新型コロナウイルス感染症(COVID-19)防疫に成功したカリブ海の島国キューバが、独自に開発した新型コロナワクチン候補となる2種類の物質についての臨床試験を行っており、第3世界の注目を集めている。キューバがワクチン開発に成功すれば、米国や欧州連合(EU)などのワクチン獲得競争からはじき出された貧しい国々にとっては、ワクチン確保がはるかに容易になるからだ。
キューバ共産党の機関紙『グランマ』の最近の報道によると、12日(現地時間)に自国のフィンライワクチン研究所の主導で開発された、2番目となる新型コロナワクチン候補物質「ソベラナ(主権)2」が臨床試験に入った。同紙によると、このワクチン候補物質は、ウイルス抗原、人間細胞と結合する「受容体結合ドメイン(RBD)」と非活性化させた毒素を化学的に結合した革新的な物質だという。
フィンライワクチン研究所のビンセンテ・ベンコモ所長は、「8月に始まった『ソベラナ1』の臨床試験は大きな副作用なく進められており、近く試験結果を公開する予定」と述べた。研究チームは年末までに、2つの新たな候補物質についても臨床試験を始める計画だ。同研究所とともにワクチンを開発中のビオキューバファルマ(Bio Cuba Pharma)のエドゥアルド・ディアス社長は「2021年からキューバ人にワクチンを普及できるだろう」との予想を示した。ビオキューバファルマは、32の企業からなるおよそ2万人規模の企業集団で、フィンライワクチン研究所などの20の研究機関と共に様々なワクチンを開発している。
キューバは1980年代から生物工学技術の開発に力を注いでおり、髄膜炎ワクチンやB型肝炎ワクチンなどの8つのワクチンを独自開発し、40カ国あまりに輸出している。このため、キューバが新型コロナワクチンの開発に成功すれば、中南米の発展途上国にとって大きな助けとなるとみられるとロイター通信は指摘した。
世界保健機関(WHO)アメリカ地域事務局(PAHO)のキューバ駐在官ホセ・モヤ氏は「キューバのワクチン開発および普及は、我々の地域の脆弱階層にとって特に重要だ」とし「キューバがワクチン開発を完了すれば、アメリカ地域事務局を通じて普及される」と述べた。また、キューバの開発状況はWHOとGAVIアライアンスなどが作ったCOVAX(コバックス)が追跡していると説明した。
ロイターによると、キューバのワクチンは、ベネズエラなどの周辺諸国やアフリカ疾病予防管理センターなどが注目しており、キューバと保健分野で協力関係にある国々に優先的に供給される見通し。