米国が、北朝鮮が4日に発射した短距離飛翔体に対して控えめな反応を示し、“対話しよう”というシグナルを強く発信している。ドナルド・トランプ政権が北朝鮮の行動を完全に無視するか、強硬対応で対抗するよりは、外交的に解決する方向を選んだものとみられる。
マイク・ポンペオ国務長官は5日(現地時間)、北朝鮮の短距離飛翔体が中長距離や大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではないと強調し、「北朝鮮と対話を続けたい」と述べた。前日、トランプ大統領がツイッターで金正恩(キム・ジョンウン)国務長官に対する信頼を再確認し、対話の扉を開いておいたのと同じ脈絡だ。
ポンペオ長官は同日、FOXニュースやABC、CBSに相次いで出演し、北朝鮮が東海上に向かって発射した飛翔体について、「正確なデータの確保に取り組んでいる」としながらも、「飛翔体は短距離用だった。中長距離ミサイルや大陸間弾道ミサイルではないという確信を持っている」と述べた。さらに「(飛翔体は)いかなる状況においても国際的な境界線を越えていない。それらは北朝鮮の東海に落ちており、米国や韓国、日本に脅威を及ぼしていない」と強調した。
また、「ミサイル実験をしないというモラトリアム(猶予)を破ったのではないか」という質問にも、「モラトリアムは明らかに米国を脅かす大陸間ミサイルシステムに焦点を当てたもの」だと答えた。米国に対する脅威や約束違反とは距離があることを強調したのだ。前日、トランプ大統領がツイッターで北朝鮮の「飛翔体」や「ミサイル」については直接的な言及を控えたのと同じだ。
ポンペオ長官はさらに、対話の意思を明確に示した。彼は「より大きな脈絡で表現したい」としたうえで、「我々は非核化を進めるために、北朝鮮と良い解決策を交渉するあらゆる意思を持っている」と述べた。また「完全に検証された北朝鮮の非核化という交渉結果を得る機会がまだ残っていると信じており、金委員長もこの点を重ねて表明してきた」とし、「先週末に彼が取った行動が、(朝米対話の)障害にならないことを望んでいる」と述べた。さらに「我々は(交渉の)テーブルに戻りたいと思っている。対話を続けることを望んでいる」、「あらゆる外交的機会を動員するつもりだ」と述べた。
ポンペオ長官は前日の夜、トランプ大統領と対話したことについて言及し、「トランプ大統領は、全世界のための最適の道は交渉による解決策であると考えている。我々は朝鮮半島の検証された非核化を外交的に達成するため、北朝鮮との協力に向けて全速力で前進している」と述べた。軍事的緊張の高まりではなく、外交的解決策に力を入れるという点を明確にしたのだ。トランプ大統領は前日、ツイッターへの書き込みで「金正恩委員長は、私が彼と(行動を)共にすることを知っており、私にした約束を破りたくないと思っている」とし、「合意は実現する」と明らかにした。
ポンペオ長官は「ハノイ首脳会談後にも北朝鮮と疎通してきた」とし、「これから数週間以内に、今後どのように進むかについて話し合うことができる、より確実な疎通が行われることを望んでいる」と述べた。
“対話しよう”というメッセージは、米政府が2月末の第2回朝米首脳会談が物別れに終わってから、持続的に表明してきた基調だ。しかし、北朝鮮による飛翔体の発射後、トランプ大統領とポンペオ長官の発言は以前よりも鮮明になった。北朝鮮が追加の武力行動に出て、状況が悪化することを防ぐためと見られる。
ポンペオ長官は「対北朝鮮制裁は維持される」という点も言及した。彼は「今回の発射は、金委員長がロシアのプーチン大統領に会ってから行われた。金委員長が(ロシアで)望みを果たせなかったことを意味する」と述べた。制裁解除に向けて米国との対話に応じるべきというメッセージだ。
米国の“自制”と“対話”の基調が続くかどうかは、もう少し見守る必要があると見られる。飛翔体が弾道ミサイルと判明した場合、米国内部で強硬論が頭をもたげかねない。また、米国の態度変化を求める北朝鮮が、“対話しよう”という程度の提案に応じて、交渉の場に出るかどうかも不透明だ。
韓米は9~10日のスティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮政策特別代表の訪韓の際、北朝鮮の飛翔体問題と朝米対話再開案を集中的に協議するものとみられる。対話再開案として取り上げられている食糧などの人道支援と関連し、ポンペオ長官は今回のインタビューで、「人道支援は認められる。制裁があっても、北朝鮮は食糧を購入できる」と述べた。