ウクライナ侵攻を強行したロシアに対して、西側諸国は前例のない金融制裁を続けている。特に、ロシアの中央銀行が西側諸国の中央銀行や商業銀行に預けておいた外貨準備を凍結した措置が、破壊的な効果を発揮している。ロシアが近いうちにデフォルト(債務不履行)宣言に乗り出す可能性があるとみられる背景も、手足を縛られたロシア中央銀行の事情と無関係ではない。
しかし、ロシアと西側諸国との力比べが、短期間で終わらない可能性もあるという見通しも示されている。ロシアがデフォルトに伴う困難に耐え抜き、長期戦に入ることも考えられるからだ。この過程で西側諸国はもちろん、韓国までも金融市場を媒介として「ウクライナ事態」の影響圏内に入る可能性がある。
■ロシア経済混乱の理由は?外貨準備高の60%失う
西側諸国が国際金融取引からロシアの主要金融機関を締め出す措置を取った後、ルーブルが暴落するなど、ロシアの金融市場は深刻な混乱に陥った。特に先月28日、西側銀行に預けておいたロシア中央銀行の資産凍結措置は、金融市場の混乱を収拾する防御力を奪う効果を生み出している。
ロシア中央銀行の外貨資産運用方式を見ると、その理由がわかる。英国のフィナンシャル・タイムズ(FT)に4日付で掲載された米スタンフォード大学のフーバー研究所の分析によると、ロシア中央銀行は外貨準備高(約6430億ドル、1月基準で世界4位)の60%を西欧諸国の中央銀行(2850億ドル)や商業銀行(1030億ドル)などに証券や預金の形で運用している。西側諸国がロシア中央銀行の保有資産に対する凍結措置を下したため、ロシアとしては外貨準備の半分以上を使えなくなった模様だ。
残りの40%ほどの外貨準備も直ちに使えるかどうかは不透明だ。ロシアが西側諸国の中央・商業銀行に預けていない外貨準備額は、金1350億ドル、中国人民元証券840億ドル、国際通貨基金(IMF)ポジション(IMF加盟国が IMFから無条件で資金を引出せる限度額)50億ドル、現金300億ドルなど。フィナンシャル・タイムズは「IMFポジションには手を付けられず、金と人民元の取引も西側諸国の制裁の中では自由に活用できない」と分析した。一例として、中央銀行が自国内で保管中の金をロシアが代金決済用に活用しようとしても、貿易取引そのものが封鎖されているため使うことができない。人民元の活用も、中国は西側の封鎖政策に同調はしていないものの、ロシア側を積極的に支援しているわけでもないため、制約が伴う。
韓国の経済省庁の主要関係者は本紙との電話インタビューで、「ロシアは(中央銀行の縛りをかけられているため)『為替』問題に悩まされている。西側諸国が直接制裁を追加しなくても、金融市場自体が自ら崩壊するかもしれない」とし、「西側諸国とロシアの経済戦争の中核となるのは金融」だと述べた。
■為替とデフォルトの防御力喪失…ロシア、長期戦に備えるか
ロシアのデフォルトの可能性が予想されているのも、こうした理由からだ。今年4月までにロシア政府がルーブル貨で返済できない外貨建て国債(元金+利子)は28億6千万ドル程度と把握される。ドルが不足しているため、期日まで返済できるかどうかは不透明な状態だ。こうした事情を反映し、3日(現地時間)、国際格付け会社スタンダード・アンド・プアーズはロシアを、不渡りを意味する「D」のわずか3段階上である「CCC-」に格下げした。
もちろん、経済戦争で西側諸国が勝機をつかんだとしても、今回の事態が早期に終息するとは限らない。ロシアがデフォルト宣言後、天然ガスなどのエネルギーや穀物資源を武器化し、長期戦に乗り出す可能性もあるからだ。この過程で、非常に素早く結集した西側諸国に亀裂が起こることも考えられる。事態の長期化により世界経済が低迷し、金融市場の変動性が拡大して、国家間の利害関係が交錯する余地があるからだ。「(全面的な経済制裁が)ロシアのプーチン大統領の行動を変化させるか、西側諸国に広範囲な混乱をもたらすかは明らかでない」(ウォール・ストリート・ジャーナル2日付)という分析が出たのもそのためだ。