[表紙の話]貧しい青春にとって愛とは
不完全労働と不透明な未来に疲れて‘ラブラブ’する力まで失ったよ
◆シンユン・ドンウク,キム・ミヨン,イム・インテク
‘88万ウォン世代’の愛は贅沢だ。
いつのまにか韓国は不妊社会になってしまったのではないだろうか? かつて競争に追い立てられ気ぜわしく飛び回り、就職に必要な‘スペック’を積みあげて、それでもきちんと月給をもらえる職場を探すのは難しい、高卒でも大卒でもアルバイトを転々として入社願書を出す時間すら足りなくて…。このような不安定な労働と不透明な未来に苦しめられる88万ウォン世代の愛は果たして元気だろうか?
今日の青春は忙しい。愛に必要な時間と余裕と情熱を許さない世の中は不安定な愛を産んだ。1ヶ月ずっと働いてもせいぜい‘88万ウォン’を手にする青春の時代。‘貧しい愛の歌’は過去の歌ではない。シン・ギョンニム詩人が1988年に発表した‘貧しい愛の歌’は山川が2回も変わった今日むしろ心を打つ歌になった。
←愛は88万ウォンより高い。 イラストレーション キム・デジュン
3万ウォン多くかかった電話料金,“姉,弟のままでいよう”
貧しいからと愛を知らないというのか
俺の頬に近付き触れた君の唇の熱さ
愛している 愛しているとささやいていたお前の息遣い
背を向ける俺の背中に 君の泣き声
貧しいからとどうして知らないだろうか
貧しいからこそ これらを
これらすべてのものを捨てなければならないということを
彼女も貧しさゆえに愛を捨てなければならなかった。26歳の若々しい青春に愛は贅沢だった。8万ウォン、携帯電話料金告知書に打たれた金額を見る瞬間、彼女は恋愛を‘断つことを’決心した。3万ウォンが惜しかった。通話は高くてしないけど、携帯メールも“3度くれば1回だけ”返事を送って自制をしたけれど、もともと5万ウォンだった料金が3万ウォン余計にかかった。いっそその金で学資金貸出を返そうと思った。地下鉄のバイトをしていて出会った年下の青年と恋愛の可能性を実験してみるには彼女の肩にのせられた荷物が重すぎた。2014年、大学授業料貸出償還が終わる日ははるかに遠い。朝から夕方までバイトをしても手にできるお金はやっと100万ウォン内外。1ヶ月60万ウォンづつ学資金貸出を返せば1ウォンでも惜しい。ハン・ジヘ氏はそのように“心の扉を閉じた”。“姉,弟のままにしておこう”せっかく訪ねてきた愛の機会はそのようにして終わった。
愛するとささやいた唇がなぜなかったのか。しかし、かつて20歳のジヘ氏は愛は贅沢だと考えた。大学時期に愛していると告白した男たちが4・5人はいたが、彼らに関心を持つ余裕もなかった。大学に入るやいなやバイト人生は始まった。400万ウォン近い授業料貸出は学校に通いながらも、月に20万~30万ウォンずつ返さなければならなかった。それでも借金は残った。「人生を担保に大学に通った」というジヘ氏の表情が寂しかった。その上、2008年に卒業する頃にはバスの運転をしていたお母さんが事故を起こし、罰金を払うことになった。お母さんは病気で寝つき、双子の弟は収入がなかった。授業料償還にお母さんの罰金まで、そっくりジヘ氏が背負う借金になった。夜明けに出て行き午後に終わるバイトで、からだが重く誰に会おうという考えも起きなかった。そのように時間がない青春の歳月は速かった。‘30歳までには恋愛を一度してみようか?’そのように恋愛は‘決心’が必要な‘勇気’を要することになった。
遊ぶ私が働く私にごめんね
クリスマスを何日か先に控えた日…男は女が卒業のプレゼントに準備した万年筆を取り出して、紙コップの上にクリスマスにかかる一日のデート費用を書いてみた。夕食代 約2万ウォン,映画観覧料 1万4千ウォン,プレゼント 2万ウォン,お茶代 1万ウォン,モーテル費 4万ウォン…10万ウォンを越えた。 …金を借りようかと考えてみたが、借りられるところにはすでに借金をした状態だった。男は女とクリスマスを共に過ごしたかった。夕食を食べて、プレゼントもして、ワインやカクテルも飲んで、普段行く所より少しばかり高級なモーテルですてきなセックスもしたかった。だから…人並みに。男はお金を用意できなかった。 …結局、男は嘘をついた。‘母親の具合が悪い。’それが自分と彼女にしてあげられる唯一のクリスマスプレゼントだった。
