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欧州発の景気低迷?KOSPI2000崩壊?…今冬の寒波次第

登録:2022-07-26 06:53 修正:2022-07-28 07:14
IMF「エネルギー危機報告書」によると

ロシア産ガス、代替するならその量は? 
今年800億立米を確保できると見通したが 
昨年のロシア産輸入量の52%にすぎず 
他国とつながるパイプラインがないドイツ 
年内に輸送インフラの設置・稼動が必要 
 
極限の寒波、需要上昇につながるなら 
冬の前にガスの最大備蓄が必要だが 
国ごとに貯蔵施設の規模は異なる 
厳しい寒さの場合は需要が300億立米増加 
 
「韓国のGDP、最も大きな影響」 
欧州、ガスの輸入増やし価格上昇すれば 
日本やパキスタンなどの打撃は避けられず 
ガス支出の割合によって被害も異なる

ウクライナがロシアのガス輸送用パイプライン1カ所の運営を中止したことで、欧州に対するロシアのガス供給が25%減少した。ガス供給が正常に行われている「スジャ・パイプライン」= スジャ/AP・聯合ニュース

 「KOSPI(韓国総合株価指数)2000ポイント台が崩れるかどうかは、今冬の寒波にかかっている」

 最近、証券街では冗談半分でこう言われている。ウクライナ戦争後、天然ガスの供給に困難をきたしている欧州を念頭に置いたものだ。欧州で冬の寒波が激しいほど暖房の需要はさらに増え、すでに大幅に値上がりしたガス価格は天井知らずに高騰する可能性が高い。最悪の場合、ガス供給がまともに行われず、工場が稼働停止になる可能性もある。欧州発の景気低迷への懸念が続く理由だ。

 問題はいろいろな不確実性が散在していることにある。冬の気温だけでなく、ロシアの動きや欧州のエネルギー多角化など、変数だらけだ。もしロシアがパイプラインを完全に閉鎖した場合、欧州はどれだけ持ちこたえられるだろうか。その過程で物価はどれだけ上がり、景気はどれだけ悪化するだろうか。国際通貨基金(IMF)が今月出した3本の研究報告書を通じて、場合の数を考えてみた。

■ 欧州、ロシア産ガスをどれくらい代替できるか

 欧州はロシア産天然ガスにかなり依存している。24日に確認したIMFの報告書「欧州の天然ガスー供給支障による潜在的影響」によると、欧州連合(EU)が昨年消費したガスの約40%である1550億立米がロシア産だ。ロシアのガス供給が減ったことに対する懸念が高いのもこのためだ。

 最近、パイプラインを通じて欧州に輸入されるロシア産天然ガスの量は、1年前に比べて60%も減少した。断続的な供給中断は考慮されていない計算だ。今月、ロシア国営企業「ガスプロム」は、維持と補修を理由に10日間ノルドストリーム1を通じたガス供給を止めた。今後、また供給を中断したり、輸出量をさらに減らす可能性も排除できない。

 ロシア産ガスをどれだけ代替できるかがカギとなるわけだ。IMFの報告書によると、今年欧州は800億立米を他からの供給に代替できるとの見通しだ。昨年のロシア産輸入量の52%にすぎない量だ。今年3月、欧州連合執行委員会(EC)もほぼ同じ水準の57%を代替することを提案した。

 最大の問題はガス輸送のインフラにある。天然ガスを輸送する方式は大きく二つに分けられる。気体のままパイプラインを通じて送る方式と、液化天然ガス(LNG)を船舶で輸送した後、現地で再び気化する方式だ。前者の方式は生産基地と直接つながったパイプラインを、後者は停泊施設と気化設備などがあるLNGターミナルを必要とする。適切なインフラがなければ、ガスを輸入・輸出したくてもできないということだ。

 欧州経済を率いるドイツは、このようなインフラが不足している国の一つだ。IMFの報告書「ロシア産ガスの供給中断がドイツ経済に及ぼす影響」では、「ドイツはロシア以外に他のガス田に繋がるパイプラインがないだけでなく、LNG気化施設もない」として、「ロシア産ガスを代替するのは難しい状況」だと指摘されている。

 カギとなるのは、今後どれだけ早くインフラを確保するかだ。ドイツは海上浮遊式のLNGターミナルの建設に着手した。ノルウェーのガス田からポーランドにつながるパイプラインも建設されている。IMFの報告書は、このようなインフラが年内に一部稼動することを前提に展望値を算出したものだ。それができない場合、代替可能な供給量はさらに少なくなる。これらの計画が発表される前の3月、国際エネルギー機関(IEA)は今年ロシア産ガスの35%のみ代替できると推算した。

