人工知能(AI)が産業の新たな標準として台頭する中、企業がこぞって「AIトランスフォーメーション」(AX)の波に乗ろうとしている。費用をかけてAIモデルを導入し、専門組織を立ち上げ、社員の利用を奨励しているが、肝心の職場の風景は従来とほとんど変わらない。マサチューセッツ工科大学(MIT)傘下研究組織のNANDAは、昨年発行した報告書で、企業が生成AIに莫大な資金を投じているにもかかわらず、組織の95%が損益計算書上で測定可能な効果を得られていないと指摘した。日常生活ではAIの活用度が高まっているのに、社内では効果の発揮が遅れているのはなぜだろうか。5日、企業のAXを支援するサービス企業の実務担当者たちに、現場のボトルネックと解決策について話を聞いた。
■AIが読み取れる文脈データがない
専門家たちが共通して挙げた、企業の現場におけるAXの最初の障害は「データ」だ。KTのAX事業部門所属のキム・ドンミンチーム長は、「会社固有のドメイン知識、業務マニュアル、プロジェクト履歴などが、AIが理解できる形で整備されていなければ、(AIの反応は)一般論的な回答にとどまったり、幻覚(ハルシネーション)を引き起こしたりする可能性がある」と説明した。AIは既存の学習データに基づく一般的な知識をもとに、もっともらしい答えを導き出すことはできるが、業務に関連する知識や文脈を知らなければ、どんなに賢いモデルであっても役に立たない答えを出してしまうという意味だ。
問題は、こうしたデータが社内システム内に散在していたり、AIが活用できるよう整理されていない場合が多い点にある。韓国の大手企業でAI実務を率いるAチーム長は、「社内でAIに入力するデータは、PDFやワード文書のような非構造化されたデータが大半だ」とし、「こうしたデータは精製が不可欠だが、多くの企業がこれを十分に収集・精製していない」と述べた。AIが活用できるようデータを収集・精製・変換する過程で、「人的ボトルネック」も発生する。文書の様式や表記を変更してほしいという要請を、現場では「面倒なこと」として受け止めるケースが少なくないと、実務担当者たちは口を揃える。
■「AIが全部やってくれるのでは」漠然とした目標と過度な期待
過度な期待もまた、失望感を募らせる要因となる。データが十分で反復的な業務においては、主にAI導入の効果を実感できるが、AXが難しい業務にも導入を試みると、コストばかりがかかり、成果を実感するのは難しいというのだ。
例えば、2〜3年に1回程度の頻度で発生する故障診断にAIを導入する場合、不十分なデータで高い検証基準を満たそうとするため、あまりにも多くの時間とコストを費やすことになる。マキナラックスのホ・ヨンシン最高事業責任者(CBO)は、「企業はAIに非常に大きな期待を寄せているが、実際に実現が容易ではない領域は確かに存在する」とし、「AI導入の目的と効果が具体的な分野では導入が成功する可能性が高いが、(そうでない領域では)AIの導入の費用対効果に対する社内の合意形成が弱まる」と指摘した。キム・ドンミンチーム長も「毎日あるいは毎月、似たような形で繰り返され、処理基準が明確な業務では効果が大きいが、例外の状況を判断しなければならない業務は難易度が急激に上がる」と語った。
具体性に欠ける目標も、AXを阻む要因となる。「貿易業務の処理迅速化」のような抽象的な目標では、導入過程が難航せざるを得ない。AXサービス系のスタートアップで働くNマネージャーは、「企業では、AIを導入すれば魔法のように何でもできると漠然と考えている場合が多い」とし、「なぜAIを導入するのか、どのように適用するのかについて、まず検討する必要がある」と説明した。実務担当者たちは、業務全体を一気に転換しようとせず、業務を細かく分割した上で、主なボトルネックが発生している場所にAIを優先的に導入するよう助言している。例えば貿易業務の場合、作業に時間がかかる「インボイス(送り状)の確認」作業に活用するといった具合だ。
■単なる技術の導入ではなく、業務の再設計が必要
専門家たちは、AXを成功させるためには、技術の導入にとどまらず、業務プロセスの点検および再設計が不可欠だと指摘する。業務を細かく分解し、データが十分で活用しやすいか、費用対効果は十分かなどを綿密に検討しない限り、AXの成功は難しいという。
ホCBOは「革新とは、働き方を従来とは異なる形に変えることを前提とする」とし、「AIをどこに活用するかなど、AIの観点から業務を再定義しなければならない」と指摘した。キムチーム長は、「AXは、AIというツールを活用して働き方を再定義するプロセスだ」としたうえで、「業務時間の短縮、コスト効率化など、成果測定基準について社内の合意と検証があってこそ、パイロット段階を超えて実際の成果につながる」と語った。Aチーム長は「AXを組織の働き方の全体的な転換として捉え、データ、インフラ、人材、文化という4つの構成要素に対してバランスよくアプローチしなければならない」と話した。