本文に移動
全体  > 経済

コロナショック大きいのに…「補正予算1兆円」処方では不十分

登録:2020-03-05 06:47 修正:2020-03-05 15:02
韓国政府、被害支援のための補正予算を編成 
歳出拡大7700億円など盛り込む 
 
「非正規労働者など限界階層には不十分 
使い慣れた手段を急いで取り出した感がある」 
規模・事業の適切性などについて指摘相次ぐ
グラフィック=キム・スンミ//ハンギョレ新聞社

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の克服に向けて、韓国政府が11兆7千億ウォン(約1兆600億円)規模の補正予算を編成した。文在寅(ムン・ジェイン)政府発足以来4回目の補正予算で、最近7年間で最大の規模だ。

 しかし、世界的大流行(パンデミック)の局面に入っているCOVID-19の影響に対応するのにふさわしい水準であるかどうかをめぐり、批判の声が高まっている。被害支援の死角地帯や規模の適切性をめぐる様々な見解と共に、未曾有の危機に対応するための果敢な政策手段が見当たらないという指摘もある。

新型コロナ克服に向けた追加補正予算案の主な内容//ハンギョレ新聞社

 政府は4日に臨時閣議を開き、「COVID-19の影響の最小化と早期回復に向けた補正予算案」を議決し、5日に国会に提出することにした。ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官はこれに先立つ2日、政府世宗(セジョン)庁舎で開かれた補正予算案の事前会見で「COVID-19の被害対策を支援し、経済のモメンタムを生かすと共に、冷え込んだ消費を後押しできる対策を最大限盛り込んだ」と説明した。

 11兆7千億ウォン規模の補正予算案は、歳出拡大8兆5千億ウォン(約7700億円)と歳入の不足分を埋めるための歳入補正3兆2千億ウォン(約2900億円)に分けられる。政府支出を増やす歳出拡大は、防疫システムの補強(2兆3千億ウォン)や中小企業・小商工人支援(2兆4千億ウォン)、地域経済回復支援(8千万ウォン)、民生・雇用支援(3兆ウォン)に投入される。小商工人・中小企業の緊急経営資金支援に2兆ウォン(約1800億円)が投入され、上半期中にお金を使うように低所得層、児童などに2兆ウォン規模の商品券を提供するのが柱となっている。歳入補正は昨年、国内総生産(GDP)成長率が予想値を下回り、懸念される税収の欠損に対する補填額が2兆5千億ウォン(約2300億円)、COVID-19に対する租税支出が6千億ウォン(約550億円)、新成長・源泉技術に対する税額控除の拡大が1千億ウォン(約90億円)などだ。

 今回の補正予算は総選挙を控えた国会の日程と迅速な被害支援の必要性、513兆ウォン(約46兆6千億円)の予算がようやく執行され始めた第1四半期という事情を考慮した結果とみられる。政府はCOVID-19の被害支援という本来の目的に集中し、大規模な社会間接資本(SOC)事業などは盛り込んでいない。切迫した編成作業のために新規事業を発掘することも難しかったうえ、2月の国会最終日の17日の本会議で補正予算案を通過させるため、政治的議論を最大限避けようとする意図も隠れている。

 ク・ユンチョル企財部2次官は「今回の補正予算は、COVID-19の被害に対する直接的な支援だけで歳出拡大8兆5千億ウォンを投入するため、MERS(中東呼吸器症候群)補正予算の被害支援(4兆ウォン相当)の2倍を上回る」と述べた。

 しかし、このような説明にもかかわらず、今回の補正予算でCOVID-19の衝撃を吸収できるかは疑問だ。まず、補正予算の規模や事業発掘が不十分だという指摘がある。チョン・セウン忠南大学教授(経済学)は「特殊雇用労働者や非正規労働者など、現在雇用と生計が危険に陥った限界階層に対する支援対策に死角地帯が多い」とし、「このような死角地帯に対する対策を充分に盛り込むためには、さらに規模を増やすことが望ましい」と指摘した。ウ・ソクチン明智大学教授(経済学)も「使い慣れた政策手段を急いで取り出した感がある」とし、「内需消費を増やすための“商品券補正予算”といえるが、COVID-19の衝撃で事実上経済活動が中断された今、この程度の対策で消費が回復するかは疑問だ」と述べた。

 従来の認識の枠組みから外れた政策的想像力が示されていないことへの残念の声もあがっている。米連邦準備制度(Fed)が3日(現地時間)に緊急会議を開き、基準金利を急きょ0.5%ポイント引き下げたことなどに比べ、あまりに安易な認識ではないかということだ。パク・ボギョン慶煕大学国際大学院教授(経済学)は「非常事態には非常な政策手段を活用しなければならないが、現在編成された補正予算では韓国の財政当局が現在の状況をどれほど厳しく認識しているかがあまり感じられない」とし、「現金性福祉に対する財政当局の懸念が大きいことはわかるが、災難基本所得(ベーシックインカム)などの新しい政策手段が全く含まれていない点は残念だ」と指摘した。これに先立ち、香港政府はCOVID-19に対応するため、18歳以上の永住権者約700万人に1人当たり1万香港ドル(約14万円相当)を現金で支給する予算案を編成した。災害時に限った基本所得だが、直ちに消費刺激の効果が現れるかどうか注目を集めている。

 世界経済の低迷が急速に進み、グローバル・バリューチェーンの崩壊による生産支障が現実化する場合に備え、追加対策が求められるという意見も多かった。チュ・サンヨン建国大学教授(経済学)は「生産側面の危機が始まれば、しかるべき対応策をまとめるのが難しいほど深刻なショックが訪れるかもしれないため、大規模な第2次補正予算など追加対応策を予め念頭に置かなければならない」と話した。パク・ボギョン教授も「COVID-19の感染拡大を受け、各国政府が国境を封鎖するなど、保護主義政策を展開する場合、輸出依存型の韓国経済に想像できないほどの影響が予想される」とし、「財政政策だけでなく、世界各国の政策協力に参加するなど、積極的な経済外交活動が求められる」と助言した。

ノ・ヒョヌン、イ・ギョンミ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/931145.html韓国語原文入力:2020-03-05 02:41
訳H.J