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新三低時代を生きる方法-(1)低成長の沼

登録:2020-01-01 23:23 修正:2020-01-02 08:54
エコノミー・インサイト 
公共の役割の画期的強化が必要
2019年12月19日、ホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官が関係部署合同ブリーフィングで2020年の経済政策方向を説明している/聯合ニュース

 2019年末、企画財政部では主な幹部が財政管理局財政執行管理課長を訪ねる機会が急増したという。財政執行管理課は、中央政府と各地方自治体の財政事業が正しく推進されているかを点検し、予算の執行を管理し督励する部署だ。数兆ウォン台の予算を編成したり経済政策を立案する部署に比べれば、多少暇な部署と見なされていた。だが、2019年の経済成長率が1.9~2.0%に留まると予測され、この部署に注目が集まった。民間の成長貢献度が底を打った今、2019年予算の繰り越し・不用額を最小化する“ないところからの絞り出し”に2.0%成長率達成の成否がかかっていたためだ。

 2019年の成長率が2%台になろうが、あるいは懸念されているとおり1%台に墜落しようが、経済当局はグローバル金融危機の翌年である2009年(0.8%)以来、最も低い経済成績表を出すことになった。1960年代に産業化が進められた後、今まで韓国の経済成長率が2%を下回ったのは、第2次オイルショックがあった1980年(-1.7%) ▽国際通貨基金(IMF)救済金融事態を体験した1998年(-5.5%) ▽グローバル金融危機直後の2009年の三回だけだった。特に、2019年のように外部からの“経済危機”なしに2%にかろうじて届く低成長に悩んだ事例はなかった。韓国の経済成長戦略が根本的危機に直面したのではないかという危機談論が強くなっている理由だ。

前例なき低成長

 2019年の低成長現象にはいろいろな理由が重なった。まず、世界経済の不振が大きかった。製造業の鈍化などの影響で、2017年に5.7%だった世界貿易量増加率が2018年は3.6%、2019年には1%前後に急落した。輸出主導型の経済体制である韓国には、需要不振の余波がストレートに襲った。特に“スーパーサイクル”を享受して、ここ2~3年の韓国経済を牽引した半導体の単価下落と需要減少は大きな衝撃を与えた。世界半導体市場統計機構(WSTS)は、2019年の世界半導体市場の売上が前年より12.8%減ると分析した。

 対外経済条件が振るわない中で、世界経済をリードする二つの強大国である米国と中国の争いは、韓国経済をグロッキーに陥れる決定打になった。両国の貿易戦争は、2018年に米国が中国産818品目に25%の関税を賦課して本格化し、2019年5月には中国産輸入品に対する関税率を25%に上げ全方向に広がった。韓国経済は過去10年余りの間に、中国や日本など北東アジア製造業強国との分業構造を作り成長した。産業構造と為替レートが中国経済と同調化したという意味だ。結果的に北京でまき起こった寒風は、韓国経済に吹雪を起こしたということだ。

日本型複合不況?

 対外条件が最悪の状況に駆け上がる間に、景気循環期もあいにく下降局面に入った。国家経済はある段階に留まるのでなく、上昇(拡張)と下降(収縮)を周期的に繰り返しながら成長する。韓国経済は、2017年9月を頂点に景気下降期に入り込んだ。2013年3月を底として始まった“第11循環期”だ。頂点に至る景気上昇期が54カ月だった点を考慮すれば、少なくとも2~3年間は景気収縮が避けられない状況だ。所得主導成長など家計の可処分所得を増やす政策の効果で、民間消費増加率がせっかく上昇に転じたが、景気収縮の前では力が及ばなかった。しかも、高齢人口が急速に増え、貯蓄が増えて消費指向が下がるという悪材料まで重なった。

 これに伴い、国内外の主要機関は経済展望速報値を発表するたびに成長率展望値を低くした。韓国金融研究院をはじめとして、LG経済研究院、韓国経済研究院、ハナ金融経営研究所などは、2019年の成長率展望値を1%台後半と予想した。国外の投資銀行はさらに悲観的だ。メリルリンチとモルガン・スタンレーは、それぞれ1.6%、1.7%と予測した。2019年7月に展望値を2.2%に下げた韓国銀行も、4カ月後の11月には2.0%に下方設定した。

 一部では、現在の低成長局面を“失われた20年”という日本の長期不況と比較している。消費者物価の増加率が、2019年9月に史上初めてマイナスを記録したうえに、国民経済の総合的な物価水準を示すGDPデフレーターも2018年第4四半期(-0.1%)以来、4四半期連続で下落した。景気急落が低物価と結合する“複合危機”が長期化する恐れがあるとの憂慮が高まったわけだ。