このように20代の小説家が描いた最近の20代の恋愛は寂しい。キム・エランが2007年に出した小説集<唾が溜まる>に出てくる短編‘クリスマス特選’には地方から上京してきてバイトをする女と大学を卒業して求職中の男がクリスマスに体験する話が描かれている。このようにロマンチックなクリスマスにもモーテルの部屋一つ借りる余裕がない現実は小説の中だけの話ではない。
←時間もなく財布は空っぽ、20代が情熱を持つ余裕を世の中が許さない。ソウル,南山のNソウルタワー展望台で抱擁する恋人. 写真<ハンギョレ21>キム・ジョンヒョ記者
チョ・ヨンス(29・仮名)氏もガールフレンドとモーテルに行く度に突然怖くなる。恋人が好むモーテルは部屋代が4万ウォン。両親の食堂を手伝って月に60万ウォンを受け取る彼には手にあまる金額だ。しかし、男の自尊心のために行かないで我慢しようとは言えない。彼は年上の恋人が食事代と酒代を出すならモーテル費は自分が払うことで自尊心を守る。ファミリーレストランは「彼女が行こうという場合にだけ行く」。彼女が行こうと言った場合には、自分が出すというサインだ。映画の仕事をしようと大学を中退したチョ氏は今日も念を押す。‘そうだ、30までに私に(映画の仕事の)機会を与えよう。’30を越えた恋人は婚期が近づいたが、とても結婚しようという話を言い出せない。このように今日の青春に明日はない。
今年大学を卒業しワーキングホリデービザを受けとりオーストラリアに発ったチョン・ジンア(25)氏はいつもデート時間を‘800ウォン’で計算した。長年続けたバイトは長年の習慣を養った。彼はインターネットで中高校生の学習相談をするバイトを大学時期ずっとしていたが、10~15分の相談一つをこなせば800ウォンを受け取った。だから恋人と映画一本を見ても‘映画料金8千ウォンならば3時間のバイトなのに…’という考えを振り切れなかった。彼は「遊ぶ私が働く私にごめん」と言った。いわゆるソウルの上位圏大学に通った彼も、バイトに明け暮れた大学時期を過ごした。弟と二人で大学に通えば一度(半年)に800万ウォンずつかかる授業料は「特に豊かでも貧しくもない」彼の家にも大きな負担だった。彼は「いつも午前は授業、午後はバイトをした」と振り返った。休学すればより一層‘がむしゃらに’生きた。「学校でコピーして清掃をして、図書館雑務で8時間仕事をした。その合間合間に顔色を見て採点するバイトをし、週に二回ずつ昼休みに出て行って学生たちの出席点検をして週末バイトに別に走って。」そのように時間当り4千ウォン,1ヶ月に150万ウォンを稼いだ。2回ほど恋愛をしたが「会う前に何かしら計算したりして、自分にこれをする余裕があるだろうかという気がしてしまい率直になれなかった」。結局、恋愛は長続きしなかった。彼は「それで私にごめん」と言う。そして世の中に向かって「頼むから休ませてくれ」と訴える。
就職準備のために離別を告げる
88万ウォン世代が生きるためにする仕事の大半は非正規職だ。非正規職は長く持ってもその有効期間が2年に過ぎない。労働がこのように長期的につながらず、いつどう変わるかも知れず、一時的で暫定的になるが自分の人生を計画して準備するそのような持続可能な人生が可能だろうか? …新自由主義が呼び起こした労働の柔軟化はいつも一時的で暫定的なので、恋愛と愛,家族のように限定的時空間で永らく持続しなければならない人間同士の親密性や繋がり,連帯の枠組みとはまったく似合わない労働形式だ。
オム・キホ氏が書いた新自由主義批判で<誰も人を世話するな>の一部だ。新自由主義の柔軟な労働は頻繁な移動を要求する。しかもソウルに資源が集中した社会では編入と就職を通じてソウルに行こうとする欲望は強まるばかりだ。大邱の大学に通うパク・ジヒョン(22・仮名)氏は編入を準備している。外食関連学科に通う彼女は「大邱には就職するホテルもあまりないのみならず、差別されないためにソウルの大学に編入したい」と話した。それで彼女は当分の間、恋愛は我慢する覚悟だ。「編入する学校で以前の学校の単位も見るからと学事管理もしなければならず、編入準備もあるのでバイトをしなくても忙しい。」つきあった恋人とは昨年夏に別れた。彼女は「3学年になれば恋愛も深刻化する傾向がある」と伝えた。恋愛がこれ以上ロマンでいられない3学年。夏休みをむかえてソウルに上がってきた彼女は編入学院に通って自身に集中している。
