「慢心を捨てろ」「もはや後がない」「新たな危機」
LGエナジーソリューション(LGエナジー)、SKオン、サムスンSDIなど、韓国の二次電池企業の最高経営責任者(CEO)らが、社員に向けて相次いで警告のメッセージを発した。電気自動車(EV)の需要鈍化と中国企業などによる値下げ攻勢が激化し、内部に緊張感を吹き込んでいるかたちだ。彼らは一様に技術革新や原価競争力の確保などを求めた。
彼らは現在の状況は「危機」だと口をそろえて述べた。LGエナジーのキム・ドンミョン社長は4日、CEOからのメッセージで「EVのキャズム(一時的な需要停滞)によってバッテリー産業を見る市場の見解が大きく変わり、バッテリー以外の産業でも『最高』と認められていた企業が適時に競争力を確保できなくなり、大きな困難に直面している」と述べた。SKオンのイ・ソクヒ社長も1日に非常経営を宣言し、「『もはや後がない』という覚悟で最高の成果を出すよう、力を集めよう」と述べた。同日、サムスンSDIのチェ・ユンホ社長は「創立記念式」で、「高速成長を期待したEVとバッテリー市場の一時的な成長の勢いの鈍化などは、われわれが直面する新たな危機」だと明らかにした。
彼らの危機診断は、やや出遅れた感がある。これらの企業の第1四半期の営業利益は大幅に減少したり赤字を記録したりしている。実績回復どころか、さらなる悪化の可能性が高いというのが市場のアナリストの全般的な見通しだ。中国の二次電池企業の攻勢はよりいっそう強まっている。寧徳時代新能源科技(CATL)と比亜迪(BYD)は、安価なLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを武器に、全世界のシェアで1~2位になった。
韓国信用評価は「二次電池産業は、需要不振と大規模な供給計画によって中短期の需給条件が低下し、実質的な収益性が弱まるとみられる」とし、「韓国の業界内で投資のスピードを調節することに対する共感が形成されていることが把握されている」と、5月初旬にすでに分析を発表している。
3社の経営陣の危機突破戦略は大同小異だ。いずれも技術革新と価格競争力の確保を強調した。LGエナジーのキム・ドンミョン社長は「慢心を捨てて挑戦とイノベーションの遺伝子を復活させよう」とし、「われわれの強みだった素材・技術・工程のイノベーションが遅れ、構造的な原価競争力も弱まり、売上の成長にもかかわらず収益性が低下しているというのが冷酷な現実」だと述べた。サムスンSDIのチェ・ユンホ社長は「価格競争力に対する顧客の要求が強まっている。すべての役員・社員がワールドベストの原価競争力を達成してほしい」と強調した。SKオンのイ・ソクヒ社長も、経費を削減しなければならない非常経営に入ったが、研究開発(R&D)だけは最大限支援すると述べた。
ただし微妙な違いもみられる。現地生産に補助金を支援するインフレ抑制法(IRA)の発効を受け、米国に大規模工場を作るなどして攻撃的に規模を拡大したLGエナジーとSKオンは投資の速度調節に出た反面、これまで比較的投資に消極的だったサムスンSDIは、危機を跳躍の機会にするという意向を表明した。LGエナジーのキム・ドンミョン社長は「質的成長」「攻撃的受注・事業拡張による非効率の発生」「投資速度の調節」のすべてに言及した。サムスンSDIのチェ・ユンホ社長は「2030年に市場をリードできる超格差の技術競争力を確実に確保しよう」と注文した。