ドナルド・トランプ米大統領が5日(現地時間)、“賭け金”を二倍にし、中国との“貿易戦争”という賭博が極端に向かっている。これに先立ちラリー・クドロー米国家経済会議委員長が「慎重な交渉」が進められているとして、事態の鎮静化を誘導したが、1000億ドル(約10.6兆円)分の製品に追加関税の検討を指示したというトランプ大統領の一言でチキンゲームの様相が明確になりつつある。
すでに互いに発効させた30億ドル分に対する高率関税は小銃射撃の水準だ。以後、互いに賦課を公言した500億~1000億ドル分に対する報復関税はミサイルといえる。譲歩と妥協に失敗すれば、互いに“ミサイル”を発射するはずだが、自尊心を賭けた争いとともに利害損得勘定が紛争の全面化を左右するものと予想される。
多くの経済専門家は経済構造としては中国が不利と見ている。まず、貿易が国民経済に占める割合のためだ。世界銀行が2016年基準で計算した国内総生産(GDP)に占める貿易の比重は、中国が37%、米国は27%だ。中国の国内総生産は米国の62%の水準だ。お互いに同じ水準で攻撃すれば、中国の被害が相対的に大きくなるほかない。
輸出・輸入額と貿易黒字がかなり非対称的なのも、中国に不利だ。昨年、中国は米国に5055億9700万ドル分を輸出し、1303億6900万ドル分を輸入して3752億2800万ドル(約40兆円)という天文学的な黒字を記録した。貿易黒字全体の65%が米国だ。中国が「THAAD報復」を加えた時、お互いに正面衝突すれば韓国の損害がより大きいという見通しが出たのと似た状況だ。
このような非対称性は技術的にも中国に不利だ。トランプ大統領が公言した関税賦課対象は合わせて1500億ドル分だ。すでに米国の年間の対中輸出額より多い。中国もすでに500億ドル分に対し報復関税を警告したが、昨年の米国の対中輸出額を見れば、追加措置を取ることができる金額は800億ドルしか残っていない。米国は対中輸入額のうち約3500億ドルがまだ残っており、品目を大規模に追加できる。
しかし、中国は少なくとも表向きには退却の意思を見せていない。朱光耀・中国財務部副部長は4日、記者会見で「新中国建国(1949年)以来、中国は外圧に屈したことがない」とし、「誰かが戦うことを望むなら我々もそうする」と述べた。
中国が信じるものは政治的テコだ。中国が報復関税を課すという米国産輸入品は大豆、豚肉・自動車などトランプ大統領の支持基盤である「ファーム・ベルト」や「ラスト・ベルト」の主力商品だ。11月の中間選挙を控えた彼の弱点を狙うわけだ。
「執行力」でも中国が有利に見える。米国の産業界が反発して、共和党議員たちもトランプ大統領が無謀だと批判している。安い中国製品に慣れた消費者たちの不満も無視できない。一方、先月政権2期目をスタートした中国の習近平国家主席は、有権者の顔色をうかがったり、野党や利益団体を説得する必要がない。さらに、中国の民族主義が断固たる対応を要求する。人民日報は「どうせ刀を抜くならば強く反撃して米国に苦痛を与えなければならない」と注文した。ブルームバーグは最大の石油輸入国である中国が今後、米国産石油をターゲットにするだろうと見通した。中国は2017年に米国産石油輸入量を二倍に増やした。米国の報復が中国の経済成長率に及ぼす影響は0.1%にすぎないという推算もある。
米国の場合、対中圧力に幅広い同盟を利用することができる。しかし、中国は無分別な保護主義の被害者としてふるまうことができ、世界的な世論戦も中国に不利とはいえない。中国が米国財務省債券1兆2000億ドル分の大量売却に乗り出しかねないという見方もある。そうなれば債券金利が上がり、米国政府の資金調達が難しくなる。
総合的に見ると、両国いずれも損害を受けながら世界経済に迷惑をかけるが、中国の出血の方がさらに大きいと見られる。しかし、中国の経済力と影響力が成長した状況なので、米国の損害も少なくないと予想される。北京の市場分析会社ガブカル・ドラゴノミクスのアーサー・クローバー理事は「ワシントンは関税が中国に及ぼす影響を過大評価しているようだ」とニューヨークタイムズに話した。