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ひとまず発足宣言したIPEF、中国の経済的浮上に歯止めかけるか

登録:2022-05-24 06:02 修正:2022-05-24 07:11
米国主導の中国経済牽制体制、発足宣言 
安全保障に続き経済でも中国牽制ネットワークを強化 
米「中国の懸念、驚くべきことではない」と豪語も 
具体的な内容や手段の不備「これから交渉する」
米国のジョー・バイデン大統領と日本の岸田文雄首相が今月23日、首脳会談を行っている=東京/EPA・聯合ニュース

 23日、「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)がついに発足を宣言したことで、アジア太平洋地域への関与を強化し、中国を牽制しようとする米国の構想がもう一つの主要な軸を確保した。ジョー・バイデン政権で活動が本格化した中国牽制協議体「クアッド(QUAD)」(米・日・豪・印)や昨年9月に発足した安全保障パートナーシップ「オーカス(AUKUS)」(米・英・豪)に続き発足したIPEFが、中国の経済的浮上と影響力にどれだけ歯止めをかけるかが、米中戦略競争の行方に重要な役割を果たすものとみられる。

 日本を訪問中のバイデン大統領は同日、東京でIPEFの発足を公式宣言した。バイデン大統領は発足式典で、「21世紀の経済の歴史はインド太平洋で新たに刻まれるだろう」とし、「我々は新しいルールを作り上げている」と述べた。

 参加国は米国、日本、韓国、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの13カ国に決まった。これらの国の国内総生産(GDP)を合わせると、世界全体の国内総生産の40%に達する。台湾の参加は見送られた。

 米国がIPEFの発足に積極的に乗り出した理由は、まずドナルド・トランプ政権時代に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)から脱退したことでアジア太平洋地域で米国の参加する多国間経済協定がない状況を挽回しようとする目的がある。アジア太平洋経済協力(APEC)参加国の国内総生産(GDP)合計は、世界総生産の約60%を占める。日本はCPTPPを主導し、中国は「地域的な包括的経済連携」(RCEP)を率いているが、「太平洋国」を標榜する米国が主導権を握っている多国間体制はなかった。

 もう一つの主な動機は中国牽制だ。ホワイトハウスのジェイク・サリバン補佐官(国家安保担当)は22日、訪韓を終えて日本に向かうバイデン大統領の専用機で行ったブリーフィングで、「中国がIPEF参加国の数や、これに関心と熱意を示す国々の多様性について懸念するのは、驚くべきことではない」と述べた。同日、中国の王毅外相はIPEFについて「産業網の安定を害してはならない」と指摘し、米国のアジア太平洋戦略は「地域国家を米国覇権主義の手先にしようとするもの」だと反発した。サリバン補佐官は「IPEFの参加国の範囲は、その国が(中国ではなく)米国に賭けることを望んでいる強力な証拠」だとも述べた。

 しかし、IPEFはまだ具体的な内容が決まっていない状態だ。公正で弾力性のある貿易▽サプライチェーンの弾力性▽インフラ整備やクリーンエネルギー、脱炭素▽租税、反腐敗という4つの協力の軸が提示されているだけだ。中国に打撃を与えるためには、標準を設定することで中国製品を排除し、技術・輸出統制などの措置が考えられるが、そのような強力な対応は可視圏にない。米国のラーム・エマニュエル駐日大使でさえも、先月19日、アジア諸国の政府が「我々が参加しようとするものは何なのか」と尋ねていると述べた。米国は参加国が協議を通じて内容を充実化していくと説明している。

 IPEFが「開門発車(準備や手続きを整える前に、とりあえず始める)」の状態で発足するのは、米国のジレンマのためだ。バイデン政権はこの枠組みを従来の貿易協定とは異なり、議会の同意が必要ない協約として進めている。アジア諸国に関税を引き下げたり、米国市場の開放度を高めるのは、民主党と共和党いずれも米国人の雇用を脅かすとして強く反対しているためだ。米国の上院議員らは10日、キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表がIPEFについて十分に説明しなかったとして、非難する立場を明らかにした。

 米国の執拗な説得にもかかわらず、一部の東南アジア諸国は参加に消極的な態度を示してきた。これといった実益もなく、多くの国にとって第一の貿易相手である中国を牽制するグループに入る必要はないという判断によるものだ。しかし、米国はクアッド首脳会議に合わせるため、発足宣言を急いだ。分野別参加の可能性を開いたのは、できるだけ多くの国を引き込むための妥協策だ。

 結局、IPEFが米国の思惑通りに進むかどうかは、「開かれたプラットフォーム」として規模を拡大すると同時に、本格的な中国牽制に対する参加国の協力を引き出すという、難しい課題をやり遂げられるかにかかっている。

ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1044008.html韓国語原文入力: 2022-05-24 02:44
訳H.J

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