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[ハンギョレ21 2011.01.28第846号] 韓国の健康時計は逆に回る

[表紙の話] 生命OTL-貧困と死の二重螺旋/(3316字)
総論だけの健康公平性向上、息が詰まるほど拡大する所得格差…
所得再分配できない政府は国民健康悪化を放置

◆キム・ギテ

1980年5月、英国、ロンドンで小さなパンフレットが発刊された。 ‘ブラックリポート’ という名前のパンフレットはたかだか260冊印刷されただけだった。 3年前に労働党政権の用役を受けて製作されたが、サッチャー政権が執権しながら忘れられた報告書であった。報告書は1977年健康資料を分析した後、当時としては衝撃的な内容を含んでいた。 例えば非熟練肉体労働者の死亡率は専門家集団の2倍で、二つの集団の子供死亡率は3倍以上の格差を示しているということだ。報告書はまさに世界的な反響を起こした。特に知識社会で反響が大きかった。

深刻に悪化する不平等指数

←昨年12月22日、大統領府迎賓館で開かれた保健福祉部の大統領府業務報告の席でイ・ミョンバク大統領が挨拶をしている。「庶民が幸せな暖かい大韓民国」の所得不平等指数は、2000年代に入り急激に悪化している。大統領府カメラマン団

英国で国家の政策課題として健康公平性問題が浮上したのは1997年だった。 保守党政権が退き労働党が執権した年だった。 ブレア政府は全国26ヶの遅れた地域を対象に ‘健康活動区域’ 事業を展開し始めた。 1998年には英国政府の政策方向を集大成した ‘アチソン報告書’ を出した。 報告書が提示した12種類の未来政策開発分野を見れば、すべての政策を対象に健康不平等に及ぼし得る影響を計る健康影響評価を実施し、障害児童学校に追加的財源を提供し、年金対象者に対する財政支援を拡大し老人世代の貧富格差を減らすなどの内容を盛り込んだ。

2009年英国政府は健康公平性改善事業の10年を評価する報告書を出した。 結果は思ったより失望させるものだった。 特に最も重要な目標がイングランド全体と遅れた地域間の平均寿命格差を改善するということだった。 ところが報告書によれば、後れた地域に指定され予算支援のあった70ヶ地域で男女の平均寿命は1.9~2.9才増えただけだった。 イングランドの全体平均寿命はその間に2.1~3.1才増加した。 英国、ロンドン政経大学で訪問研究員として研修を受けているユン・テホ釜山大教授(予防医学)は「健康不平等改善が考えたほどには効果的でなかった」としつつも「ヨーロッパ先進国で最も不公平な国家である英国でこういう努力がなかったとすれば、その格差はより大きく広がったかも知れない」と評価した。 英国政府のアプローチ自体に限界があったという指摘もある。 リチャード ウィルキンスン英国ノッティンガム大教授は彼の本<水準測量器 : より平等な社会はなぜ より元気なのか>で「不平等自体を減らさずに健康問題や社会問題を減らそうとする試みは、あたかも社会・経済的不利益とそれによって生じる結果を断絶しようとする(愚かな)試み」としながら根本的解決策がない政府政策を批判した。

英国の事例は健康公平性事業で英国政府の成果と限界を明確に見せる。 我が国の現住所はどうだろうか。 ここには2つの重要な核心争点がある。 最初に、政府がどれくらい健康公平性議題に積極的なのか、二番目には、私たちの社会の所得不平等水準がどの程度なのか。

我が国は2003年には可処分所得基準で日本と北ヨーロッパ4ヶ国に続き六番目に分配水準が均等な国だったが、6年間に8番目に落ちた。
‘平等社会’ から ‘不平等社会’ に私たちは後退している。

