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「韓国製の服のせいでコロナ感染」?…根拠のない中国メディア報道

登録:2022-04-06 02:46 修正:2022-04-06 09:06
「プラスチックの表面でオミクロン193.5時間生存」 
研究結果を引用…ただし論文には半減期も言及 
193.5時間後は最初のウイルス量の0.0000015倍 
韓国から中国まで船で2週間…生存可能性は低い 
中国、魚やニンニク畑などもコロナ検査
1日、中国の上海のある保健労働者がコロナ検査を行っている=上海/新華・聯合ニュース

 中国メディアは3日、韓国から輸入された衣類からオミクロン株が検出されたとし、感染の可能性があると報じた。韓国製品に対する中国メディアのこのような報道は、先月初めに続き2度目だ。根拠のないうわさではなく、中国の保健当局が述べたものだということで、かなり深刻だ。彼らは何を根拠に、なぜこのように語るのだろうか。

大連市当局「韓国製衣類からウイルス…感染の可能性」

 中国メディア「健康時報」は3日、遼寧省大連市の保健担当部署である大連衛生健康委員会が、韓国からの輸入衣類売り場の店員が新型コロナウイルスに感染したことを発表したと伝えた。衛生健康委員会は、韓国から輸入した衣類や包装材の内部からコロナウイルスの陽性反応が出たとし、ウイルスが付着した衣類などによってその感染者が感染した可能性を排除していないと発表した。また、健康時報によると、江蘇省江蘇市の保健当局も2日、韓国から輸入した4点の衣類がウイルス陽性反応を示したと明らかにした。

 先月も似たようなニュースが報じられている。浙江省紹興市の当局は先月7日、公式ウィーチャット(微信)で「最近、杭州市では、ある人が外国から輸入された衣類から感染したという。特に韓国から輸入された衣類を購入した人は、選別診療所に行ってPCR検査を受けるべきだ」と語った。韓国製の輸入衣類からコロナウイルスに感染する恐れがあると警告したのだ。

 一部の地域は実際に行動に移している。山東省青島市は先月14日、コロナ拡散の原因のひとつとして韓国から宅配便で送られて来た衣類をあげ、韓国発の貨物に対するPCR検査や殺菌の強化に乗り出している。韓国農水産食品流通公社の農食品輸出情報(kati)が明らかにした。

「オミクロンは193時間生存」日本の医大による論文などが根拠

 健康時報などの中国メディアは、特にオミクロン株はその他のコロナウイルスよりも物の表面などにおいて生存する時間がはるかに長いとする研究結果を引用している。京都府立医科大学の広瀬亮平博士らが、今年1月18日に国際生物学論文事前公開サイト「バイオアーカイブ(bioRxiv)」に掲載した論文によると、プラスチック表面に付着したオミクロン株は平均で193.5時間生存する。これは8日ほどに当たり、武漢で発見されたウイルス(56時間)やデルタ株(114時間)よりはるかに長い。実験は温度25度、湿度45~55%で行われたが、これより温度が低かったり湿度が高かったりするとウイルスの生存時間が長くなる可能性があるという。

 中国メディアがあまり扱わない内容がこの論文にはある。この論文によると、オミクロン株は半減期が10時間。当初1000個のウイルスがあったとすると、10時間後には500個に減り、20時間後には250個、30時間後には125個に減るというわけだ。こうして193.5時間が経てば、最初の0.0000015倍のウイルスが残ることになる。韓国製衣類を船に積んで中国に輸出すれば通常は2週間ほどかかることを考慮すれば、たとえ服にウイルスが付着していたとしても生存できない可能性が高い。

 今年1月にこの論文を検討した米ペンシルべニア大学のチャン・ホンタオ教授は、「時間はウイルスを殺す刀だ。国際郵便を通じてコロナに感染する可能性は非常に低い。(中国は)国際郵便を止める必要はない」と述べた。当時の中国では2月初めの冬季五輪を前に、北京で初めて確認されたオミクロン感染者の感染源としてカナダから発送された国際郵便物が指摘され、物議を醸している。北京市の保健当局は、郵便物の紙からオミクロン株が発見されたと主張し、カナダは「不可能に近い」と反論している。その郵便物は1月7日にカナダを発ち、11日に宛先に届けられている。

中国河南省禹州市のある村で。防疫要員がニンニク畑でコロナ検査に必要なサンプルを採取している=ウェイボーより//ハンギョレ新聞社

中国、何としても理由を探し出す

 韓国製衣類がコロナ感染の媒体となるという主張は、中国の中央政府の立場ではないとみられる。中国の保健の司令塔である衛生健康委員会は、公式にこのような立場を示したことはない。大連市や紹興市も、韓国製衣類が感染者の感染原因のすべてだとは主張していない。彼らの主張は、衣類などからウイルスが発見されたため、感染者の感染原因である可能性も排除できないという程度のものだ。衣類からどれだけのウイルスが検出されたのかも伝えられていない。

 服や手紙などからコロナに感染するかどうかは、2020年のコロナ禍初期から議論になっている。大体の結論は、可能性はなくはないものの、数時間経っただけでもウイルスは生存できないため、物を通じた感染の可能性は大きく懸念するほどではないというものに落ち着いた。

 だが、中国は異なる。感染者が多く発生した韓国や欧州、米国などでは、物を通じてコロナが感染する可能性があるという主張は大きな意味を持たないが、1人の感染者が出ただけでも地域全体を封鎖する「ゼロコロナ(清零)」政策を固く守っている中国は、わずかな可能性にも敏感に反応する。中国の一部の地域では魚やニンニク畑などでコロナウイルス検出検査を実施したというニュースが伝えられてもいる。

北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1037588.html韓国語原文入力:2022-04-05 12:59
訳D.K

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