←7月30日‘共に働く財団’と20代の団体である‘希望庁’がソウル,合井洞で開いた‘サロン de 仕事論’でキム・オジュン氏が青年たちを対象に講演している。この行事は20代の仕事と社会について考える連続講座だ。 写真<ハンギョレ21>チョン・ヨンイル
編入と就職の成功が‘離別’につながる地方の愛は渡り鳥の愛になった。オム・キホ氏は<誰も人を世話するな>で地方大出身ヒョンソク氏の話を伝える。「ヒョンソクは地方大生の愛は悲しいと話した。地方大ではどちらか一方でもソウルにより早く離れることが競争で成功した人生であるためだ。別れることがあらかじめ前提になり祝わなければならないこととなったところに留まる2羽の渡り鳥の愛は悲しい愛にならざるをえない。」
ソウルと地方でないにしても、空間の分離は離別を招く。同じ地域に住んでいても就職のためには自身を幽閉しなければならないからだ。就職難の中で今日の公務員試験は昨日の司法試験になった。あたかも司法試験の勉強をするかのように自分だけの小部屋に閉じこもり勉強しなければ合格が難しい。それで就職のために部屋に‘閉じこもり’離別を告げるカップルが少なくない。採用試験の準備をするイ・ヘヨン(26・仮名)氏は医学専門大学院に進もうとするボーイフレンドに会う。イ氏は「勉強を始めて週に2回だけ会うことに決めた」として「経歴の邪魔になるならば運命のような愛ではないようだ」と話した。それでもこれらはマシな方だ。時間がかかる恋愛の代りに感情的消耗が少ない‘セックス パートナー’を置く場合もある。オム氏は「今や恋愛は就職の敵」として「上の世代は世の中と交流し自身の席を求めたが、88万ウォン世代は自身の位置を確保するために世の中から孤立しなければならない」と指摘した。
合理的選択,草食男-鉄壁女
大学を卒業して…金を熱心に稼がなければならない時期に失業者…私の周りでも多くの友人が結婚する意志も能力もないと言っています。…これ以上、女と精神的に労働しなければならない必要を感じられない男たちが増えています。…もしかしたら草食男や干物女はいつ終わるとも知れない長期不況の中で、恋愛や結婚後の自身と自身の次世代に平均以上の人生をもたらすことができないこともあるという自己恥辱感から来た悲しい現象ではないでしょうか? …結局、私たちも蜂や蟻のように繁殖は特別な何人かだけがするようになるかと思うと恐ろしいです。
ダウムのアゴラに上がってきた20代‘草食男’(恋愛や結婚には関心がなく自身が関心を持つ対象にだけ没頭する男を称する言葉)の文だ。このように草食男から甘い汁だけを抜けば‘恋愛できない男’‘結婚できない世代’が出てくる。キム・ジョンウン(仮名)氏は25歳になるとともにまともな恋愛ができなくなった。ブログを熱心に書く彼はタロット占い、料理,神話に関心がある。趣味が多彩で新製品に目がなく女性とよく付き合うが恋人には発展しないことから、彼は草食男の外観をもつ。しかし彼は「私は肉食だ!」と叫ぶ。恋愛などは必要ないとは思っていないということだ。彼は「私のように強要された草食男と自発的草食男とは区別しなければならない」と抗弁した。背が少し小さいことさえ除けば恋愛できない理由がないと彼は考える。
草食男は魔法使いに変身する。シン・ジュンチョル(25)氏のブログには‘魔法使い転職慶祝!’イベント写真がある。魔法使いになった友人を祝うために、ジュンチョル氏と友人らがケーキを注文しティーシャツを製作した。‘Finally,He keeps his pure for 25 years….’顔をケーキに埋めた友人が着たシャツに書かれている文句だ。‘魔法使い’とは25才まで童貞を守った男性を意味する。日本漫画に由来した新造語として知られた。ところで友人ばかりでなくジュンチョル氏も魔法使いになる危機だ。彼は「(25才の誕生日まで)まだ3ヶ月残っている!」と叫ぶ。他の人々が見るには彼も草食男。自分でも「草食男リストを見ると確定的な草食男」と言う。事実、彼も未来のために恋愛を少しは我慢した。そのように努力したジュンチョル氏は国立研究所で仕事をする未来が保障された。彼は「周辺では‘ジュンチョルに恋人さえいればオムチナ(何をやってもうまくできる子)になるはずなのに’なあ」として「オムチナと魔法使いは紙一重」と言って笑った。
