米国と中国が米国の人工知能(AI)用半導体の輸出統制問題をめぐり、正面から衝突した。15日、韓国で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚級会合でのことだ。
互いに対する爆弾関税の引き下げに向けた米中「ジュネーブ合意」直後、今度は未来経済・安保の中核となるAI半導体をめぐる神経戦を繰り広げる様相だ。
中国商務省の李成鋼国際貿易交渉代表(長官級)は、15日に済州道西帰浦市(ソグィポシ)の済州国際コンベンションセンターで開かれたAPEC貿易相会合の非公開セッションで、「AIの発展に重要なAI半導体の輸出に対して、国家安保の概念を過度に拡張して適用し統制する国がある」と述べたという。
公の場で米国を名指ししたわけではないが、米国の半導体輸出統制が多国間主義と国際貿易秩序を損ねる措置だと、真っ向から批判したのだ。
この日の非公開会合には米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表をはじめ、21カ国のAPEC加盟国の貿易相と世界貿易機関(WTO)事務総長、経済協力開発機構(OECD)事務次長などが出席した。李代表は会場で向かい側に座った米国の貿易当局代表に対し、正面から問題を提起したわけだ。
グリア代表はこれを受け、「米国の製造業基盤を拡充するための正当な措置」だと反論したという。
米中両国は12日(現地時間)、スイスのジュネーブで米国の対中関税を30%に、中国の対米関税を10%に引き下げる関税引き下げ措置に合意した。グリア代表と李代表は当時、合意を導いた主役たちだ。ところが、ジュネーブ合意からたった3日で米中が再び国際会議で神経戦を繰り広げたということだ。
米国政府は2022年の前任のジョー・バイデン政権当時から、国家安保を理由に米国製の最先端半導体の対中輸出を規制してきた。今年初めに発足した第2次トランプ政権も、AI半導体を生産するNVIDIAの半導体「H20」の中国輸出を制限したのに続き、米商務省が13日(現地時間)、バイデン政権の輸出統制政策に代わる新たな輸出統制政策を打ち出した。
これは中国のファーウェイ(華為技術)が自主生産したAI半導体「アセンド」の使用を米国の輸出統制違反と規定し、中国が第3国を通じて迂回的に米国の先端AI半導体を確保することを防ぐというのが骨子だ。これを受け、中国商務省も15日、「米国が輸出統制措置を乱用し、中国半導体産業に根拠のない罪名で制限を加えたのは、中国企業の正当な権益を深刻に損ね、グローバル半導体産業・サプライチェーンの安定を脅かしている」と批判した。
米国と中国がAI半導体の輸出統制問題で再び神経戦を繰り広げていることに伴い、米中「関税休戦」が脅かされかねないという懸念も高まっている。米中はジュネーブ合意で、各自引き下げた関税のうち24%の適用を90日間猶予し、後続交渉を続けるとしていた。
グリア代表と李代表は、神経戦が繰り広げられたAPEC加盟国の非公開セッションとは別に、米中二国間会談も行った。ただし、双方とも会談で交わされた具体的な内容は公開していない。