米国防総省が3月29日(現地時間)、2022年「核戦略見直し(NPR)」の概要版で、相手国の核の脅威や攻撃がなくても「極端な状況下」において核兵器の使用を考慮すると明らかにした。ジョー・バイデン大統領が2020年の大統領選挙時に掲げた「核攻撃に対してのみ核兵器で対応する」という「唯一目的」の原則は事実上廃棄されたものとみられる。
今回の核戦略見直しの概要版は「核兵器が存在する限り、米国が保有した核兵器は米国と我々の同盟、パートナーに対する核兵器攻撃を抑止する」と強調した。さらに「米国は米国と同盟、パートナーの核心利益を守るために、『極端な状況下』においてのみ核兵器の使用を考慮する」と方針を示した。
これに先立ち、「ウォールストリート・ジャーナル」は、今回の報告書に「極端な状況下」という表現が盛り込まれるとし、これは核兵器だけでなく、通常兵器や生物化学兵器、場合によってはサイバー攻撃への対応手段としても核兵器を使用する可能性を残すものだと報じた。
バイデン大統領は大統領選の過程で、「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿文で、核兵器によって攻撃を受けた場合のみ核兵器を使用するという「唯一目的」の原則を掲げた。就任後も「軍や同盟と相談してこうした信念を実行に移す」と繰り返し表明した。
しかし、欧州の同盟国と日本などは、中国とロシアの通常戦力に対する核兵器の抑止効果が引き続き必要だとし、このような原則に対して懸念する立場を示してきた。さらに、ウクライナ戦争が進行中である点も、今回の核戦略見直しの内容に影響を及ぼしたものとみられる。結局、米国は70年以上維持してきた「通常兵器による攻撃にも核兵器で対応できる」という核兵器使用ドクトリンを維持したわけだ。
米国防総省はさらに、新しい核戦略見直しが「核兵器の役割の減少と軍縮における我々の指導力を立て直すという約束を強調している」とし、「我々は戦略的安定を持続し、軍拡競争の防止を追求するとともに、可能な分野で危険の減少と軍縮協議を促進していく」と明らかにした。「核なき世界」という大義名分を掲げたバラク・オバマ政権の戦略を否定し、核兵器の役割拡大と新しい核兵器の開発を掲げたドナルド・トランプ政権時代の核戦略見直し(2018年)との差別化を図ったものだ。しかし、「ウォールストリート・ジャーナル」は先の報道で、今回の核戦略見直しが1兆ドル(約1211兆ウォン)以上必要とされる核兵器の現代化の必要性を掲げることになるだろうと指摘した。