるが執行能力がないため、アルジェリアが強制力のある国連安保理決議案を採択しようと主張したもの。

 ICJは、イスラエルがガザ地区で「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」を違反しているとして南アフリカ共和国が先月29日に提訴した件について、イスラエルは自国兵士の集団虐殺行為を防ぐすべての措置を取るよう、6項目に対する暫定措置を命じた。

 ICJは特に、パレスチナ住民を殺害したり、肉体的・精神的に深刻な危害を加えたり、部分的あるいは全体的に物理的破壊を引き起こすために「生活の条件」を故意に破壊するなど、「集団としてパレスチナ住民を破壊しようとする意図を持った行動を取ってはならない」と命じた。ICJは、イスラエルが「ジェノサイドを犯しうる直接的で公開的な扇動」も防いで処罰し、ガザ地区に必要な援助をより緊急に支援しなければならないと命じた。ICJの暫定措置は、最終判決が出るまでさらなる被害を防ぐための一種の仮処分命令だ。ジェノサイドの疑いそのものに対する本案判決の結果が出るまでには、今後数年かかる可能性もある。

 ただし、南アフリカは提訴当時、イスラエルの「ガザ地区への軍事作戦の即時停止」も要求したが、ICJはこれに対しては踏み込まなかった。

 国連安保理決議は、常任理事国である米国が拒否権を持っているため、採択されるかどうかは不明だ。しかし、米国が拒否権を行使すればダブルスタンダードを適用しているという批判も避けられない。ロシアはウクライナ侵攻初期の2022年3月、「ウクライナ領土で始めた軍事作戦を直ちに停止せよ」というICJの暫定措置決定を無視しているが、これを米国は批判してきた。

 イスラエルは反発した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はICJの暫定措置命令後、「イスラエルがパレスチナでジェノサイドを行なっていることを議論するというICJの意志は、恥として残るだろう」と主張した。ただし、ICJが軍事作戦停止を暫定措置命令に含めなかった点は、イスラエルの自衛権を認めるものと解釈し安堵をみせた。

 米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は同日、「我々はその主張(ジェノサイド)には根拠がないと主張してきており、ICJもジェノサイドに対してイスラエルが有罪だと明らかにしなかった」と評した。

 ICJの今回の命令が実際に執行されるのは容易ではないが、記念碑的命令だという評価が出ている。ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)のような悲劇を繰り返さないために作られたジェノサイド防止条約の違反者としてイスラエルが裁判を受けるという歴史的なアイロニーを指摘する声も少なくない。

 イスラエルも、今回の事案の外交的影響を意識している。米メディアのアクシオスが12月に公開したイスラエルの秘密外交公電によると、今回の裁判について「法的な側面だけでなく、実質的な二国間、多国間、経済、安全保障で波紋を起こす恐れがある」と記されている。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1126211.html韓国語原文入力:2024-01-28 19:20
訳C.M

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