まずわが政府の認識水準を見るために ‘国民健康増進総合対策’ を開いてみた。 総合対策は我が国保健政策の骨組みに該当する。 政府は2003年と2007年に2度 総合計画を発表し、現在は3回目の総合対策を用意している。 政府が昨年11月の公聴会で提示した総合対策草案を調べると、総合計画の2大総括目標の一つとして ‘健康公平性向上’ が提示された。 2007年に作った総合計画にも同じ内容があった。 問題は各論だった。 82ページにわたる公聴会資料集では、健康公平性を高めるための体系的な政策は用意されていなかった。 資料集は健康公平性問題に対して “総括で具体的な指標を立てず各分科の重点課題として反映” すると明らかにした。 キム・ミョンヒ市民健康増進研究所常任研究員は「草案で健康公平性を実現するという目標は設定されたが、これを後押しするに足る内容がなく、政府に政策意志があるのか今後を見守る」と話した。

次に我が国の所得分配動向を調べた。 息がつまる状況だった。 それほど持てる人々と持たざる人々の所得格差が急速に広がっていた。統計庁が昨年出したジニ係数と所得5分位倍率などの所得分配指数を見れば、所得不平等程度が急激に悪化している。2003年から集計されている2人以上世帯集計ジニ係数を見れば、2003年0.293から2009年0.319まで大きくなった。 ジニ係数は0~1の間で分布するが、0は社会成員が完全に同等に所得を分けた時、1は最も裕福なひとりがすべての所得を一人占めした時に出てくることになる。 したがって1に近づくほど所得不平等水準が大きくなるという意だ。 わずか6年間で市場所得ジニ係数が0.026も増えた。富の集中度が高いという意だ。 この過程で国家は何の仕事をしていたのだろうか。 我が国の可処分所得基準ジニ係数を見れば、2009年に0.293だった。 市場所得ジニ係数より0.026低かった。 このことは、政府が租税や社会福祉給与など再分配を通じて階級間所得格差を若干低めたという意だ。言ってみれば政府が所得公平性に寄与したという意だ。

スウェーデンの魔法、韓国の放置

←全国世帯* 所得5分位倍率** 変化

それでは我が国政府の役割がどれくらい大きかったのだろうか。2009年に出てきた経済協力開発機構(OECD)資料によれば顔が赤くなる水準だ。 ひとまず ‘分配政策の模範生’ であるスウェーデンの市場所得ジニ係数を見た。わが国より高い0.43だった。世界で最も所得水準が不公平な米国(0.46)に肉迫する水準だ。 スウェーデン社会政策の ‘魔法’ は再分配政策にある。租税政策等を通じて可処分所得ジニ係数は0.23下がった。 政府の再分配政策が市場の所得不平等水準を半分に減らしたという意だ。 我が国の所得再分配効果の0.026は統計が捕えたOECD会員国中で最も低い水準だった。 OECD平均の0.14の21%に過ぎず、わが国の次に所得再分配を怠けているスイスの0.07の半分にも至らなかった。これほどなら十分に ‘小さい政府’ だ。

ジニ係数が少し抽象的ならば、所得5分位倍率を調べればもう少しやさしい(表参照)。 5分位倍率とは所得上位20%が所得下位20%よりどれくらい多く稼ぐかを示す倍率だ。 簡単に言えば ‘両極化指数’ といえる。 2003年の所得5分委倍率は5.0であったが、2009年には6.1へ急増した。市場で社会の富は上流階層に急激に集中したという意だ。可処分所得の5分位倍率は6年間に4.44倍から4.92倍に増えた。政府の租税・社会福祉政策で資源を配分したが市場の両極化を防ぐには力不足であったという意だ。 先立ってウィルキンスン教授が<水準測量器>で比較した23ヶ先進国と比較すると、我が国は2003年には可処分所得基準で日本と北ヨーロッパ4ヶ国に続き6番目に分配水準が均等な国だったが、6年間にベルギーとオーストリアに後れを取り8番目に下がった。 ‘平等社会’ から ‘不平等社会’ に私たちは後退している。

キム・ギテ記者 kkt@hani.co.kr

原文: http://h21.hani.co.kr/arti/cover/cover_general/28935.html 訳J.S