本文に移動
全体  > 経済

[ニュース分析] 無公害水素車競争が自動車の歴史を変える

登録:2015-03-08 22:25 修正:2015-03-09 07:21
新年早々、米国で市場先行獲得のために激突
電気自動車とハイブリッド自動車に挑戦状
2050年動力源別世界自動車販売台数の展望 出所:IEA国際エネルギー機構2011 //ハンギョレ新聞社

 T型モデルはフォード自動車が1908年に発売した初の大衆車だ。 1920年代、アメリカの道路はT型モデルで満たされたといっても過言ではない。 1908年の発売当時、価格は850ドルだったが1914年には500ドル、1925年には250ドルまで安くなった。 価格の引き下げに力づけられ販売量は発売初年度に6870台、翌年1万台、1913年16万台、1917年には73万台へと時間と共に爆発的に増えた。 生産が終了した1927年までに合計1500万台が売れた。 20世紀の生産方式である大量生産と大量消費を全世界に拡散させた車も、低価格をベースにT型モデルとともに地球上に自動車時代を開いた。

 それから100年余り、今度はガソリン・ディーゼル内燃機関の自動車が次第に退くほかはない“移行の渓谷”に入り込んでいる。世界各国の自動車メーカーは無公害エコカーである純粋電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等のプラグイン電気自動車、更には水素燃料電池自動車(FCEV)を競争的に出し、内燃機関に代わる自動車の歴史を一歩ずつ作りつつある。 北米とヨーロッパ市場ではテスラのモデルSや日産リーフのような各種電気自動車の発売と持続的な販売量増加はすでに2011年頃から継続してきた流れである一方、水素燃料電池自動車は突然今年はじめから市場先行獲得のための激突が米国カリフォルニアを中心に火がついている。

■水素経済が来る…打って出たトヨタ

 「今、自動車の歴史が変わろうとしている」。昨年11月、トヨタの豊田章男社長がセダンの水素燃料電池自動車ミライ(Mirai)を披露した席でした話だ。 水素燃料電池自動車は燃料電池に注入する水素が空気中の酸素と結合する過程で生産される電気を動力として活用する車で、二酸化炭素などの温室ガスを排出せず純粋な水だけを排出する完全無公害車両だ。「窮極の車」と呼ばれる。 水素タンクを装着した水素燃料車はプラグイン電気車に比べ、満充填時の走行距離もより長い。 10数年前、ジェレミー・リプキンは「人類歴史上、初めて我々はどこからでも手に入れられる“永久燃料”を手に入れられる入り口まで到達した」と水素エネルギーの未来を力説したことがある。

 トヨタ ミライ、破格の価格で砲門
現代車トゥサンix35は韓国内で43%値下げ

成功裏に定着できればエネルギー革命
IAEA 「2050年に水素自動車が19%を占有」

カリフォルニアが普及拡大に積極的
 次世代の最大ライバルは電気自動車

 今年初め、水素経済が知らない内に近づいていることを新たに感じさせたのはトヨタだ。 トヨタは予想に反して昨年12月から日本と北米、カリフォルニアの市場でミライの実販売価格を1台当り500万円台への大幅値下げに打って出た。 ミライの日本での発売価格は税前で670万円(約6217万ウォン)、関連諸税を含めれば720万円台だ。 ここから日本政府の補助金(200万円台)を抜けば500万円(約4900万ウォン)台で販売されている。 これに力づけられて発売一カ月で1500台が契約されるなど大人気を呼んでいる。

 ホンダとフォルクスワーゲンも昨年末と今年初めに水素燃料電池コンセプトカーを相次いで出し、競争が加熱している。 水素燃料車は商業用の大衆化が本格化する段階で遅れをとれば後から追いつくことは容易でないという切迫感が世界の完成車メーカーの間に広がっている。 韓国の自動車産業研究所クォン・ソンウク研究委員は「(100年前のT型モデルのように)水素燃料車も量産体制に入れば価格が急速度で下がるだろう」と話した。 水素スタンドのようなインフラ構築さえ伴うならば次世代自動車市場を主導できるだろうという観測だ。

 大多数の専門家たちは2020年頃から内燃機関と次世代エコカー間の本格的な主導権争いが始まると見通している。 国際エネルギー機構(IEA)は既存の内燃機関車は2020年を基点に販売量が減少傾向に転じ、2050年には市場占有率が14%まで下落する反面、水素自動車の市場占有率は19%まで上がるなどエコカーが全世界の自動車市場の86%水準まで到達すると予想した。 もちろんまだ販売量は微小だ。 昨年グローバルで30万台を突破したばかりの電気自動車(ハイブリッドは除外)は自動車販売量の0.5%にもならない。 しかし、米国、日本、ヨーロッパ連合の環境規制と電気自動車普及支援政策により、米国だけで昨年11万8000台(前年対比21%増加)が売れた。

