朝米首脳会談を2日後に控えた10日午後、シンガポールに到着した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の最初の公式日程はシンガポールのリー・シェンロン首相との会談だった。
午後2時35分(現地時間)にチャンギ国際空港に降り立った金委員長は、直ちに宿泊先のセントレジスホテルに移動し、3時間ほど休憩した。夕方6時25分に宿泊先を離れ、大統領官邸であるイスタナで30分間にわたってリー首相と会談した後、再びホテルに戻った。
金委員長とリー首相は会談場の前で、笑顔で握手を交わし、両側の同席者とあいさつした。北朝鮮側からは金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長兼統一戦線部長やリ・スヨン労働党副委員長、ノ・グァンチョル人民武力相が同席した。金与正(キム・ヨジョン)党中央委第1副部長とキム・チャンソン国務委員会部長の姿も見えた。
金委員長は冒頭発言で「全世界が見守る歴史的会談のため、シンガポール政府が立派な条件と便宜を提供してくれて、我々も不都合なく朝米会談を準備することができた」としながら、謝意を表した。さらに、「朝米会談が成功裏に進めば、シンガポール政府の努力が歴史的に永遠に記録されるだろう」とも述べた。
リー首相は「シンガポールで朝米首脳会談を開くことを決心してくれて、感謝する」とし、「我々は長い間朝鮮半島情勢の発展を注目してきた。朝鮮半島に平和の日が必ず訪れることを願ってきた」と述べた。
北朝鮮とシンガポールの首脳会談は、金委員長にとって本格的な外交舞台へのデビューに当たる。金委員長が2011年末に執権して以来、北朝鮮を離れ他国の首脳と会ったのは、境界または国境が接している韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と中国の習近平国家主席だけだった。リー首相は三番目の首脳会談の相手だ。金委員長にとって同日の首脳会談は、トランプ大統領との談判を控え、シンガポール現地と国際社会の雰囲気を直接体感しながら“ウォーミングアップ”する意味もあると見られる。
リー首相も史上初の朝米首脳会談の“ホスト”であることを積極的に広報している。金委員長との会合の冒頭場面を自分のフェイスブックを通じて生中継したりもした。同日、国際メディアセンター(IMC)を訪問し、記者団に「歴史的(朝米首脳)会談を開催するのに、2000万ドル(シンガポールドル・約16億円)はかかるだろう。このうち半分はセキュリティー関連費用」だとしたうえで、「我々は喜んでその費用を負担する」と述べた。
一方、ロイター通信は、朝米首脳会談の計画に関与する消息筋を引用し、金委員長が12日午前9時、ドナルド・トランプ大統領と会談した後、午後2時にシンガポールを出発する予定だと報じた。同報道が事実なら、ドナルド・トランプ米大統領と短い会談を終えた後、すぐに帰国の途に就くことになる。わずか数時間だけトランプ大統領に会う場合、今回の会談で直ちに具体的な結果は出ない可能性もある。一方、事前協議が上手く進んでいる場合は、短い時間で妥結することもあり得る。ロイター通信はこの日程が「暫定的」と報じた。