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[世界の窓] 靖国とセウォル号特別法/李泳采

登録:2014-08-14 17:40 修正:2014-08-15 08:00
李泳采(イ・ヨンチェ)日本恵泉女学園大学国際社会学科准教授

 8月9日に東京でヤスクニ反対東アジア キャンドル行動が行われた。2006年8月15日の小泉総理の靖国参拝以来9年間続いている東アジア市民連帯だ。日本の敗戦を操り上げたソ連参戦の日(「反ソデー」)と重なり全国の右翼も大挙結集し、昨年より二倍以上の警察車両が彼らを阻止するため東奔西走した。日本の右翼はなぜ、靖国問題が出て来さえすれば反発するのだろうか? 靖国の闇にロウソクの灯りを突きつけることが、そんなに恐ろしいことであろうか? しかし真実を隠そうと思っているのは、単に日本だけではないだろう。

 靖国神社は第二次世界大戦の戦犯が合祀されている戦争美化施設として韓国では知られている。間違った説明ではないが、それだけが靖国問題の全てではない。韓国の国立顕忠院やアメリカのアーリントン国立墓地のように、靖国神社も国家のために死んだ軍人を追慕する施設なのに何が問題なのかと、日本の学生は質問したりもする。

 まず、靖国は特定時期の日本の天皇のために作られた施設だ。靖国には、1868年の明治維新前後に天皇制誕生のために死んだ軍人から第二次世界大戦終戦までに犠牲になった軍人約246万人が合祀されている。正確には国家のためではなく、日本天皇のために死んだ軍人および軍属のための施設だ。

 二番目、靖国は追悼の自由を認めない。追悼施設であれば遺族の考えが重要だ。宗教的または平和的な理由で、靖国合祀取り消しを要求する遺族たちがいる。しかし、靖国神社は合祀された246万人は一つの神であり、一度神として登録された人は誰も取り消しできないという。笑えないことに、死んだと思って合祀したが生きて返ってきた軍人がいる。もちろん合祀の取り消しはできない。一度神になれば永遠の神だ。

 三番目、靖国神社の植民地支配は永遠だ。靖国神社には韓国および台湾出身の軍人および軍属など約5万人が日本名で合祀されている。当時朝鮮人は日本人として死んだので、日本人扱いするということだ。ところが日本の軍人および軍属のように援護金の支給を要求すると、1952年以後、朝鮮人の日本国籍は取り消されたので資格がないという。合祀は日本人、補償は朝鮮人として取り扱う。植民地支配は終わったが、死んだ霊魂に対する植民地支配は今なお続いているということだ。

 しかし、靖国問題は日本人たちにとって、それほど簡単でない。敗戦した国家の兵士たちは追慕されてはいけないのだろうか? 日本の平和運動は永らくこの問題を忌避して放置してきた。結局、戦争で死んだ者の慰霊問題は靖国と右翼の専有物になった。冷戦以後に広がった日本人の被害意識は、靖国の戦争史観と結びつくことにより、侵略戦争の犠牲者を美化して英雄化する政治イデオロギーとして再生している。日本人たちは世界大戦当時の戦闘機ゼロ戦を素材にした映画を観て、若い軍人の悲しくみじめな死に目を開いた。靖国で彼らの死が慰められ実際に永眠していると信じるようになった。だが、彼らがなぜ死に、誰が殺したのかについて、映画は一切語らず、観る人々もこれに対し目を開くことはできない。

 靖国神社は、加害者が犠牲者を英雄化することによって加害の本質を隠す施設だ。愛する家族の死に対する悲しみを喜びとして認識させ、むしろ加害者にありがたみを感じさせる錬金術装置だ。たとえ遺骨が帰ってこなくても靖国で神になっていて、自分の息子は犬死にではなかったと、自ら慰めるようにする。 国家が作った矛盾の塊りが、逆に国家と国民を支配しているということだ。

 韓国ではセウォル号事件以後、特別法を巡る社会的論争が熱い。重要なのは死者に対する私たちの追慕方式だ。しかし、正しい追慕のためには彼らがなぜ死んだのかという真実を明らかにする作業が先に必要だ。真相究明のないセウォル号特別法は、全国に散在しているベトナム戦争犠牲者慰霊碑のように、加害者の真実がなく犠牲者のみが美化される、私たちの中のもう一つの靖国施設を作る法になるだろう。靖国の闇にもセウォル号事件の闇にも、真実のキャンドルが照らすことを期待する。

李泳采(イ・ヨンチェ)日本恵泉女学園大学国際社会学科准教授

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/650524.html 韓国語原文入力:2014/08/10 21:22
訳M.S(1853字)

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