■トヨタと現代自動車がカリフォルニアで激突

 ミライの突然の市場先行獲得攻勢に対し、現代自動車も正面対抗に出た。 すでに2013年2月に蔚山(ウルサン)工場でグローバル完成車メーカーとして最初にスポーツ実用車(SUV)型水素燃料電池自動車トゥサンix35の量産体制(年産1000台生産ライン)を整えた現代自動車は、先月初めにトゥサンix35の国内価格を1億5000万ウォン(約1650万円)から8500万ウォン(約930万円)に43.3%も急遽下げた。 今回の値下げはカリフォルニアでミライと正面対決するための国内次元での事前対応という性格が強い。 カリフォルニアでも近い将来、トゥサンix35の価格を大幅に引き下げる予定で、国内価格を先に下げることによって国内外価格差にともなう反ダンピング提起の憂慮を払拭することが目的だ。 現代自動車は昨年6月からカリフォルニアでトゥサンix35の販売に乗り出している。

 北米市場での水素車ビッグ3はトヨタ、本田、ダイムラーで、ここに現代車が加勢している状況だ。 先頭企業らはこれまで主にリース方式で販売し、中央政府の補助金(7500ドル)、カリフォルニア州政府の補助金(5000ドル)を受けてきた。 トヨタは日本政府の全面的な政策“水素生態系”支援の中で水素燃料車の燃料タンク許容圧力など関連国際標準を自ら設定し、主導権を握る態勢だ。 すでにヨーロッパ連合と水素車燃料タンクの標準化を構築し、これを米国にも拡張しようと試みている。 1994年世界で初めて水素車を出したダイムラーは、ルノー日産やフォードと手を握り、2002年に早期にカリフォルニアで水素車の販売認可を受けて商業化に乗り出したホンダはゼネラルモータース(GM)との戦略的提携の下で水素車共同開発を進めている。 全て今年と来年中には北米市場に水素車を投じる予定だ。

■ 無公害車クレジット、自動車業者を圧迫

 世界でエコカー普及を先導するのはカリフォルニアだ。 カリフォルニアは1970年代に都心でのスモッグ現象が深刻化すると大気汚染防止のためのマスキー法を制定し、自動車排出ガス規制を主導している。 2013年9月、毎年2000万ドルまでという莫大な州政府予算を投じて、今年51の水素充填所を作り、2020年には「カリフォルニアのどこからでも6分以内に充填所に到達できる」水素充填所100カ所の構築を義務化する「AB8法」を通過させた。 ロードマップどおりに水素充填所が構築されれば、カリフォルニアで運行される水素自動車は2017年に9500~1万6000台、2020年に1万7000~3万1000台に達するものと見られる。 カリフォルニアはグローバル完成車メーカーに水素燃料電池自動車の普及台数ガイドラインまで提示し圧迫している。

 さらに強力な制度が無公害車(ZEV)クレジットだ。 2013年末、米国自動車市場の30%を占める8州(カリフォルニアを含む)は「2025年無公害車330万台普及」目標をたて、これを達成するためのすべての制度的手段を動員することで合意した。 これに伴い、カリフォルニア主導で米国の11州ではプラグイン電気自動車と水素自動車に車種別クレジットを付与して、義務確保クレジット(ガソリン・ディーゼル車の販売量に比例して割当)に達しなければ、ガソリン・ディーゼル車販売1台当り5000ドルの罰金を払わせている。 水素自動車など無公害車の販売量を増やしてクレジットを確保しなければならない状況だ。 無公害車義務販売比率(全体の販売台数のうち充足しなければならないエコカー比率)は現在12%だが、2020年には22%に強化する予定だ。

 その上、2017年からハイブリッドと内燃機関燃費改善車はクレジット付与対象から排除される予定なので、水素自動車は自動車メーカーにとって緊急課題になった。 水素自動車は無公害車の中でクレジット7点で最も高い点数が付与され、グローバルメーカーは競争構図に早期突入している。

■次世代エコカーは誰が主導するか

 北米で純粋電気自動車の市場を主導しているテスラの最高経営者エルロン・モスクは「燃料電池自動車は愚かな選択」と主張する。 高い価格の燃料電池システムに加え、水素の生産・輸送インフラ費用が莫大で経済性が劣るという主張だ。 果たして水素燃料電池自動車と2次電池(バッテリーエンジン)に外部から電気を充電(プラグイン)して駆動するプラグイン電気車のうち、ポスト ガソリン車時代をどちらが主導することになるのだろうか。

 もちろん各国政府のエコカー拡散のための補助金および充填所インフラ構築のような政策的要因、そしてグローバル市場での自動車環境規制標準がどのように決まるかにかかっている。 また、カリフォルニア主導で市場地図を水素自動車側に誘導する流れもある。 LG経済研究院キム・ギョンヨン研究委員は「プラグイン電気自動車と水素自動車は電気モーターを通じてタイヤに動力を伝達する点は全く同じだ。したがってパワートレインなど技術プラットホームを互いに共有し、相互補完的に共生発展してゆく公算が大きい」と話した。 走行距離で日常的な都心短距離はプラグイン電気自動車が、郊外長距離は水素自動車が引き受け、互いに競争的に成長する構図になるだろうという話だ。

チョ・ケワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/car/681273.html 韓国語原文入力:2015/03/08 14:11
訳J.S(4307字)

関連記事