“片思いが死んだ”
女性も今は‘干物女’を越えて‘鉄壁女’に変身する。鉄壁女とは容貌もよく学歴と家柄もまあまあだが恋愛は出来ない女性をいう。あたかも鉄のカーテンを吊るしたように恋愛を遮断するという意だ。実際彼女たちは恋愛する意志もないではないが、恋愛に対する幻想がありどうせ失敗するなら恋愛は始めもしないという考えを持った自尊心の高い女性だ。そのために実戦恋愛に情熱を傾ける確率は非常に低い。
このように魔法使い・鉄壁女のように恋愛出来ない種族が最近ぐんぐん注目を集めている。キム・チャンホ聖公会大教養学部招へい教授は「88万ウォン世代は一人で過ごすのが気楽で、恋愛はせず結婚は犠牲と考え嫌う」として「費用対効果だけを考え感情労働を避ける」と話した。ことによると時間とお金のような資源が不足した状況で、自我か関係かを天秤で量り出した合理的選択が草食男・鉄壁女だということだ。もちろん村や家族の中で関係を習った経験が不足しているという世代的特性もある。このように進んでいけば本当に女王蜂と王蟻のように強者だけが結婚する時代にならないだろうか?
“片思いが消えた。”(ウ・ソクフン)
“むしろ本気になる恋愛はしない。そのように言う学生たちが増えた。100%な愛はむしろ恐ろしいとも言う。生きるだけで精一杯なのに傷まで受けたら耐えられないから。”(オム・キホ)
“クールでなくカキだ。不思議に情熱を切り捨てる。”(イ・ギュホ)
今や関係の傷は致命打。生き残るにはクールになるほかはない。そして世の中は自己管理できないあなたにすべての責任があると、だからクールになれと無理強いする。新自由主義治下で古臭い愛の井戸はそのように乾いた。<88万ウォン世代>の共同著者ウ・ソクフン延世大文化人類学科講師は「プレゼントをしようとすればお金が必要で情熱が必須だが、資源も情熱もないから片思いが死んだ」と語る。今は‘愛さえあれば死んでも構わない’ではない。
米イリノイ大人類学科博士課程にいるイ・ギュホ氏は「88万ウォン世代は一族あるいは血統を継がなければならないという強迫から抜け出したポスト家父長制男性たち」として「家族に対する渇望,食卓に対する愛着がない彼らは感情の根を切ってしまった機械になった」と指摘した。それでクールというより各自の‘カキ’に閉じ込められた存在とだいうことだ。20代高学歴・中産層・大企業・正規職男性の恋愛を研究した彼は「いわゆる88万ウォン世代でうまく生きて行く男性は愛に内在したものなどを細かく分けてアウトソーシングする」として「世話や面倒見は嗜好と趣味に変え、子供を育て感じる喜怒哀楽は株式とファンドに代わり、性的欲望は類似売春で解決する」と分析した。はなはだしきは家族は‘長期的借金’と言った20代もいるという。
このように裕福だったり貧しかったり、恋愛は負担で家族は荷物だ。ウ・ソクフン講師は「韓国戦争直後にもソウルの青春男女が南大門から東大門まで散策し恋をする再建デートが流行した」として「今が経済的に当時よりさらに難しいこともないだろうにどうして青春の情熱まで干からびるようにしているのか気になる」と話した。
クールというよりカキに閉じ込められた存在
もちろん相変らず世の中には熱い息遣いを分かち合い愛を育て家庭をもつ青春も多い。しかし20代の情熱がますます冷めつつある信号は明白だ。世の中が寒いからだ。20代を絞りに絞る体制に疲れ果て‘ラブラブ’する力まで失った青春が増えている。そのように88万ウォン世代は新自由主義の世の中で愛する自由までも失った。社会は青春のポケットにさらに多くのお金を入れてやり、さらに多くの時間を許諾しなければならない。愛は88万ウォンより高い。これは彼らの問題でなく皆の問題だ。こういう現実を無視したまま誰が愛を美しくできるのか。
シンユン・ドンウク記者syuk@hani.co.kr,キム・ミヨン記者instyle@hani.co.kr,イム・インテク記者imit@hani.co.kr
原文: http://h21.hani.co.kr/arti/cover/cover_general/25496.html 訳J.S