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反復される危機“ホワイトスワン”時代 ③危機の犠牲者 中産層

原文入力:2011/12/08 21:05(3065字)
「上の人がたくさん奪っていくから…中間が減ったわけ」
パク・ヒョン記者


インタビュー/チャン・ハジュン英国ケンブリッジ教授


  チャン・ハジュン英国ケンブリッジ教授は、米国のような先進国で中産層が没落しているのは株主の利益を極大化する株主資本主義の弊害のためだと指摘した。 企業が株主にたくさん配当するために利益を増やし費用を減らすことだけに没頭した結果、良い働き口が消え、これが結局所得格差拡大に帰結したということだ。 彼はこれを「上にいる人々が奪っていこうとするから中間が減るのだ」と説明した。先月中旬に行なわれた電話インタビューで彼は、こういう問題を解決できなければ危機が反復・拡散するだろうと警告した。

株主資本主義は何としてでも
株主に多く配当せねばならぬため
下請け企業を絞り取ったり
中間幹部や老年、熟練の労働者を減らすことになる


←チャン・ハジュン英国ケンブリッジ教授


-先進国政府の解決努力にもかかわらず、金融・財政危機が持続している根本的な理由は何だと見るか?


  「危機の原因を一言で要約すれば、金融資本の過大な発展のためといえる。 それも内部革新でなく政治的ロビーを通じて発展したということが基本的な問題だ。 しかしこういう根本問題が一つも解決されていない。 過度な負債や複雑な金融商品を全世界にばら撒いて1ヶ所で問題が生ずれば他へすぐ広がるようになっている問題などが解決されていない。 金融機関が事実上詐欺を働いて金を儲けたことに対して制裁が殆どなかった。 ゴールドマンサックス一つを制裁したがその時の罰金が当時ゴールドマンサックスの2週間分の利潤にしかならない額だ。 そこへ持ってきてますます誤った政策ばかり処方している。 短期的にはそんなに重要な問題ではないのに盛んに財政赤字に焦点を合わせ、財政を削減することによって景気を凍らせている。 それでギリシャ、スペインのような国の経済を破綻させている。 金融機関のロビーも問題だ。 銀行規制を少し強化しようとすればロビーをして出来ないようにする。 米国では最初から財務部を掌握している。 オバマ行政府でもラリー・サマーズ、チョン財務長官は金融自由化を推進した人物で、秘書室長を務めたラム・エマニュエルは公式的にウォール街から一番多くの献金を受けた政治家だった。 そのような人々を引き連れて、そもそも金融改革を行なうことができようか。 このようになったのは当然だ。」


  -1980年代以降深刻化した貧富格差現象が今回のグローバル危機を生み出したという主張についてはどう思うか?


  「2つのことが相互作用した。 1980年代に始まった金融自由化が貧富格差を起こし、これによって中・下層の需要が制約を受けて相対的剥奪感を感じさせ、家計負債を増加させる悪循環が発生した。 単に上層でお金をたくさん儲けたためではなく、中・下層にずっと圧迫を加えたので貧富格差が広がったのだ。 米国の場合、中間層は1970年代初期に比べほとんど所得が上がっていない。 そんなことが利潤をさらに多く創出させたのであり、結局は金融街が金をさらに多く奪っていく結果を招いた。株主資本主義の論理により、企業が労働者を絞り取って利潤をさらに多く創り出し、その利潤のさらに多くの部分を配当極大化等を通して金融資本がさらって行ったのだ。”


1980年代に始まった金融自由化が貧富格差を生み、
中・下層が相対的剥奪感
家計負債を増加させる悪循環が発生した


-中産層の没落も同じような理由か?

「単純に言うならば、上にいる人々がたくさん奪っていこうとするから、それにつれて中間が減るわけだ。 例えば、企業が利潤を多く上げるには人員を最大限減らさなければならず、結局工場を外国に移すことになる。 そのような過程で中産層が犠牲になる。 何としてでも短期にお金をたくさん儲けようとすれば、長期的観点から投資して結果的に良い働き口を作るという体制がなくなることになる。 したがって過去に良い職場を持って生活していた人々が減って中産層が没落するわけだ。 株主資本主義はとにかく株主にたくさん分けてやらなければならないから、結局下請け企業を絞り取ったり、中間幹部や年を取った労働者や熟練労働者を減らすことになる。 それが費用節減に一番良いからだ。 中産層の内部を覗き込んでみれば、みんなそんな人たちだ。”


-今回の危機を解決するためには、どんな根本的な対策が必要だと見るか?


  「根本的なことは金融改革だ。 政治的に財政赤字を出すことができないようにした現状況で、政府にやれることといったら量的膨張を通じて金融を緩めることしかない。 そうだとしてもお金を中小企業に貸したり遅れている地域に投資するようにするべきなのに、そういう措置を取らないので、その金は国際商品市場に行って石油価格や食料品価格を引き上げるのに大きな貢献をしている。 今根本的なシステムを直さなければ、それなりに持っている手段を用いてもそのような形で弊害を生むだけだ。 先進国政府がどれほど金融ロビーに首根っこを抑えられているかと言えば、英国の場合、公的資金を投じてロイヤルバンク オブ スコットランド(RBS)のような金融機関を掌握したけれども、株主資本主義の論理さえ強要できずにいる。 自分が最大株主でありながら、最高経営者に対し会社が正常化するまで10万ポンドだけで働くようにと言ったり、低所得層と中小企業に貸し出しをたくさんしろと言うことができないでいる。 これは資本主義でもない。」


  -一部では、ギリシャ・イタリア・スペインなど南ヨーロッパの国々の財政問題が過度な福祉費支出から始まったと主張している。


  「とんでもない話だ。 南ヨーロッパの国々はヨーロッパの基準に照らしてみれば福祉が一番できてない国々だ。 収入に比べて支出が多いからといって、それが福祉のためだと言っては誤りだ。 スペインなどは去る10余年間、基本的に財政黒字を出してきた国家だ。 不動産バブル崩壊による景気低迷のために税収が減少して財政赤字が生じたのであって、福祉支出から生じたのではない。 ギリシャはもともと脱税などが深刻で財政赤字問題がすでに以前からあった。 イタリアも財政赤字が金融危機以前の国民所得に対し2~3%水準であったから、大変なことになるような規模ではなかった。


-それならなぜそのような主張が出てくるのか?


  「ヨーロッパと世界の右派が財政赤字を口実に福祉国家を破壊しようとする陰謀と見られる。今、危機国に分類されている国々は大部分財政赤字がなかったし、財政赤字が生じた理由は景気低迷による税収減少と金融機関の公的資金投入だったからだ。 アイルランドは金融危機以前に国民所得対比年平均3%の財政黒字を出していた国だ。 今は財政赤字が33%だ。 金融ハブにすると言ってあれこれやったあげく失敗して公的資金を投じた結果、そうなったのだ。 問題の本質は金融資本の過多発展による資産バブルと、それが崩壊して起きた景気低迷だ。」


パク・ヒョン記者 hyun21@hani.co.kr


原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/509324.html 訳A.K