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ウォンとドルの通貨スワップ、米国にとっても利益

登録:2022-10-06 05:17 修正:2022-10-06 08:16
過去の「通貨スワップ」の目的を振り返ってみると 

2008年のグローバル金融危機 
欧州の銀行がドルを手に入れるためにニューヨーク市場に殺到 
米国の連邦基金の金利急騰の原因に 

2020年のコロナ禍で 
短期金融市場の冷え込みにより「ドル不足」に 
「米国の家計・企業の信用供給への悪影響防ごう」
米ドル/ロイター・聯合ニュース

 「海外の中央銀行との通貨スワップは政治的には人気がないだろうが、我が国(米国)の経済を守る上では必須となりうる」(ベン・バーナンキ元米連邦準備制度理事会議長)

 ウォン安ドル高が続き、通貨スワップをめぐり、あちこちで論争が繰り広げられている。韓米通貨スワップ協定の締結の可能性と、その主導権を握っている米国の利害関係についても見解が分かれている。2008年のグローバル金融危機と2020年の新型コロナパンデミックの事例を通じて、通貨スワップのカギを握っている米国連邦準備制度理事会(FRB)の思惑を測ってみる。

■「ドル不足」に欧州の銀行が詰め掛けると…「米国を守らなければ」

 国家間の通貨スワップは通常、中央銀行同士が一定期間に自国通貨を互いに貸す契約のことをいう。韓国銀行とFRBが通貨スワップ協定を結んだ場合、韓銀がウォンをFRBに貸し、代わりにドルを受け取るという形だ。2008年のグローバル金融危機当時に結んだ韓米通貨スワップ協定を機に、一般にも広く知られる概念になった。通常は国内でドルが底をついた危機状況で「火消し役」を果たすと知られている。

 米国のFRBが他国で火消し役を買って出る理由は何か。グローバル金融危機当時、米国では困難な状況が繰り広げられていた。グローバル主要銀行の中では最初にフランスのBNPパリバが2007年8月にサブプライムローン問題と関連したファンドの買い戻しを中断したことが火種になった。これを契機にサブプライムローン問題に対する危機意識が高まり、いわゆる信用収縮現象が現れた。取引相手の信用に対する不信感が広がり、市中銀行同士が互いにドル資金を貸す市場も冷え込み始めた。

 当時の主要指標をみれば、危機状況が如実に表れる。ドル資金市場の信用収縮の度合いが現れるLibor-OISスプレッド(3カ月)はずっと0ポイントに近い水準を維持していたが、2007年8月には1ポイント前後に急騰した。それだけ信用収縮が激しく、ドルを手に入れることが難しくなったという意味だ。

 金融取引のかなりの部分がユーロではなくドルで行われていた欧州でも、危機警報が鳴り響いた。

 自国市場でのドル確保が難しくなった欧州の都市銀行が、大西洋を越えてニューヨーク市場に殺到するのは時間の問題だった。特に、欧州での取引が終わる前のニューヨークの朝の時間帯に、欧州銀行が押し寄せてきた。その影響で同月の連邦基金金利も、FRBが目標としていた範囲での5.25%を超えた水準に跳ね上がった。連邦基金金利は、銀行が他の銀行に支給準備金を1日間貸す場合に課される超短期金利だ。各種の市場金利や様々な経済変数に影響を与えるという点で、米国経済全般に及ぼす波及効果が大きい。

 FRBが火消しに回らざるを得なかったのもそのためだ。FRBは直ちにドルの供給拡大に乗り出したが、大きな効果はなかった。当時、ニューヨークの連邦準備銀行が240億ドル規模の国債を買いつけ、市場にドルを供給すると共に、その後も流動性の供給に励んだが、信用収縮は大きく改善されなかった。うまい方法が必要な時点だった。

