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米英を先頭にIMFも積極的に勧告する増税…韓国だけ消極的なわけは

登録:2021-04-12 06:40 修正:2021-04-12 16:38
米国、所得税や法人税増税に続き、富裕税も検討 
韓国は「災難連帯税」などの発議にも議論続かず
OECD加盟国の1980年代と2016年の主な税率の変化(資料:IMF「財政モニター(Fiscal Monitor)」//ハンギョレ新聞社

 最近、米国や英国などの先進国だけでなく、アルゼンチンなどの多くの国で、新型コロナへの対応や景気刺激と関連し、増税に関する議論が活発化している。さらに国際通貨基金(IMF)も、各国が財政健全性を補完し、二極化を緩和するためには、増税が必要だと主張している。長い間、減税の方向に傾いていた各国の税制政策の重心が、増税の方向に舵を切っている上、このような動きが特定の国だけでなく、グローバルレベルで現れている。増税をめぐる議論が事実上姿を消した韓国の状況と明らかな対比を成している。

■世界中で増税ブームを起こしたバイデン政権

 海外の主要メディアによると、米国のバイデン政権は所得税と法人税の最高税率を引き上げる法案を議会に提出した。年間所得40万ドル以上の所得に対する所得税税率は37%から39.6%に、法人税は21%から28%に税率を引き上げる計画だ。さらに、100万ドル以上の資産を所有している人には、追加税金も課す計画だ。これはバイデン大統領の就任直後に発表した1兆9千億ドルの景気浮揚策と2兆ドルのインフラ投資計画の財源を調達するためのものと見られる。特に、バイデン政権は最近、多国籍企業に対する「グローバルミニマム税」(Global Minimum Tax)の導入を主張し、全世界で増税ブームを引き起こしている。

 他の国々でも類似した動きが現れている。英国は2023年4月から法人税の最高税率を現行の19%から25%に引き上げるのをはじめ、資本所得課税の強化も検討している。これに先立ち、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)などの研究者で構成された「富裕税委員会」は昨年末、1回限りのものとして、5%の財産税の導入を主張した。ドイツでも社会民主党を中心に富裕税の復活を求める声が高まっている。南米の一部の国ではすでに富裕税が導入された。アルゼンチンは納税者全体の0.8%である最上位の富裕層1万2千人に1回限りの税金を賦課し、30億ドルを新型コロナ対応に使うことにした。

■IMF「不平等緩和のため税金引き上げが必要」

 こうした動きには、各国が昨年、新型コロナに対応するため財政支出を拡大したことで、財政が悪化した影響が大きい。IMFは最近発表した「財政モニター」(Fiscal Monitor)で、昨年の先進国の国内総生産(GDP)に対する財政赤字の割合が11.7%に達し、2019年の2.9%に比べて4倍近く増加したと分析した。今年は10.4%に達するものと予想された。一般政府基準の政府債務比率の場合、先進国は昨年120.1%で、2019年(103.8%)より16.3ポイント増えた。

 ヴィトール・ガスパールIMF財政担当局長は「新型コロナが不平等を悪化させ、これは社会的・政治的亀裂を引き起こす可能性がある」とし、「不平等の緩和のため、教育や医療、セーフティネットなどを強化していかなければならないが、このためには税金引き上げと公共支出の効率性向上が必要だ」と述べた。増税の解決策としては、所得税と法人税の累進率の強化をはじめ、一時的に社会的連帯のための富裕税の導入などが挙げられた。

 こうした状況にもかかわらず、韓国では増税に向けた議論に進展が見られない。昨年末、正義党のチャン・ヘヨン議員がコロナ禍の中でも所得が増えたり所得の高い企業や個人を対象に、追加課税を可能にする「特別災害連帯税」を発議し、今年に入ってから共に民主党のイ・サンミン議員やイ・ヨンウ議員、ユ・ドンス議員らが高所得者に社会連帯特別税を課したり、社会連帯基金作りのための法案発議を準備している。同党のユン・フドク議員は今年2月、国会企画財政委員会全体会議で、ホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官に「増税せずに危機克服財源をすべて用意するというのは、今の方法では不可能」とし、「財政当局も増税案を公論化すべきだ」と述べた。これについて主務省庁である企画財政部の関係者は「国民的共感が優先」だとし、依然として一歩引いた態度を示している。事実上、増税に否定的な見解を繰り返したわけだ。

■「韓国も増税に向けた議論を始めるべき」

 韓国国内でも、新型コロナへの対応過程で財政状況はさらに悪化せざるを得ないため、これ以上増税議論を先送りできないという声が高まっている。今年に入って一度補正予算案が実施されたのに続き、下半期にももう一度実施される可能性が高い。さらに、来年も「韓国版ニューディール」に20兆ウォン(約1兆9600億円)以上が投じられ、乳児手当の導入や全国民雇用保険の推進などで福祉支出は引き続き増える見通しだ。IMFは最近、韓国の政府債務比率(一般政府基準)が2020年の48.7%から2026年には69.7%に増えると見通した。先進国35カ国のうち増加幅が2番目に大きい。

 韓国開発研究院(KDI)のイ・テソク研究委員は「二極化と成長の鈍化など今後財政所要が多く、増税の必要性はますます高まっているが、増税に向けた議論はほとんどない状況」だとし、「米国は長期プランを持って財政支出とその効果を分析し、増税の必要性を強調している。韓国も財政運用計画を立て、財政支出効果の分析を通じて国民を説得する必要がある」と指摘した。仁荷大学のカン・ビョング教授(経済学)も「米国と英国など主要国で増税を推進しているが、韓国も新型コロナ以降の財政の役割が重要であり、財政健全性も強化する必要があるため、増税に向けた議論をこれから始めなければならない」と強調した。

イ・ジョンフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/990570.html韓国語原文入力:2021-04-1204:59
訳H.J

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