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鉄筋も米国製を使うべきか…韓国の半導体メーカー、米国の補助金支給条件に「困惑」

登録:2023-03-02 06:30 修正:2023-03-02 08:14
専門家「EVに続き半導体まで不利益被る恐れも」 
中国への投資制限など「ガードレール」は数週間以内に発表
テキサスのテイラーにあるサムスン電子の半導体工場(ファブ)=サムスン電子提供//ハンギョレ新聞社

 米国の商務省が公開した半導体生産施設の投資補助金の支給範囲と条件を巡り、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国企業らが困難に直面する恐れがあるという懸念が高まっている。すでに米国のインフレ抑制法(IRA)により、米国に電気自動車(EV)生産施設のない現代自動車グループがしばらく補助金を受けられなくなった状況で、半導体メーカーまでもが超過利益の還収など様々な条件をはじめ、中国生産施設への投資の可否など、補助金をもらうための複雑な計算に悩まされることになった。

 米商務省が28日(現地時間)公開した半導体投資補助金の支給条件などによると、支給対象に半導体研究・開発から設計・生産・パッケージングに至るまで半導体のすべての過程が含まれた。技術レベルも、次世代半導体はもちろん普及型の半導体も対象になっている。米国政府が事実上、半導体サプライチェーン全体を自国内に誘致しようとする思惑をあらわにしたわけだ。

 補助金を1億5千万ドル以上受け取った企業が、当初提出した期待収益を大きく上回る利益を上げた場合、支給した補助金を75%まで還収する条件もある。工場を建設する時は米国産鉄鋼だけを使うことに加え、自社株の買い入れおよび配当における制限、補助金使用内容の確認、中国と協力した場合の補助金返還、人材訓練および保育サービスの提供なども、補助金支給の考慮事項だ。

 これを受け、韓国が被害を受ける可能性があるという懸念の声もあがっている。大邱大学のキム・ヤンヒ教授(経済金融学科)は、「今回の補助金条件を見る限り、米国内に(半導体関連事業を)全て持ってくることを目指しているようだ」とし、「中国での生産の割合が高い韓国企業は、最悪の場合、中国の施設を失う一方、米国ではまともに投資効果を得られない困難に直面する恐れがある」と語った。さらに「国際分業によって成り立つ半導体生産体制が、米国を中心としたものに転換された場合、費用低減効果が消えてしまう。膨らんだ費用をちゃんとカバーできるかも疑問だ」と付け加えた。補助金を受ける半導体企業に適用される10年間の中国投資制限に関する具体的な内容(ガードレール)は、この日公開されなかった。数週間以内に発表されるガードレールの内容によって、韓国企業の危機感はさらに高まりかねない。

 これに先立ち韓国企業は、米政府のインフレ抑制法による自国のEVメーカーの優遇およびEV生産施設の自国誘致の試みにより不利益を受けた。現代自動車は米国現地にEV生産施設がなく、当分の間はインフレ抑制法による税制優遇を受けられない。国内のバッテリーメーカーも困惑を吐露している。米完成車メーカーのフォードが、中国バッテリーメーカーのCATLとバッテリー工場を設立すると明らかにしたからだ。フォードが工場を100%所有し、CATLは技術だけを提供する方式で法の網を潜り抜けたことで、中国製バッテリーが除外されるという期待は消えることになった。

 韓国の半導体メーカーは、より一層複雑になった状況について「過度な条件」だとしながらも、それ以上の言及を避けた。サムスン電子の場合、昨年テキサスに建設することにした生産施設への投資に対する補助金を同日から60日以内に申請しなければならず、時間がない。研究開発分野に投資する計画のSKハイニックスは6月から申請できる。産業通商資源部の関係者は「企業の選択にかかっているが、超過利益の還収など米国投資に対するマイナス要因が生じた」とし、「極端な場合、補助金を受け取らない場合を含め、様々な可能性を考えているようだ」と述べた。

 米国の計画がまともに実現するのは難しいという意見もある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は自社株の買い入れ制限などはすでに公開されたものだが、超過利益の還収など新たに加わった条件のもと、企業が投資に乗り出すかに対する懸念もあると報じた。これに先立ち、台湾のTSMCの創立者のモリス・チャン前会長は昨年4月、「米国が自国内の半導体製造を増やそうとしているが、深刻な人材不足と高い人件費で競争力がない」と語った。

 まだガードレールが発表されていないため、韓国政府がもっと積極的に交渉力を発揮すべきという意見もある。キム・ヤンヒ教授は「EVと半導体が共に被害を受ける可能性があるという点、韓国企業のない半導体生産体制は不可能だという点を強調する必要がある」とし、「米国が主張した通り、いわゆる『自由陣営』内で自由貿易を保障できるよう説得しなければならない」と述べた。

 産業部は同日、参考資料を出し「韓国企業の経営に過度な負担を与えかねない事項について、米商務省など関係当局に韓国企業の立場を積極的に伝えてきた」とし、「ガードレールの細部規定の準備過程で十分に反映されるよう、米関係当局と引き続き協議していく予定」だと述べた。

イ・ジョンフン、アン・テホ記者、キム・ヨンベ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1081752.html韓国語原文入力:2023-03-0200:32
訳H.J

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