中国の情報通信(IT)企業ファーウェイ(華為技術)が、独自のOSを適用した新しいスマートフォンを公開した。トランプ前政権の集中制裁を受けていたファーウェイが、米国中心のモバイルシステムから抜け出し、中国だけの新しいモバイルのエコシステム構築に乗り出した。
ファーウェイは26日午後、深センで開発者カンファレンスを開き、新しいフラッグシップスマートフォンモデルである「Mate70」シリーズなどを公開した。昨年8月、「Mate60」シリーズを発売してから15カ月ぶり。この日の行事はファーウェイのホームページを通じて生中継され、10万人を超える人々が見守った。Mate70は事前予約人数が300万人を超えるなど大きな反響を得ている。
昨年公開されたMate60シリーズが7ナノ(1ナノ=10億分の1メートル)級半導体「Kirin9000s」を搭載して衝撃を与えたとすれば、この日公開されたMate70は独自OSである「ハーモニー(紅蒙)OSネクスト」が搭載されたことが核心だ。ファーウェイは6月に同OSのベータバージョンを公開し、先月末にハーモニーOSネクストを公開したのに続き、この日はこれを採択した実物のスマートフォンを発表。ハーモニーOSネクストはスマートフォンのみならずスマートウォッチ、スマートパッド、電気自動車などに適用される予定だ。
ハーモニーOSネクストは、ファーウェイが開発した独自OSで、以前のバージョンとは異なりアンドロイドアプリが駆動されず、専用アプリだけが駆動される。アンドロイドオープンソースプロジェクト(AOSP)のコードとの互換性を除去し、ファーウェイが独自開発したカーネルとシステムアプリだけをサポートする完全に独立したシステムとして設計された。
ファーウェイは、トランプ政権の制裁で2019年8月にアンドロイドOSへの接近が阻まれると、その年11月にアンドロイドシステムが含まれたハーモニーOSを発表。その後4回のアップグレードを経て、アンドロイドシステムをすべて取り外したハーモニーOSネクストを発売した。
ファーウェイはドナルド・トランプ氏が大統領に当選してから20日後のこの日、ハーモニーOSネクストを搭載したMate70を発売し、グーグルのアンドロイドやアップルのiOSなど米国製OSからの完全な独立を宣言した。ファーウェイの徐直軍副会長は23日に開かれたカンファレンスで、米国の制裁により「自主OS開発に拍車をかけるほかなかった」として「人々が多く使うほど(ハーモニーOSネクストは)より早く成熟するだろう」と述べた。フィナンシャルタイムズは前日、ファーウェイのMate70とハーモニーOSネクストに対して「米中競争でどのように技術生態系が分かれるのかを示す最新の信号」だとして「ファーウェイを弱めようとした米国の制裁が、むしろこの企業の地位を強固にした」と評した。
ハーモニーOSネクストが成功するためには、何よりも専用アプリの開発が活発に行われなければならない。ファーウェイはすでにWeChatやtaobaoなど1万5千個の中国アプリが実動中だと明らかにした。また、既存のハーモニーOSを搭載した機器は10億台程度になり、これを基盤に巨大なエコシステムを作ることができるという立場だ。徐会長は「ハーモニーOSが消費者の要求に合わせて成熟するためにはアプリが少なくとも10万個は必要だ」として、今後6~12カ月以内にこれを達成すると話した。
市場調査業者(IDC)基準で、第3四半期の中国スマートフォンの市場シェアは、中国企業のVivoが1位(18.6%)、アップルが2位(15.6%)、3位がファーウェイ(15.3%)の順だった。
中国政府も積極的な支援と督励に乗り出すとみられる。ファーウェイは2021年、ハーモニーOSのコードを中国工業情報化部傘下の開放原子財団に寄贈した。オープンソースとして公開されたハーモニーOSを活用し、誰でもアプリ開発などに利用できる。Xiaomi、Vivoなど中国のライバル企業がファーウェイのハーモニーOSを無視したため、これを国に寄贈する方式で普及の迂回路を切り開いたということだ。中国当局は昨年、ファーウェイがMate60を発売した後、公務員と国営企業職員に下されたアップルのiPhoneなど外国製スマートフォン購入禁止令を強化した。