 原子力や再生エネルギーの発電量をどれだけ引き上げるかについても見通しが分かれる。IEAは風力と太陽光発電施設をさらに設置すれば、ロシア産ガス60億立米を代替できると見通した。一方、IMFの研究陣は製造ボトルネック現象のため、それが不可能であると予想した。

■ 冬の寒さ次第…需要の不確実性高い

 ならば、需要側で調整される余地はないだろうか。最近までのガス価格上昇による家計需要量の減少分は、今年は40億立米にとどまると、IMFの研究陣は見通した。ガス需要の価格弾力性が低く、大幅には減らないだろうとみなしたのだ。産業部門では130億立米の減少が予想される。研究陣は、先に計算した供給代替量にこのような需要量減少分まで考慮すれば、ロシア産ガスの63%程度は今年解決できると分析した。この場合、国ごとのガス備蓄量によっては、深刻な危機に直面せず冬を越せる余地もある。

 問題は非常に強い寒波が襲来した場合だ。研究陣はこの場合、欧州でさらに削減しなければならない消費量は最大300億立米に達すると推算した。これはガス価格の上昇に伴う需要量の減少と、配給制で政府が人為的に調整する方式で実現される可能性がある。ガス需要の価格弾力性が低いだけに、前者の方式を選んだ場合、価格は大幅に跳ね上がるものとみられる。

 ドイツを集中分析した研究陣も、寒さが主な影響を及ぼす要因になると予想した。彼らは「(ロシア産ガスの輸入量が最近の傾向を維持すれば)ガス不足事態は辛うじて避けられるだろう」としながらも、冬の寒さなどにより不確実性が高いと指摘した。先の計算は、今後年間ガス消費量が過去5年間の平均値と一致する場合を前提としたものであるためだ。研究陣は「2026~2027年まで毎年冬のガス在庫量は危険な水準まで下がるものとみられる」として、「予想より冬の気温がさらに下がれば、不足事態が発生する恐れがある」と見通した。この5年間で最も寒かった昨年のドイツの年間消費量は、この5年間の平均値より3%ほど多かった。

■ 物価・景気いずれも打撃…韓国GDPへの影響最も大きい

 結局、ガス不足による景気低迷を避けるのは容易ではないとみられる。いったんガスが足りなくなると、企業が連鎖的に生産を減らす恐れがある。ガス不足で鉄鋼製品の生産が減り、これにより再び自動車生産が減少する流れだ。不確実性が経済に及ぼす影響も小さくない。ガス不足事態に備えるため、企業は雇用を削減し、家計は消費を減らす可能性もある。

 研究陣は先月からロシア産輸入が中断されたという仮定のもと、ドイツの今年の国内総生産(GDP)は最近の輸入量が維持される時より1.5%減り、来年は2.7%減ると分析した。また、物価上昇率は今年と来年は平均的に2ポイントさらに上昇すると予想した。

 欧州以外の地域でも少なくない打撃が予想される。欧州がLNGの輸入を増やせば、全世界の需給も影響を受けるためだ。IMFの報告書「市場規模と供給支障:欧州連合に対するロシアのガス供給中断にともなう苦痛」では「短期的に世界のガス生産の弾力性はかなり低い」と指摘された。生産を早く増やせるのは米国のシェールガスだけだが、インフラの限界で米国から欧州とアジアに輸出できる量は限られているためだ。

 ロシア産ガスを欧州以外の地域に供給することも難しい。ロシアの西部・北部のガス田に繋がっているのは欧州のパイプラインだけだ。ロシアが欧州を相手にガス供給を完全に中断すれば、こちらのガス田のかなりの部分で生産を停止する可能性が高い。

 特に、主なLNG輸入国に対する懸念が高い。欧州が輸入を増やしたことで、ガスが値上がりしているためだ。IMFの研究陣は、韓国や日本、パキスタンなどが打撃を受けるだろうと分析した。特に、韓国のGDPが最も大きな影響を受けると見通した。研究陣は「国家経済でガスへの支出が占める比重などにより違いが出るだろう」と予想した。

イ・ジェヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/finance/1052192.html韓国語原文入力:2022-07-25 09:38
訳H.J

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