■「危機の主犯とされかねない」、スワップをためらった欧州

 FRBが繰り出した代案のうち一つは、欧州中央銀行(ECB)と通貨スワップ協定を締結することだった。ECBからユーロを受け取り、これを担保にしてドルを貸すというアイデアだった。そうすればECBが外貨準備高を使わなくても、より多くのドルを市場に供給できるため、欧州の各都市銀行がドルを求めて米国に集中する現象も消えるだろうという計算だった。この場合、該当銀行がお金を返せなくなっても、そのリスクをFRBではなくECBが負うというメリットもあった。当時FRB議長だったバーナンキ氏は自叙伝『危機と決断』で「欧州の金融市場の乱気流から米国市場を保護隔離することが目的だった」と説明した。

 通貨スワップに消極的だったのはECBの方だった。欧州市場の危機状況が過度に浮き彫りになり、FRBが欧州の火消し役を果たすという認識が広がることを恐れたのだ。実際、最初は欧州側でスワップ協定を渋ったというのがバーナンキ氏の説明だ。結局、FRBはECBと結んだ通貨スワップ協定を単独で発表せず、他の緊急流動性供給措置と共に発表する形で妥協した。市場が欧州内の金融不安の深刻性にあまり注目しないよう配慮したわけだ。

 米国の通貨スワップは急速に拡大した。FRBは2007年12月、欧州中央銀行、スイス国立銀行とそれぞれ200億ドル、40億ドル規模の通貨スワップ協定を結んだ。計240億ドル規模だったFRBの通貨スワップは、2008年のリーマン・ブラザーズ事態以降、6200億ドルまで増えた。FRBと通貨スワップ協定を結んだ中央銀行も計14行に増えた。2008年10月には欧州とスイス、英国、日本を対象に限度を無制限に設定した。当時、ECBがこれを通じて引き出した金額だけで3138億ドルに達する。

 出発点が米国の必要によるものだっただけに、通貨スワップ協定を結ぶ対象を追加で選ぶ上でも同じ計算が働いた。バーナンキ氏は「メキシコやブラジル、韓国、シンガポールなど新興国は慎重に選んだ」とし、「これらの国が米国とグローバル金融・経済安定にどれほど重要なのかを基準にしており、(重要でない)他の国の通貨スワップ要請は断った」と明らかにした。

■コロナ禍でも…「米国の家計・企業に役立つ」

 2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大によって金融市場が不安に陥った時も、通貨スワップは火消し役として登場した。当時も短期金融市場が冷え込み、これに依存していた海外の都市銀行がドル資金を手に入れることが難しくなった状況だった。これによる金融不安が米国を含む全世界に広がり、通貨スワップの必要性が再び台頭した。

 当時、FRBはすでに欧州、スイス、英国、日本、カナダの中央銀行5行と限度無制限の常設通貨スワップネットワークを作り上げていた。状況の悪化を見かねたFRBはこれに加え、韓国など9カ国の中央銀行と追加で通貨スワップ協定を結んだ。2020年3月に600億ドル限度の通貨スワップ協定を結んだ韓国銀行も、最大188億ドルを引き出して使った。

 当時もFRBの思惑はグローバル金融危機当時とあまり変わらなかった。ドル資金市場環境の悪化を放置すれば、結局米国にも危機が転移しかねないという認識だった。2020年4月に開かれたFRBの連邦公開市場委員会の議事録によると、委員らは「(韓国など9カ国と結んだ通貨スワップ協定により)グローバルドル資金市場の困難が緩和されるだろう」とし、「これにより(今回の危機が)米国の家計と企業に対する信用供給に及ぼす影響も減るだろう」と判断した。

 このような認識は、FRBが世論悪化の可能性を甘んじて受け入れてまで通貨スワップに積極的に乗り出した理由を説明している。グローバル金融危機当時、FRBでは通貨スワップが海外の都市銀行に対する救済金融と認識される可能性があるとの懸念の声もあったという。政界からこれに対する圧迫があるだろうという懸念もあった。これについて、バーナンキ氏は自叙伝に「幸い私が会ったほとんどの上院議員は、グローバル金融安定を図ることが米国の利害関係と合致するという点を理解していた」と書いた。

イ・ジェヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/1061067.html韓国語原文入:2022-10-03 15:04
訳H.J

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