20日からニューヨークで行われる国連総会を機に韓日首脳会談を行うことで合意したという韓国政府の発表に対し、日本側は「聞いていない」、「合意の事実はない」と否定した。国連総会の開催までは会談の実施をめぐって両国当局の間で熾烈な綱引きが続くものとみられる。
16日付の読売新聞の報道によると、日本政府高官は前日の韓国大統領室の発表について、「聞いていない。なぜあのような発信が出るのか分からない」と述べた。外務省幹部も同紙に対し「合意の事実はない」と否定した。同紙は「日本側は、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題などの解決に向けた韓国側の対応が見えず、首脳会談を開く環境が整っていないとの認識だ。両首脳が対面しても、短時間の接触にとどまる可能性が高い」と伝えた。
キム・テヒョ国家安保室第1次長は、前日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の英国・米国・カナダ歴訪に関するブリーフィングで、「韓米、韓日首脳会談を行うことで早期に合意し、時間を調整している」とし、「余裕のない日程なので、30分あまりの短い時間に集中的に行う2国間会談を予想する」と述べた。これに対し、日本政府の報道官役の松野博一官房長官は定例記者会見で、「(岸田文雄)総理のニューヨーク訪問の具体的な日程については、現時点で何ら決まっていません」と奇妙な反応を示している。
両国の話が食い違っているのには2つの理由があると推定される。1つ目に、会談の日程が明確に定められていないにもかかわらず、大統領府が急きょ公開した可能性だ。尹錫悦政権は、米中の間で「バランス外交」を行った文在寅(ムン・ジェイン)政権とは異なり、米国のジョー・バイデン政権が推進する対中封鎖政策に積極的に協力する「価値外交」を展開している。しかしバイデン政権はドナルド・トランプ前政権とさほど変わらない「米国第一主義」の姿勢で同盟国である韓国を苦境に陥れている。このような中、支持率回復のために可視的な外交成果を上げなければならない大統領府が、韓日関係が改善されつつあることを強調して「無理な手」を打った可能性がある。
2つ目に、日本が国内世論の顔色をうかがっている可能性だ。岸田文雄首相は今年7月初めの安倍晋三元首相の死後に持ち上がった「自民党と統一教会」の癒着疑惑で苦境に立たされている。加えて、深い検討なしに決定した安倍元首相の国葬問題までもが重なったことで、朝日新聞の最近の世論調査では支持率が40%台序盤まで下落している。このような中で韓国に譲歩する姿勢を示せば、さらに大きな国内的批判にさらされうる。そのことを懸念した日本政府が、韓国と首脳会談を行うことで意見の一致を見ていながら、知らぬふりをしている可能性もある。
結局、会談が行われると思われる20~21日ごろまでは、両国間の最大の懸案である強制動員被害者に対する賠償問題について韓国からさらに多くの譲歩を引き出そうとする日本と、会談後に解決策を模索していこうと考えている韓国の間で、熾烈な水面下の駆け引きが続くことになるとみられる。しかし韓日関係の回復は、米国が切に希望している域内の主要懸案であるため、会談は最終的には開催される方向で調整される可能性が高い。