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尹政権2年、国民生活叫んで金持ち減税…物価高と高金利にあえぐ庶民経済

登録:2024-05-07 09:22 修正:2024-05-07 10:10
[尹錫悦政権2年]経済
米国と韓国いずれもインフレがなかなか収まらず、早期の金利引き下げへの期待が薄れるにつれて市場金利は再び上がり、債務者を限界へと追い込み続けている。このような高金利は今年末まで続くと懸念される。写真は6日にソウルのある都市銀行に貼り出されている融資情報/聯合ニュース

 国政基調がドラマチックに変化した例は、李明博(イ・ミョンバク)政権3年目の2010年があげられる。保守的イデオロギーと前政権との差別化を名目として政権発足(2008年)時から掲げていた「企業フレンドリー」基調は、輸出大企業中心の成長にともなう両極化の拡大を前にし、転換点を迎えた。当時、政府は「公正社会」と「同伴成長」を掲げ、財閥大企業と輸出企業に偏重した基調を転換した。現政権の2年間は当時と似た景気の流れが見られるが、「基調転換」の糸口はつかめていない。

■物価を抑えられず実質賃金は減少

 韓国銀行が先日発表した第1四半期の経済成長率(1.3%、対前期比)には、「予想外の成長」という修飾語がついている。市場の予想の2倍の成績に、市場はもちろん政府も驚いた。各期0%台の低成長を続けてきた韓国経済が景気回復期に入ったのではないかという解釈を生んだ。政府は「景気回復の青信号」と強調した。だが、こうした解釈は二日もたたないうちに薄れていった。3月の全産業の生産が2.1%減少(季節調整後)し、4カ月連続のプラスが終わったことが明らかになったからだ。

 韓国経済は輸出大企業中心の不安な成長回復の流れの中にあるが、その裏には物価高と高金利に苦しむ庶民経済がある。純資産の少ない庶民や中産階級は物価高のせいで実質賃金が減っているうえ、借金の利子返済負担の増加にあえいでいる。雇用労働部の資料(事業体労働力調査)によると、賃金総額を基準とする全産業の実質賃金は、現政権発足(2022年5月)から統計が集計された今年1月までの21カ月中、17カ月で減少(対前年同月比)している。今年1月の実質賃金減少率に至っては11.1%に達する。企業の利益の減少による成果給の減少、賃金上昇率の下落が大きく影響しているが、賃金の増加が物価上昇に追いついていないため生活が苦しくなっていると考えられる。実際のところ、消費者物価の上昇率は2022年6月(6.3%、対前年同月比)にピークを記録してからは徐々に鈍化してはいるが、その速度は非常に遅い。4月の物価上昇率は韓国銀行の目標値(2%)を依然として大きく上回る2.9%だった。生鮮食品を含めた生活物価の上昇率に至っては3%台半ばだ。

■理念にとらわれた健全財政

 物価高と高金利というマクロ環境に直面している現政権の政策基調は、「健全財政」という狭い領域にとどまっている。国家債務や財政赤字の増加を念頭に置いた政策の方向性や、外部環境の変化と遊離して「小さな政府」という保守的イデオロギーばかりにとらわれた政策基調の一面を示すものだ。「民生経済回復」は強調するものの、健全財政基調という枠組みから抜け出せていない政府の市場介入の幅は、当初から限定されていた。実際に、1年前と比べた昨年の財政支出の減少率(執行額)は10.5%にのぼる。財政の最も重要な役割である「所得再分配機能」が事実上崩壊しているわけだ。弘益大学のキム・ユチャン教授(経営学)は、「政府は事あるごとに民生(国民の暮らし)を叫んでいるが、結果的には減税によって大企業、高所得者、高額資産家の支援に政府の政策が偏っている」とし、「李明博政権のトリクルダウン効果神話にそのまま従っているのが、尹錫悦政権の経済政策の最大の特徴」だと述べた。

 かといって、現政権が「保守経済学」を忠実に実行しているわけでもない。むしろ準備のできていない、金のかからない市場介入は攻撃的に繰り返されている。銀行に圧力をかけて利子返済額(約2兆1000億ウォン)を軽減したり、市場で形成された価格に影響を与える空売りの禁止措置を取ったりしたのが代表的な例だ。政府は高金利に脆弱な階層を支援するために財政を投入すべきであるにもかかわらず、その役割を民間企業に押し付けたり、市場の歪曲を招きうる措置を力で押し通したりしたということだ。明知大学のウ・ソクチン教授(経済学)は、「この2年間は健全財政と自由市場経済という空虚なイデオロギーに埋没してきたため、虚しさばかりを感じさせる」と述べた。先月の総選挙の惨敗後も、政府与党の政策基調の転換は告げられていない。

チェ・ハヤン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1139446.html韓国語原文入力:2024-05-07 06:00
訳D.K

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