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"トヨタ事態 禍根は世界一強迫観念・非正規職量産・面倒見る言論…"

原文入力:2010-02-19午後08:54:19(2881字)
[インタビュー]トヨタ追跡ジャーナリスト 横田一(よこた はじめ)

キム・トヒョン記者

←フリージャーナリスト 横田一(52)

"世界1位を狙った無理な生産拡大路線と経費節減,隠蔽体質がリコール事態を招いた。" 去る5年間‘品質と安全の神話’で包装された世界最大自動車大企業の隠された面を暴き<トヨタの正体>(1巻2006年,2巻2008年)を出したフリージャーナリスト横田一(52)は去る17日<ハンギョレ>と行ったインタビューで世界で1000万台を越えるトヨタ リコール事態の本質をこのように分析した。彼はトヨタ事態の本質には、世界的企業の体質問題だけでなく、日本主流言論の面倒見報道,非正規職拡大と一方的解雇,自民党55年体制下で続いた政経癒着など、日本が抱いている構造的問題が隠されていると指摘した。

12兆円を越える留保金がありながらも…大量解雇
非正規期間工 いつ切られるかも知れず不安
熟練工が新参工に技術を教えようとしない

-トヨタ リコール問題が拡大した背景は何か?

"何日か前、同じ質問をトヨタの第2労組である‘全トヨタ労組’の若槻忠夫委員長にしたことがある。彼は2006年10月熊本県で5名が負傷した交通事故を契機に会社側が大量リコールを発表した時、当時の渡辺捷昭社長に改善要求を入れた要請書を送ったことがある。彼はトヨタが2000年から3年ごとに総経費の30%節減計画をあまるに無理に推進した結果、価格を優先し品質をないがしろにした側面があると指摘した。また非正規職が非常に多く(2005年生産現場人員の39.4%)余裕を持って開発したり十分に品質をチェックする態勢がとれなかったと問題を提起した。

しかし、会社側は少数労組という理由でこういう内部建議を受け入れなかった。当時労組はリコール問題に積極的に対処しなければ企業の存亡がかかった問題になると指摘した。トヨタの社内民主主義がなく、批判的な意見が受容されずにいるのが現実だ。"

-非正規職の一方的雇用問題がトヨタ事態のまた別の背景という指摘がある。

"非正規職は正規職に比べ平均給料が半分に過ぎない。40代のトヨタ正社員は概して年俸1000万円程度だが、非正規期間工はいつ切られるかも知れず不安な生活を続けている。実際にトヨタは2008年まで毎年2兆円程度の莫大な営業利益を出し、好況期に12兆円を越える莫大な社内留保金を保有していながらも、2008年末のリーマンブラザーズ衝撃余波の時、非正規職社員らを大量に解雇した。2~3年前には、ある期間工が酷使されたあげくプリウス製造現場でブレーキ主要部品をわざと左右逆に組み立てた事実が出荷前に発見され、あたふたと対処したという事実を新しく取材し<週刊金曜日>最近号(19日発行)に掲載した。
かつては熟練工正規職が後輩に技術を教える教育システムがよく機能していた。終身雇用制が日本企業の強力な点だった。物作りという日本企業の良い企業文化が度を越した経費節減政策で失われてしまった。また別の問題点は2007年から導入されたトヨタの成果主義にもある。生産性が高いラインに給料を引き上げてやるシステムが作動した結果、熟練工が非正規職新参工に技術を教えようとせず、自身が成果を出すために自己中心的に走るほかはない。"

-さらに大きな問題はリコール対応が大きく遅れたという点ではないか?

"2006年大量リコール事態の時も欠陥を認識して8年間リコールをしなかった。熊本県庁が6人の交通事故捜査結果を明らかにするやトヨタ経営陣はやむをえず欠陥を認めた。あたかも歴史が繰り返すということのようだ。リコール問題がリコール隠蔽事件になってしまったということだ。トヨタはまず集まらなければ真実を発表しないという会社ではないのかという不信感を招いたのだ。しかしトヨタの隠蔽体質はまだ相変わらずだ。

最近の取材で重大な事故につながりうる欠陥をトヨタ側が隠していたという新事実を初めて確認した。昨年5~11月堤工場で製造したハイブリッド新型プリウス1万6000台中、5月に生産された2台の欠陥を確認した。トヨタ側に確認したところ、去る16日‘ステアリング ギアボックスのボルトをきちんと締める作業の確認が不充分だった’と欠陥を認める答弁を聞いた。残りは問題がないということだ。しかし、同じラインで生産したプリウス中でこういう重大な欠陥が2台しかないということはとても疑わしい。”

年間に1千億円以上の広告費を使うため
言論報道はいつでも抑制することができるという傲慢
数万部売れた批判書籍 新聞では一ケ所も取り上げず

-日本言論の責任もあるとみるか?

“新聞社経営陣の中でトヨタと良い関係を維持し広告をたくさん取ろうとする人が少なくない。トヨタは年間に1000億円以上を広告費として使っているため、言論の批判報道はいつでも抑制することができるという傲慢さがあるかもしれない。
<主幹金曜日>はタブーに挑戦する雑誌なので、そこの取材陣とトヨタ関係者50人余りを取材し雑誌に連載し<トヨタの正体>という本にまとめ出版した。1巻だけで8万部が売れたが、新聞はただの一ケ所も取り上げてくれなかった。またプリウスは日本自動車産業の核心技術だが、それを批判するのは日本国益を害するのではないかという論調があるのも事実だ。”

-トヨタ事態の政治的意味は?

“政経癒着問題がある。個人的にはトヨタが2005年‘愛知博覧会’の時、税金を利用して自身の工場周辺道路などのインフラを構築するようにしたのを見てトヨタ問題に初めて関心を持つことになった。
トヨタは自民党に年間6000万円ほどの政治献金を出し、その代価としてプリウス補助金など各種利益を勝ち取った。自民党55年政経癒着体制をトヨタは徹底的に利用した。民主党政権になったと言っても、こういう政経癒着体質が変わるものではない。トヨタ労組が加入している日本最大労組‘連合’(日本労働組合総連合会)が民主党の最大支援組織であるためだ。2005年総選挙の時、奥田碩(おくだ ひろし)社長(1995~2006年 在任)は小泉純一郎総理と手を握り自民党を全幅支援した。奥田前社長はトヨタの物づくり精神を逸脱し、生産拡大市場至上主義に邁進させた張本人だ。彼は経団連会長(1999~2006年 在任)時代に、派遣労働法改正の先頭に立ち日本社会の格差を拡大させた人物でもある。豊田章男 現社長はトヨタ創業者の‘プリンス’であるから、トヨタ家系が標ぼうした物づくり精神に戻ることを願う。”

東京/文・写真 キム・トヒョン特派員 aip209@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/car/405696.html 訳J.S