円安が止まらない。3日、円ドル為替レートが38年ぶりに最高水準の円安(取引所基準、1ドル162.00円)をつけたのに続き、4日も161円台の中後半に留まっている。外国為替市場の専門家らは、さらなる円安の可能性が高いとみている。日本経済の基礎体力が落ち、通貨・外国為替当局が行動に踏み切ることも容易ではないという理由からだ。円が日ごとに歴史を書き換えていく可能性があるということだ。
4日の日本の東京外国為替市場では、円ドル為替レート(聯合INFOMAX基準)は、午後4時時点で前日の終値(161.68円)に比べ0.30円円高の161.38円だ。前日に記録した取引中の最安値(162.00円)に比べると少し円高に戻したが、先月28日から5取引日連続で161円台を記録している。「1ドル160円」は、これまで市場参加者の間では心理的なボーダーラインとみなされていた。
円安は内外の要因が一度に重なったためだ。まず、比較対象の通貨であるドルの構造的な高さが挙げられる。ドナルド・トランプ前大統領の再選の予測が広まったため、米国債の金利が最近急騰し、世界の資金市場でドル買いの傾向が強まった。これに日本経済自身の脆弱性が円安をさらに助長しているかたちだ。
日本経済は、第1四半期にふたたび逆成長(前期比-0.5%、実質国内総生産基準)を示したのに加え、消費者物価の上昇率も2%台後半に留まっている。円安を防ぐために日本の通貨当局が政策金利の引き上げに踏み切ることも難しい状況にあるという意味だ。日本の政策金利は、3月にマイナス金利から脱したが、今でも事実上のゼロ金利水準である0.1%だ。国際的な投資情報会社「インベスティング・ドットコム」は、「マクロ経済指標から、円の急落傾向の早期反転を期待できる証拠を探しだすことは困難」だと述べた。
より根本的な要因は、日本経済の長期停滞によって、日本の通貨当局が円安を阻止するための金融引き締めを進めるのが難しいことにある。市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利引き下げを断行するまでは、円の下落傾向はさらに強まるという予想が優勢だ。短期的な市場介入の可能性も低いという分析も出ている。
「国際金融センター」(KCIF)は最近の報告書で、「最近の円の動きは、4~5月に比べると変動性は小さく、一定の方向と傾向を示している」とし、「無秩序な状況以外では介入を自制すると主要7カ国(G7)と約束した日本の外国為替当局の立場としては、介入する名目は少ない」と述べた。
市場介入できる余力があまりないという評価もある。米国の投資銀行であるシティバンクは、現時点で日本の外国為替当局が為替市場に介入できる余力を2000億~3000億ドルと推定している。日本の外貨保有額は、4~5月の円ドルレートの急激な円安の際に通貨介入を断行したため、5月末時点では2カ月前に比べ600億ドル減少した1兆2300億ドルだ。シティバンクは、外貨保有額が1兆ドルを下回る場合は「危険」だとみなしているということだ。市場介入に使うドルを確保するために保有している米国債を大量に売却する場合、米国債の金利が跳ね上がり、米日間で摩擦が起きる可能性があるという分析もある。
このような理由から、日本の外国為替当局は、通貨介入よりも口先介入に乗りだしている。最近、鈴木俊一財務相は「急激な、一方的な動きは望ましくない」として、過剰な為替レートの動きには「対応をとる」と明らかにした。また、高官級の外国為替・国際金融の当局者の交替もあった。円安を座視しないというメッセージを市場に投じたのだ。しかし市場では特に効果は見られない。インベスティング・ドットコムは「日本の通貨当局者の市場介入の可能性を暗示する発言でさえ円安に影響を与えられず、歴史的にこのような介入の試みは円に一時的な安堵感を与えただけで、効果はほとんどなかった」と評した。KCIFも「口先介入を再開しているが、現在の為替レートの動きが過度なのかどうかについては、(日本の外国為替当局は)論評を拒否している」と指摘した。
他の要因も円安を助長している。今年に入ってから、日本の個人投資家の米国株購入がブームとなっている。特に今年の円の価値は、伝統的な主要要因(米日国債10年物金利の差)以外に、史上最高値をつける「米国株」の流れにさらに敏感に反応している。実際、米国の証券市場の好況によって、日本の家計の海外金融資産の保有残高は、2023年12月末の81兆4000億円から3月末には90兆8000億円と、わずか3カ月で10兆円近く急増した。米国の株価(S&P500)と円ドル間の相関係数(6カ月移動平均)も、1月中旬の-0.67(相互に逆の関係)から最近は+0.84(正の関係)へと急変した。