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[ニュース分析]現代重工業と大宇造船、韓国企業同士の合併をEUが阻んだ理由

登録:2022-01-17 06:14 修正:2022-01-19 10:36
独占と寡占を規制する競争法、域外にも適用可能 
現代重工業が大宇造船を買収した場合、LNGシェア61% 
EU、天然ガス輸入国が多く、被害を懸念 
大宇造船海洋(上)と現代重工業造船所の全景/聯合ニュース

 「韓国企業同士の合併買収をなぜ欧州が阻んだのですか?」

 現代重工業グループによる大宇造船海洋の買収が、欧州連合(EU)の競争当局に待ったをかけられ、白紙化されたことに関する質問の一つだ。今回の買収は、欧州のほか、中国や日本などで競争当局の審査を受けた。韓国企業同士の動きを外国の当局が審査の対象にする根拠は何だろうか。

 ひとまず伝統的な概念の属地主義や属人主義はしばし忘れる必要がある。市場の独占と寡占を規制する競争法は、基本的に域外にも適用できる。外国企業が外国で行った行為でも、韓国の公正取引委員会が制裁できるという意味だ。国際カルテルや多国籍企業の買収と合併が頻繁に起こっていることを考えると、域外適用が導入された背景は十分推察できる。

 もちろん域外適用にも制限はある。域外適用の範囲を定める際には、通常、「インパクト理論」が基準となる。国内市場に影響を及ぼす行為であるからこそ、制裁できるという意味だ。一例として、韓国企業らが特定商品の価格について談合を行い、その商品を米国に輸出する場合には、米国当局が制裁を加える余地がある。逆に、当該商品が米国に輸入されないなど、米国市場に与える影響がないと判断された場合は、この限りではない。

 ならば、影響の有無はどのように判断するのだろうか。韓国の競争法である公正取引法第3条は「国外で行われた行為でも、その行為が国内市場に影響を及ぼす場合には同法を適用する」とだけ規定している。しかし、現在のように国家間貿易が活発な時代で、国内市場に直接的あるいは間接的な影響を少しも及ぼさない行為を想像するのは難しい。競争法の適用範囲が無限に拡張される可能性もあるわけだ。

 ここでヒントになるのが、2014年に航空貨物関連国際カルテル事件を取り上げた韓国最高裁判所(大法院)の判決だ。最高裁は当時、「(公正取引法第3条は)問題となった国外行為により、国内市場に直接的かつ相当かつ合理的に予測可能な影響を及ぼす場合に限り、解釈すべきだ」と判決の理由を述べた。間接的な影響だけか、影響の程度がわずかな場合は域外適用できないと明記したのだ。主な競争当局も大体これと類似した原則を採択している。

 企業結合審査も同様だ。韓国企業間の買収合併といっても欧州市場に有意の影響を及ぼす可能性があれば、欧州の競争当局も注視せざるを得ない。企業結合の審査対象の基準にもこのような点が反映されている。韓国の公正取引委員会は外国企業の場合、韓国国内での売上高が300億ウォン(約28億8千万円)以上の場合に限り、審査の対象にするという基準も設けている。逆に解釈すれば、企業の規模がいくら大きくても、韓国での売上高が300億ウォン未満の場合はあえて審査しないという意味だ。

 欧州連合も似たような基準を持っている。結合する企業のうち、少なくとも2社が欧州連合内でそれぞれ2億5000万ユーロを超える売上高を上げている場合などの条件がある。韓国造船海洋や大宇造船海洋も、この基準を満たしたものとみられる。

 「インパクト理論」の原則は、今回欧州委員会(EC)が出した発表資料からもうかがえる。委員会は、現代重工業グループによる大宇造船海洋の買収を認めた場合、欧州市場が受ける被害を強調した。欧州には主な天然ガス輸入国が分布しているが、中でも液化天然ガス(LNG)もかなりの割合を占めている。世界のLNG運搬船市場で、両社のシェアの合計は61.1%に上る。以下は、マルグレーテ・ベステアー副委員長が発表した立場表明文の一部。

 「欧州連合内のエネルギー消費量の約4分の1は天然ガスが占めるが、そのほとんどが輸入されている。(…)LNGタンカーが他の地域から欧州にLNGを運んでくるため、今回の事件で問題になった主な商品はLNGサプライチェーンにおいて非常に重要な要素となる。(…)今日我々が下した決定は、欧州の船社たちがLNGタンカーを確保する上で、今後も十分に多くの選択肢を持つことを意味する」

イ・ジェヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1027479.html韓国語原文入力:2022-01-16 18:49
訳H.J

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