イスラエルがハマスの本部だと主張してきたガザ地区内の最大病院であるアル・シファ病院に対する攻撃を続けている中、北部に位置する別の病院も空爆し、少なくとも12人が死亡した。イスラエルは病院を対象にした攻撃を続けており、ガザ地区の保健システムを破壊することを軍事戦略の一つとしているのではないかという分析まで出ている。
非営利救護団体「INARA」の創立理事であり、パレスチナ系英国人医師のガッサン・アブ・シッタ氏は20日、「アルジャジーラ」とのインタビューで「今回の戦争がこれまでの中東戦争と異なる点は、医療システムの破壊がイスラエルの軍事戦略の主軸という点にある」と指摘した。同氏は、イスラエル国防軍(IDF)が先月17日に空爆し、471人が死亡したとされるアル・アハリ病院と、11日からイスラエル軍の攻撃を受けているアル・シファ病院でいずれも勤務した経験がある。アブ・シッタ氏は医療システムが破壊されれば、イスラエル軍の空爆で負傷し運良く生き残っても(適切な治療を付けられず)結局死に至るとし、これは「パレスチナを完全に破壊しようとする軍事戦略であり、一種の大量虐殺」だと強調した。また、ガザ地区では約80万人が燃料・医薬品不足、病院破壊などで医療サービスを受けられない状況だと付け加えた。
ガザ地区のパレスチナ保健省は、北部の都市ベイトラヒアにあるインドネシアの病院でも20日にドローンなどによる攻撃が行われ、12人が死亡し数十人が負傷したと発表した。病院に残っている700人が避難できず孤立しているという。ガザ地区保健省のアシュラフ・アルクドラ報道官は「アル・シファ病院と同じことをここでも行っている」と述べた。国境なき医師団パレスチナ支部のアンバー・アラヤン副局長も、自分が働いているアル・シファ病院の建物に「国境なき医師団」の表示があるが、同日の朝にも銃撃戦が起きたと語った。アル・シファ病院には医療関係者と患者の家族など70人余りが依然として取り残され、食糧と水も底をついたが、建物の外に出られない状況だと語った。車もすべては破壊され、移動手段もない状況だという。
世界保健機関(WHO)などの国際社会は、イスラエルとハマスの戦争で病院が標的になってはならないと強調している。WHO保健非常プログラムの総括責任者、マイケル・ライアン氏は同日、「(ガザ地区内の)36の病院のうち10カ所だけが現在かろうじて機能しており、それさえも本来の機能を果たせていない」と述べた。開戦から6週が過ぎ、ガザ地区の医療システムは事実上麻痺している。北部の病院は凄惨な攻撃を受けて機能を失い、南部の病院は小規模であるため、深刻な負傷は治療できない状態だ。
冬に入ったガザ地区の天気は寒いうえ、湿気が多く、保健危機が深刻さを増している。最近、冬雨が降り、難民キャンプで生活している人々は水因性伝染病や感染など、大きな保健危機にさらされている。ガザ地区保健省は20日基準で、死亡者が1万3300人に達すると発表した。このうち児童は5600人、女性は3550人だ。