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[ハンギョレ21 2011.12.19第890号] サムスン(三星)の心臓が現代家に渡った理由は?

http://h21.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/30982.html

[経済] サムスンカード所有エバーランド持分17% KCCに売却合意…KCCは主要顧客確保、サムスンは便法相続論難避ける(3297字)


□クァク・ジョンス


  サムスングループが自身の‘心臓’を財界ライバルである汎現代家(KCC)にあっさり渡した内幕は何だろうか?
 サムスンカードが持っているサムスンエバーランド持分の中から17%を汎現代家の一員であるKCCに売ることに合意したサムスン-KCC間の‘12・12ビッグディール’を巡り市場では裏面契約説、一時的な委託説など確認されない噂が出まわるほど関心が集中している。

 "サムスンとKCC(汎現代家)が互いにウィンウィンした。"


  サムスンとKCCは13日、今回の取り引きをこのように要約し去る3~4ヶ月間に進行された秘密協議過程を<ハンギョレ21>に打ち明けた。


  エバーランド株式売却幹事社の一つであるJPモルガンがエバーランド株式の取引意思を二つのグループに打診したのは3~4ヶ月前だ。だが、サムスンとKCCの実務陣は全て驚き飛び上がり難色を示した。特にサムスンとしてはエバーランド株式をKCCに売却することは自身の心臓をライバルである汎現代家の一員(KCC)に渡す利敵行為になりかねない。エバーランドはサムスンの事実上の持株会社の役割をしている。サムスンはイ・ジェヨン-エバーランド-三星生命-サムスン電子-他の系列会社につながる所有支配構造を持っている。また、サムスンと現代は財界1・2位を争ってきた伝統的なライバルだ。


KCC 年間数千億ウォンの新規物量 確保


  だが、事後報告を受けた両社の最高経営陣が肯定的な検討を指示し交渉は本格化した。両グループの最高経営陣がこの取引を損より得が多いと考えた理由は何だろうか?


  KCCとしては何よりもサムスンという主要顧客を確保できることが最大の魅力に挙げられる。KCCは塗料などの建築材が主力事業だ。サムスンの系列会社であるサムスン重工業、サムスン物産などは造船と建築などに年間1兆ウォン 相当以上の塗料を使っているが、これまでKCCとは取引がなかった。


  KCC高位役員は「エバーランドの2位大株主となることを契機に少なくとも年間数千億ウォン規模の新規物量確保を期待できる」と話した。来年の景気が不透明な状況で少なくとも数千億ウォン規模の新規市場創出はこの上ない好材料だ。KCC最高位層ではすでに役職員に「サムスンからKCC製品の競争力が他社より優れているという話を聞けるようにしろ」と指示した。


  またKCCとしては株式投資自体も損する商売ではないという計算だ。エバーランドはすぐにではなくとも、いつかは企業公開をすることになる。サムスンの持株会社であることに加え、現在サムスンの新樹種事業など有望な新規投資を積極的に進めており、今後の株式価値は現在の帳簿価(1株当り215万ウォン)やKCCの買入額(1株当り182万ウォン)を大きく上回る可能性が高い。サムスンは「内部的にはエバーランド上場準備はすでに終えた状態だが、時期はまだ未定」と話した。


  サムスンとしては持株会社体制への転換問題と特典是非論難などを考慮して上場時期決定に慎重を期している。イ・ゴンヒ会長の子息であるイ・ジェヨン サムスン電子社長兄妹は去る1996年にエバーランド転換社債を1株当り7700ウォンで買収した。 エバーランドの上場で彼らが莫大なキャピタルゲインを得ることになれば過去の便法相続贈与論難が再燃する危険性がある。


サムスン "KCC敵対行為の危険性少ない"


それではサムスンはなぜKCCを選択したのだろうか?


  サムスンとしては系列会社や外国投資家にエバーランド株式を売却する場合、不必要な誤解が生じるが、KCCとの取引であればこのような疑惑を払拭させうる。 実際、KCC高位役員は「市場では一時委託説など根拠のない噂が広がっているがサムスンとはいかなる裏面契約もない」としつつ「私たちがそのような疑惑を買う仕事をする理由があるか」と反問した。


  KCCは株式価格が帳簿価対比15%割引されたことはとても安値ではないかという指摘も一蹴する。サムスンは「KCC側で上場企業の場合にも大規模株式取引は相当な割引率を適用することが常識で、しかもエバーランドは非上場企業ではないかと主張し、初めは帳簿価対比20%割引された価格を要求してきた」と話した。実際、最近SKグループの持株会社であるSK C&Cの株式が大量取引される時にも7%の割引率が適用された。エバーランド株式の帳簿価格は今年6月末基準だが、その後 総合株価指数が大きく下がったことも考慮する必要がある。 エバーランドは三星生命の大株主だ。三星生命の株式は去る6月末以後12%程度下がった。サムスンとしてはKCCとの取引でエバーランド株式に対する一種の公定価格基準を用意した形になった。今後サムスン系列会社や大株主間エバーランド株式取引もこの価格を基準とすれば文句が出る素地がなくなった。


  サムスンとしては何よりKCCが自分たちに敵対行為をする危険性が希薄だと判断した。サムスンと現代グループは財界ライバルだが、それぞれ2世経営体制に転換した後には特に争うこともなかった。


  また、サムスンとKCCは事業的に競争関係がない。 KCCはエバーランドの経営にも関心がない。 サムスンは「KCCが今後、社外重役1人を派遣することにした」としつつ「2位大株主として経営状況を把握するための次元であると理解している」と話した。 KCCがエバーランド株式をサムスンと競争関係にある第三者に再売却する可能性が希薄だという点も主要に考慮された。一例としてエバーランド株式を買った投資家がサムスンと特許戦争をしているアップルや政府の影響が作用しうる国民年金に株式を転売する場合、サムスンとしては堪え難い状況がもたらされうる。外国系投資家の場合、このような危険性を排除できないが、国内で事業をするKCCにはそのような可能性は事実上希薄だ。サムスンはKCCとサムスンエバーランド株式を競争会社に売らないという紳士協定を結んだと知られた。KCCはサムスンにエバーランド早期上場と関連して明示的な要求もしていないと知らされた。


財界、ビッグディールで両家関係増進展望


  サムスンはそれでも万一の場合に備え、エバーランド持分を13%だけ売却するという意思を示した。だがKCCが2位大株主でなければ取引するつもりはないと拒否した。結局サムスンカードが持っているエバーランド株式25.64%中17%を渡すことで折衝がなされた。サムスンカードは財閥金融会社の場合、系列非金融会社の持分を5%以上持つことを禁じた‘金融産業の構造改善に関する法’(金産法)により20.64%を売却しなければならないが、残りの売却対象3.64%は別の投資家に売却すると発表された。


  KCCの豊富な資金事情も取引に有利に作用した。KCCは今年、現代車と万都株式の売却だけで保有中の現金性資産が9千億ウォンに達する。KCCは購入資金を現金ですぐに支払えるという意志まで伝達したと知られた。


  サムスン イ・ゴンヒ会長はKCCとの契約前日まで悩んだ末に決断を下したという。 KCCではチョン・モンジン会長が取引を主導し、チョン・サンヨン名誉会長(チョン・ジュヨン現代グループ創業者の弟)が最終決定を下した。サムスンとKCCの今回のビッグディールがサムスンと現代車など汎現代家間の関係増進にも掛け橋の役割をするだろうと財界では見ている。


クァク・ジョンス記者 jskwak@hani.co.kr


原文: 訳J.S