 マクロ経済を運用する企画財政部は、こうしたデフレーション診断とは一線を画し、景気を反騰させる覚悟を見せた。まず政府総支出を2020年の9.5%に続き、2021年にも9.1%増やし、景気回復の呼び水とすると明らかにした。そのために政府は、管理財政収支赤字を国内総生産の3%以内で管理するという財政運用の不文律も破った。2020年予算案によれば、管理財政収支赤字が国内総生産の3.6%に至る見通しだ。ク・ユンチョル企財部2次官は「景気収縮期には過度と思われるほどに財政で後押ししなければならない。水があふれて産業の芽が芽生えるように予算案を組んだ」と話した。

 このような政策方向は、世界的な景気不振を観測する主な国際機関の勧告と認識を共にする。国際通貨基金(IMF)のオリビエ・ブランシャール首席エコノミストは「不況を克服するには、多少の過熱を甘受するくらい強力なマクロ経済政策を展開しなければならない」と勧告した。拡張的財政と通貨政策の組み合わせで、同時多発的に迫り来る不振の沼を乗り越えなければならないという意味だ。

ソウルのある生活用品売場で、購買客が安い品物を選んでいる。景気不振が持続して不況型消費が増えている/聯合ニュース

 政府は成長戦略の軌道修正も推進している。これは、根本的に韓国経済の生産性が連続的に下落しているという問題意識に従ったものだ。韓国銀行によれば、グローバル金融危機後の10年間、韓国の労働生産性増加率は7.9%から2.2%に、5.7ポイントも急落した。同じ期間の経済協力開発機構(OECD)加盟国の2%余りの下落と比較すれば、成長のエンジンが急速に冷めているという意味だ。

 社会システムの効率性を総体的に示す総要素生産性の鈍化も尋常でない。2001~2005年の平均潜在成長率(5.1%)において2.2ポイントの貢献度を占めた総要素生産性は、2016年以後半分以下(0.9ポイント)に落ちた。労働市場の硬直性、革新成長の不在など、韓国社会の構造的問題が累積し生産性が下がり、潜在成長率も連続的に低下している。実際、2000年代初期には5.1%に達していた潜在成長率は、徐々に下落して2019年には2.5~2.6%に留まっていると政府は推算する。

 政府は、2020年に重点的に推進する政策として、経済・社会構造改革を上程している。年俸中心の硬直的賃金体系を改編するなど労働市場を改革する一方で、利害関係が交錯する新産業を推進するための社会的妥協メカニズムも作っていくことにした。これまでの規制と制度だけでは規定できない新産業が胎動し、利害関係者の対立が生ずれば、利益共有協約を結び共生協力基金を作るなどの社会的妥協の道を開くということだ。

 政府はまた、急激な高齢化による生産年齢人口(15~64歳)の減少など人口構造の変化に対応するために、2期人口政策タスクフォース(TF)を設けることにした。この他にも、民間と公共、民間投資事業を合わせて、100兆ウォン(約10兆円)台の投資を発掘する方針だ。特に、不確実性のために財布のひもを締める民間部門の経済成長貢献度を引き上げるために、最大で15兆ウォン規模の民間投資を誘致する計画だ。蔚山(ウルサン)の石油化学工場、仁川(インチョン)の複合ショッピングモールなどが有力な候補だ。

公共性の再確立

 しかし、この程度の対策で底まで落ちた経済活力が生き返るかは疑問だ。半導体景気などの対外条件が多少改善されると期待されるものの、米中貿易紛争の火種が消えておらず、中国景気の鈍化が深刻化する懸念もある。国内では、2018年から始まった生産年齢人口の減少が10年間で約260万人に達する見通しだ。韓国経済が経験したことのない“縮小社会”への移行に順調に適応するという難しい宿題が残っているわけだ。

 多くの専門家は、公共の役割を再確立しなければなければならないと強調する。生産・消費・財政の持続可能性のためにも、最小限の人口増加が前提にならなければならないが、「各自図生」(各自が生き残る方法を探ること)を迫られた市民が“出産ストライキ”を行っているためだ。専門家たちは、これまで労働と資本などの要所投入型経済成長に没頭してきた政府が、公共の役割を事実上放棄したと指摘した。

 ファン・ソンヒョン仁川大学教授(経済学)は「政府が経済成長の枠組を作る上で、出産、養育、教育、住居などの基本的生活条件を個人の責任に押しつけてきた」として「公共部門がこうした役割を受け持ってこそ、個人が不安に苦しまずに済み、韓国経済の最大の宿題である少子化を解決する端緒になるだろう」と話した。ハ・チュンギョン漢陽大学教授も「韓国経済が直面した構造的問題である少子化の改善と生産性向上効果を体感できるよう、果敢な財政運用を注文したい」として「既存の福祉制度に投じる予算を増額する水準を超えて、少子化対応と社会構造改革のための新たな政策モデルを設計すべきだ」と強調した。

ノ・ヒョンウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/922780.html韓国語原文入力:2020-01-01 08:59
訳J.S